その後、生徒会学生寮に入ってすぐに灯部先輩が迎えてくれた。大扉の先には正面に受付カウンターらしきものが設置されており、左右対称に大階段が上へ続いている。天井を見上げると、大きなシャンデリアがかけられていた。
そう言うと、灯部先輩は「やばい、火つけたまま来たんだった」と言いながら、左のフロアの奥にスタコラとかけていった。
麗ちゃんは手前から3番目の部屋らしい。
また後で遊びに行こうかな。
麗ちゃんと別れて自分の部屋…204号室に向かう。
恐る恐る渡された鍵を差して左に回し、ドアノブを持って扉を開ける。
一番奥の壁に大きめの窓と水色のカーテン。左側の壁に沿うようにして奥からクローゼットとベット、右側の奥には勉強机が置かれている。床にはカーテンと同色の猫の顔のシルエットを模したカーペットが敷かれていた。
ハンガーラックに、腰に巻いていたブレザーを掛けて、バックは勉強机の横の大きめのバスケットに入れる。
勉強机の上にメモが置かれていたので、
手にとって読んでみる。
「新しいお部屋は気に入ってくれたでしょうか?実は、生徒会学生寮には特殊な妖術がかかっていて、それぞれの部屋の主人の性格や好みに合わせてインテリアやデザインが変わるようになってるんですよ。面白いでしょ?お二人の部屋もどうなったか気になるので、もし良ければまた今度お部屋に伺いますね。」
僕は「皆の部屋はどんなのだろう」などと想像を膨らませながら、いつも私服で愛用している猫耳フードの付いた赤いパーカーに着替える。
部屋を出てすぐ、バッタリと麗ちゃんとドアの前で会った。
なんだろう、俺の気のせいだろうか。麗ちゃんが少し落ち込んでいるように見える。俺はなるべく明るく話しかけた。
麗ちゃんが慌てて203号室を体で隠すように扉の前に立つ。
なんか怪しいけど、これ以上麗ちゃんの気分損ねるのは嫌だしなぁ。無理に押し通るのも良くないし、また今度見せてもらお。
1階に向かう階段の踊り場でチョコボー会長とバッタリ出くわした。
踊り場にある小さめの窓の傍に、たしかに赤色がかった黄色い花が生けられていた。マリーゴールドだった。
チョコボー会長はもう風呂を済ませてきたのか、髪も下ろして幼子サイズのパジャマを着ていた。
すると、下の階の方からカンカンカンという金属音が聞こえた。その直後、階段のすぐ下にひょっこりと灯部先輩が、フライパンとターナーを持って出てきた。
もしかして、さっきの音はフライパンとターナーをぶつけて出した音だったのだろうか。だとしたら結構渋いなぁ。
階段を降りきったところで麗ちゃんがふと左の方に視線を向ける。
そう言うと、チョコボー会長は左手に進み、もう開けられていた真紅の扉の先に進む。
部屋に入ってみると、そこは普通の家庭と同じような温かみのある雰囲気のキッチンとリビングルームだった。
灯部先輩にうながされて、カウンターから料理をテーブルに運びながら問う。チョコボー会長はすでにレストランにあるようなお子様用の高い席に座っていた。
すると、上からギシギシと階段の段差がきしむ音がする。
しばらくすると、何者かが廊下の暗闇からぬっと現れ、部屋に入ってきた。
長髪を下ろしており、若干乱れていて、色も黒髪の紫メッシュだ。目元は長い前髪で隠れていて、服装は紫と黒のぶかめのジャージを着ていた。どこかダウナー系の雰囲気をかもし出しているその何者かは、こちらをちらと見てダイニングテーブルの手前の右側の席にストンと座った。
だるそうな声を聞いて更に疑う。
この人が鬼頭副会長?
信じられない。
そう言って、今まで顔の上半分を覆っていた鬼頭副会長(?)の長い前髪を、灯部先輩が後ろからはらりと上にめくる。
鬼頭副会長……いや、学生寮では雰囲気的に玄彗先輩の方がしっくりくるな。俺と麗ちゃんはまだ半信半疑で玄彗先輩をまじまじと見つめている。
すると、玄彗先輩が急にこちらを向いた。
玄彗先輩が真顔のまま、
両頬の横でダブルピースしながら言う。
ついに耐えかねてため息をつきながら灯部先輩に問う。灯部先輩はギャハハハと豪快に笑いながら言った。
鬼頭副会長ではない、もう1人の鬼頭副会長に向かって人差し指で指差す。
皆が各自の席について食卓を囲む。
おまけ、食卓にて。



















編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!