第16話

崩壊前夜
705
2025/04/21 13:18 更新


今更泣いたってどうにもならないって、
分かってるのにね。
運転中の彼の横顔は俺にそう語っているようだった。
若さ故に
お互い過り、傷つけあった。



もう少し出会いが遅かったら
もう少し俺達は大人だったら



愛せたのかな。
それはわかんないまま。
割り切れないまま。



雨の中の駐車場、車がついに停車した。
彼は俺に告げる。



「俺は何も変わってないよ。」



まるで変わってしまったのは俺だと言いたいように。



「ここでさよなら、だね。」



嗚呼、恐れていたことが起こってしまった。
俺の日常が音を立てて壊れていく
崩壊していく

そんな前兆を感じた。
夜はもう深く、辺りはほとんど何も見えない。



本当はさよならは、
せめてさよならだけは俺から
言い捨ててやりたかったのに。
その願いは叶わないまま


彼の車は暗夜に紛れ込んで消えた。

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