幼さを残す声が しんとした会場内に響き渡る。
僕はおんりーの少し後ろの方で、儀式に使う神具を持って待機していた。
僕の出番はあんまりないんよね。
……さすがに何十万人もの視線があったら、立ってるだけでも緊張するけど。
でも、たった1人で長い台詞を唱え続けるおんりーに掛かるプレッシャーは、僕とは比べものにならないだろう。
……がんばれ、おんりー!
そうして、あっという間に儀式の最後に差し掛かった。
ここまで、おんりーは何一つミスをしていない。
ものすごい量の台詞だったはずなのに……
ほんと、すごいなぁ
最後の僕の役割は、この持っている聖典をおんりーに渡すこと。
転びでもしなければ、失敗することはない。
……よし
僕は慎重に一歩ずつ歩みを進める。
うぅ、一挙手一投足 見られてる感じがする……
あとちょっと………
その時、突然つま先に何かが引っ掛かる。
体制を崩した僕の足は地面から離れた。
え、どういうこと…?
ステージに凹凸なんてないはずなのに……っ!
誰かに足を取られた?
確かに、ステージの端には何人かの側仕えが待機している。
でも……
そんなことするはず、ないよね?
僕は次に襲ってくるであろう衝撃に備えて目を硬く閉じた。
あれ?
痛く……ない?
恐る恐る目を開けると、僕は何事もなかったかのように立っていた。
え?なんで…?
顔を上げた先でおんりーと視線がぶつかる。
軽く頷いていた。
多分、おんりーが助けてくれたんだ。
あとで お礼言わなきゃ。
とりあえず、今は儀式に集中しよう。
結局その後は、特に何事もなく儀式は終わった。
ステージから退場して一息つく。
つまづくなんて、ひどいミスしちゃったな……
でも、とりあえず最後まで出来てよかった。
しばらく待っても声が聞こえないので、僕は不思議に思っておんりーの顔を見た。
……もしかして、怒ってる?
おんりーの表情は一見 無表情に見えるが、いつも一緒にいる僕には少し険しく見えた。
いきなり僕の手を取って歩き出した。
やっぱ怒ってる…?
僕がミスしたから……、
それだけ告げて、おんりーは足早に歩き出した。
しばらく歩くと、人気のない場所まで来る。
周りに人が居ないのを確認して、おんりーは立ち止まる。
そうだよね、あんな大事な時につまづくなんて……
つまり、その人がわざと僕を転ばせようとしたってこと……?
あの時は、ほんとに焦ったのに……
おんりーは少し視線を彷徨わせてから答えた。
そういえば前、僕がこのお城に初めて来た時、城門を開けてたよね。
その時に言ってたっけ。
そう言いつつも、そんな様子に安心している自分がいる。
最近のおんりーは、忙しかったこともあるのか、なんだか表情が暗かった。
……神の子だからってこともあって、制約も多いしね。
だから、そんな冗談を言ってくれて嬉しかった。
やっぱり、おんりーは笑ってる顔が一番だもん。
たわいもない言い合いをしながら、僕らは会場の方へ戻った。















編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。