………この声は。
この子は重音テト。
幼稚園の頃からの幼馴染で、唯一この高校での友達。
高校に入って運悪くクラスが別になっちゃったんだ。
嬉しい。
直接言うのは恥ずかしくて言えないけど、私にとって大切な親友だ。
でも…もう………。
あぁ…泣いちゃった。
テトには迷惑かけたくないのに。
テトが何かを決心したかのように言った。
そもそも、夢の世界があり得るわけない。
そんな異世界が実際にあるなら、私はきっと既に神様に救われているだろう。
あんまり信じたくない。
でも、今の私にとってその噂は最高級の逃避行に違いない。
危なそうなところだけど、正気の沙汰ではやっていけないこの娑婆じゃ、
敢えて素知らぬ顔で身を任せるのが最適解だと思ったんだ。
私とテトは噂の場所へと向かった。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!