週の初めの月曜日。
私は早朝に起きて、今日提出の課題に追われていた。
諦めて学校に行こうとした瞬間_____
プルル…プルルル
あれ?今日は…
顔合わせの日に配られたシフト表を確認し、課題を放り出して撮影現場に向かう。
日によって撮影現場が変わるらしく、私はそれを楽しみにしていた。
今日は、オックスフォード大学らしい。
『おはようございます!』
嬉しさで頭がいっぱいだった私の意気揚々とした声はホグワーツの大広間、グレートホールに響き渡った。
「元気いいねぇ、そういう子は大歓迎だよ」
そう言って監督が大笑いすると伝染していくようにスタッフさんもみんな笑う。
辺りを見渡すと、ザワザワしている子役達、いろんな撮影道具。
なんだか魔法の世界の裏側に飛び込んだようでどうしようもなくワクワクした。
「あの、ちょっといいかな」
酷く落ち着いた爽やかな声が耳に届いたのはその直後だった。
私の間後ろから聞こえたように感じて、思わず振り返る。
息を呑む程に顔が整っていて、笑った表情がとても優しいとんでもないハンサムが立っていた。
“なんで名前知ってるの?”
そう言おうとしたが、何やら少し気持ちが昂っていそうな彼の次の言葉に塞がれる。
自己紹介した時なんて何百人も居たはずなのに。
セドリック・ディゴリー、通常ハッフルパフの王子。
容姿端麗、成績優秀、温厚篤実の三点を兼ね備えた優等生の鑑のような人物。
彼にぴったりだ。
______そしてチョウと付き合っている人
合点がいった。
これから私達は関わることが多いだろう。
だから話しかけに来てくれたんだ。
それにしても顔が綺麗だな…なんて思ってじっくり見つめていた。
すると彼のお手本のような笑みが段々崩れて、目が右往左往し出す。
意図せず口から溢れた言葉に自分でも驚く。
そう一文字だけ発すると、彼は瞬く間に耳先まで真っ赤になった。
その状況が何故か無性に可笑しくて、あはは笑と思わず笑みが溢れる。
わざとらしく咳払いをして、あからさまに話を逸らそうとしてることが目に見えて分かって。
それらがまた私の朗笑を弾けさせた。
顔が火がついたように赤くなっているロバートとずっと笑っている私の握手は、側から見て異様に映っただろう。
そんなこんなで、記念すべきハリー達の入学式のシーンの撮影が始まった。
チョウはハリー達より年上の設定だから前の席を開けておかなきゃいけない。
少し辺りを見回して座れそうな席を探す。
ここにしようかな。
「3.2.1.スタート!」
ふと目に留まった席に座った直後、カメラの掛け声が響き、録画が始まった。
大きな扉が開き、沢山の一年生達が緊張した面持ちで入ってくる。
先頭はハリー役の…ダニエルとか言ってたっけな。
どうやらドラコやハーマイオニー、ロン、ハリー、その他子役数人のシーンを撮って終わりらしい。
そのあとは、主役3人のシーン中心になるため、その他の役はほとんど楽屋にいることになった。
セドリック役にハマりすぎていて思わず名前を間違える私に呆れたように笑う彼。
撮影場の裏に隠れていた私達は、そこから離れて「game space」と書かれた部屋に入る。
中は数人ほどしかおらず、一台のテレビと、カードゲームや、色んなおもちゃが置いてあった。
テレビ画面のゲームに夢中だったドッペルゲンガーのような二人組が目を輝かせてこちらを見てきた。
2人の止まらない掛け合いに声を出して笑う。
「「ああそうだよ!」」
息ぴったりすぎる返事に思わず目を見開く。
そのあとは4人でわーぎゃー騒ぎながらレースゲームをした。
数時間程経って、負け続けてへとへとになった私が、横になってオリバーを見上げると、彼は笑いながら言った。
3人が大爆笑しながら1位、2位、3位、とゴールしていく中で私だけ強制終了だったのは本当に許せない。
そしてその次の日、「ゲームスペースの横にある自習室に数人の声が響きすぎて集中できなかった」とクレームが入ったのはまた別のお話_____
















編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。