第2話

言おうとした事
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2025/10/13 00:34 更新













錆兎の腕の中にいると、世界が静まる。
風の音も、夜のざわめきも、全部遠のいていく。
代わりに、心の奥に溜まっていた痛みが、ゆっくりと溶け出すのが分かる。
錆兎はいつもそうだった。
まっすぐで、迷いがなくて、俺の足りないものを全部持っていた。
それが嬉しくて、苦しくて、どうしようもなく怖い。



俺
… 錆兎 、

名前を呼ぶだけで、喉の奥が焼けるように痛む。



錆兎が俺を腕に閉じ込めたまま、俺を見下ろす。
錆兎
錆兎
… なんだ 。


俺は、言おうとしたことを仕舞った。
俺
… なんでもない。


錆兎の瞳の奥に、あの時の光があった。
夕暮れのような、悲しみを孕んだ橙色の光。
きっと、錆兎は俺が何を言おうとしたか、解ったのだろう。










――そうだ、俺たちはあの日から何も変わっていない。
錆兎はいなくなって、俺は取り残されて。
それでも、こうしてまた向き合ってしまった。
互いの罪と、愛しさと、未練を抱えたまま。

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