前の話
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青い空
12人が11人になっても変わらない
今日は天気が良い
雨は降らないようだ
空を見上げる
見事な快晴だ
誰かがいつもいるはずのリビングルーム
るなさんがシェアハウスを去ってから
此処に人が集まることが減ってしまった
集まるとすれば夕食の時だけ
全員集合さえ、一ヶ月に一回あるかないか…
俯きつつも僕は庭に向かう
もう、変わらないから____
正面玄関からのあさんの泣く声が聞こえる
転んだのだろうか
ゴミ当番…
たっつんとかゆあんくんとか…
忙しいって言ってどっか行っちゃうし
るながいなくなってから人の声が減り、
その分交流する機会も減った
俺自身、ちょっと……寂しい
えとさんは洗濯籠を持っていた
話すことが少ないと
何を話せばいいのか困ってしまう
のあさんの泣く声が聞こえる
久しぶりに買い物に
行ってみようと思ったのですが、
えとさんが忙しそうなので
1人で出ることになりました
こういう時、るなさんがいたら…
いえ…今は夢に向かっていることが大事です
靴をしっかり履き直して立ち上がる
明るくなった玄関に一歩一歩と進んでいく
扉をくぐり抜け、瞳に強い光が入る
一色の光が私の瞳に入った
一色だ
一色の____
水色が____
自然と頬をつたる雫に気がつく
もう、泣いていいでしょうか
自然と声が漏れてくる
なおきりさんは気まずそうに目を逸らす
今の状況をるなさんに知られる訳にはいかない
えとはるなに抱きつく
ー完ー
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!