第8話

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2025/06/19 14:22 更新








    ─ なんだってぇ!?



「善法寺」 「食満」 と書かれた札のぶら下がる、小さな部屋から





森に眠る鳥たちが飛び立つ程の大声が響く



善法寺 伊作
留三郎、あなたを怒らせたうえに
あなたを泣かせた、だって!?




食満 留三郎
ああ…っ、




顔を真っ青に染め、汗を垂れ流し、正座して俯く食満留三郎。




彼の泳ぐ視線の先には、机の上の書物をバラっと乱し、焦り声を上げる善法寺伊作。


食満 留三郎
悪いと思ってる…
だが、いつ奴を傷つけたのか…見当もつかないんだ…



善法寺 伊作
うぅん…。ぼくも彼を知ったような口は言えないけど……
何を言ったのか教えてくれ





わかった。と承諾すれば、頭をひねりううんと唸らす。




たしか…。そういえば…。とひとつひとつあったことを、記憶違いがないように



頭の中の記憶の引き出しを慎重に引っ張り出す。




善法寺 伊作
なるほど…。



食満 留三郎
俺はただ、あいつを心配しただけなんだが…



善法寺 伊作
まぁ、彼は同室が心配性だから
別室の留三郎にまで心配されて
嫌気がさしたんじゃないかな?


食満 留三郎
そうだといいが…




と、理由のはっきりしない問題に文字通り頭を抱える。



心配に嫌気がさした…?



そんなの今に始まったことでもないのに…、



あいつの地雷を俺が踏んでしまった?その地雷ってのは何だ?




学園で共に忍術を学ぶ仲間として六年間共にしてきたが、気が付いたら俺はあいつに避けられていた。




特別関わり合いはなかったし、むしろ少ないほうだった。






もしかして、俺、嫌われてる、のか?




善法寺 伊作
留三郎?



沈ませていた顔の下から、心配そうに顔を覗かせる伊作。


善法寺 伊作
どうしたの?
顔色悪いけど。。


食満 留三郎
っ、あぁ、いや…



善法寺 伊作
なぁ、あなたのことが気になるなら
謝りに行こうよ。ぼくも一緒に行くから。な




食満 留三郎
ああ…すまない。



善法寺 伊作
ふふ、気にしないくていいよ
だって、僕たち同室だろう?



昔から、伊作はずっといい奴だ。



困った周りの人を放っておけない。俺も例外じゃないらしい。



今心配なのは、俺じゃなくて、たぶんあなたなんだろうが…




そういえば、あなたの奴、俺が伊作の話をするたびに俺にガン飛ばしてきてたような……




思い返したら、なんか変だよなぁ、、



食満 留三郎
ま、明日聞けばいいか



善法寺 伊作

もう遅いから、灯り消すよ



食満 留三郎
ああ、おやすみ



善法寺 伊作
おやすみ~




もやもやの正体に、気が付かぬふりをしながら




あたたかい布団に包まれ、目を閉じる。

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