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第11話

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2025/09/11 08:41 更新


特待生
_______ひっ、!
  


特待生は思わず声を上げると、
怪異はそれは楽しそうに変な叫び声で喚いた。


______ なに、これ、なにこれなにこれ怖い!!



特待生の身体は無意識に硬直し、
恐怖から声すらあげられなくなる。

ここに来てから何度だって
目も当てられないほど怖い怪異を見てきたくせに、
未だ特待生はこれらに慣れる気がしない。
震える吐息を吐き出して、特待生はへたりこんだ。

特待生
_______ こっちに、来ないで、止まって……!


異形の怪異は裂かれたような口角を更に歪ませて、
特待生の声に舌なめずりをする。
どうやら、平和的解決はするつもりがなさそうだ。

  _____連絡、しておけばよかった。


変な意地を張らずに、
さっさと累に連絡していればよかった。

この異形の怪異に見張られているせいで、
特待生は身動きひとつ取れない。
特待生は後悔の念に駆られながら、目を瞑る。





特待生
________ たすけて、







  「 _________《クンツァイト》 」



  直後聞こえたのは、怪異が床に倒れる音だった。





  オブスキュアリに入り浸るようになってから数週間。

観月 累
今日特待生ちゃん来るらしいから
迎えに行ってきて〜 ☆


機嫌良さげに鼻歌を歌いながら、
兄はカウンターで微睡んでいた私にそう言った。

この時間帯はどうにもお昼寝をしたい本能が働くのか、
いい雰囲気のバーでウトウトしていたというのに。
私が不満げに兄の方を見ると、兄は微笑む。

観月 累
それじゃあ今まで俺ちゃんが
作ってきたドリンク代、払う?
あなた
お兄ちゃん、悪魔の適正あるんじゃない?
観月 累
ごめ〜ん、グールと死神で手一杯だからさ?☆


こう、笑顔で非情なことを言ってくる人だから困る。

私に反論が許されている訳もなく、
渋々カウンター席から立ち上がると、兄は苦笑した。

観月 累
本当そういうとこ、優しいよね。
あなた
させてるのお兄ちゃんでしょ。
観月 累
別に嫌ならそう言っていいのにさ。
手のかからない妹で、
お兄ちゃん的にはむっちゃ寂しい〜。


あからさまに項垂れる兄の様子に、
思わず私は「ふ」と軽く笑い声が漏れる。

あなた
私は十分、お兄ちゃんから沢山貰ってるよ。
あなた
じゃあ行ってくるね。
観月 累
____


兄の返事も表情も見ないまま、
私はオブスキュアリを飛び出した。
だって、兄がキョトンとした
表情を浮かべていることくらい、
予想はついていたのだから。





さて。迎えに行こうと飛び出してから数分。
確か入学式でちらっとみた「特待生ちゃん」さんを
探しに来たわけですが。


__どうやら、迎えに来たのは正解だったらしい。


あなた
えっと………大丈夫ですか?


異形の怪異が泡を吹いて倒れているのを確認した後、
私はできるだけ安心させようと笑顔を作って、
彼女に手を差し伸べる。


この怪異が暴走していたのだ。
学園から脱走したのか逃亡したのか知らないが、
彼女は怪異に襲われかけていた。

何の力もない一般人では、怪異に太刀打ちできない。
その恐怖は私もよくわかっているつもりだ。
彼女の目には___涙が滲んでいた。


特待生
あり、がとう、ございます……


彼女は恐る恐る私の手を取り、
ゆっくりと立ち上がる。

特待生
あの、もしかして、____

  
あなた
___ ごめんなさい、多分、
貴方の期待には応えられないと思います。


彼女の目に映る私が、
一体どんな表情をしていたか。
あまり、よく覚えていない。


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