―入間基地 滑走路付近通路
戦闘機が訓練のため飛び立っていく。私たちはそれを眺めていた。風が吹き、私が着ている迷彩服の裾がたなびく。
「最近、早野疲れてそうだけど大丈夫?」
文がそう言って私の顔を覗き込む。
「大丈夫だよ」
そう言って私は笑顔を作る。
「絶対嘘!早野、無理しないで。お願い…」
そう言って文は私の身体に寄りかかる。灰色を基調とした空自のデジタル迷彩服を掴み、私に訴える文。
「文、心配させて悪かったな。ただ、ここで頑張らないと幻想郷を守れないんだ」
そう言うと文は私から1歩離れた。
「早野が正義感強いのは分かってる。だから、早野がそう言う気持ちも分かる。でも、早野が辛そうにしてるのが苦しいの。私はただの記者。現場を見て写真を撮ることしかできない………。それが悔しいの…!」
私はそう言って涙を流す文を抱き寄せた。
「文という存在があるから、俺は頑張れるんだ。いつもありがとう。十分文は俺の心の整備士として働いてくれてるよ」
その時、私たちの元に1人分の足音が近づいてきた。たく、感動の雰囲気だったのに。
「おっと、お邪魔でしたか?」
「誰だ?」
文を抱いていた手を解き、その声の主の方を向く。そこに立っていた人物は、黒色のフード、黒のズボン、腰には拳銃が入ったホルスター、そして、狐の面。
私は、瞬時に太ももについているホルスターから9mm拳銃を取り出す。それと同時くらいに、相手も拳銃の照準をこちらに向ける。
「文、すぐに誰かを呼んでこい。自衛官なら誰でもいい、早く!!」
拳銃を構えたまま、文に言う。
「わかった!」
そう言って、文は走り去っていく。この場にいるのは、私とこいつだけだ。
「なんだ?単身で敵地とも言える自衛隊基地に侵入だなんて。寝返るのか?」
私が挑発混じりにそう言う。
「いやいや、今日はあなたに用があってきたんです」
「私の用?」
「ええ、幻想郷派遣隊 第一航空団 第一飛行隊所属、早野一等空尉に用がね」
「なんなんだ?そんなに人のこと調べ上げて。気持ち悪いぞ?」
「そんな軽口を叩けるくらい余裕があると。銃を向けられているというのに………。図太い精神してますねぇ」
「こんぐらいの精神して無いと、空自でパイロットなんてできないぞ」
そんな軽口を叩きながらも、私は相手の動向を探る。
「そんで、用ってなんだ?」
「ただのお礼参りですよ。うちのパイロットが幾度となく壊滅させられてますから」
「幻想郷を守るためだからな。お前らには幻想郷は渡さない」
「そんな大好きな幻想郷の土をもう踏むことなく死ぬなんて、かわいそうですね」
お礼参り。それは復讐のことだろう。にしても、今こいつが俺を殺すのか。なんか実感がわかないな。そもそも、殺される気がないからか?
「お前に俺は殺せない」
「いいえ、絶対に殺します。ああ、抵抗はしないでくださいよ。暴れると痛いですからね」
そう言うとそいつは、私に向かい発砲した。咄嗟に、近くにあったフォークリフトの後方部に身を隠す。フォークリフトは、後ろ側に重心を傾けているため、9mmの銃弾から身を隠すのには最適だ。
「抵抗するなと言ったのに、愚かですね」
私は無言で身体をフォークリフトの影からだし、射撃をする。相手には当たらない。私は相手との間合いを一気に詰めると、相手の拳銃を掴んだ。
「格闘戦ですか。いいでしょう、なぶり殺して差し上げます」
そう言って狐の面をつけたそいつは構えを作る。私も両手の拳を握り、ファイティングポーズをとる。
「行くぞ」
私はそう言うと、右手を思いっきり相手の顔面に進めた。だが、片手でそれを捌かれ、ガラ空きになったボディーに蹴りを入れられる。
「ガハッ」
腹がえぐられるように痛い。蹴りの威力はそのまま体内の臓器に伝わる。吐き気を催す痛さが私を襲う。
「その蹴り………お前、さては格闘素人じゃないな?」
「そうなんですよ〜。極真空手を少々嗜んでおりまして。あなたも、なかなか鋭い突きをしてきましたが……、なにか格闘技を?」
「俺も極真をかじってんだ。ま、高校までだがな」
そう言ってる間に、痛みは少し引き、私はまた構えを作った。しばしばの睨み合い。足を前後左右に動かしながら、相手の出方を探る。今度の先制攻撃は相手からだった。回し蹴りからの後ろ回し蹴りの連続技を仕掛けてくる。私はバックステップでそれを避け、蹴り終えた瞬間間合いを詰めて、みぞおちに左手で下突きを入れる。人体の右側の下腹には臓器が位置しており、そこを殴るとなかなかに痛い。
「ハハ、なかなかやりますねぇ」
「国民を守る自衛官が強くなくてどうすんだ」
「そんな自衛官はこれから死ぬんですがね」
「さぁ、それはどうかな?」
私はまた間合いを詰める。ひざ蹴り、下段回し蹴り、突き、下突き、お互いに技を繰り出し、お互い息を荒くしていた。私の顔にはいくつかの傷ができ、相手の面も所々傷と、出血元の不明な血が付着していた。おそらく、どちらかの拳から出た血なんだろうが、今はそんな事どうでもいい。相手が間合いを詰めようとしたその時、沢山の足音が近づいてきた。
「動くな!!」
灰色のデジタル迷彩、テッパチ、防弾チョッキ、89式小銃………。文が呼んできてくれた自衛官達だ。
「ここは一時撤退ですかね」
狐はそう言うと、素晴らしい身体能力で逃走した。
「追え!」
1人の隊員がそう言うと、大人数の隊員達が狐を追っていく。
「早野!!大丈夫!?」
「ああ、大丈夫だ」
文の問いにそう答えると、衛生科の隊員が駆け寄ってきた。
「大丈夫じゃないですよ。とにかく、医務室行きましょう」
そうして、私は衛生の隊員に担がれ、医務室へと向かった―












編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。