第8話

お茶会
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2024/01/21 03:00
ニーナ
……もう帰ろ
グレーテル
……まあまあ、せっかく来てくれたんだから、
もう少しゆっくりしていったら?
エリーゼ
うん、それにまだ殴りこんでないよ?
ニーナ
エリーゼ……殴り込むって、意味知ってる?
エリーゼ
えー、よく分かんない
ぼすん。

震える手でエリーゼを殴る。

毎度のごとく、エリーゼへのダメージは0だ。

お前耐久力高すぎだろ。

私の攻撃力が弱い、なんてことは考えない。
グレーテル
そうだ、お茶でもしましょうか!
……私、料理得意なの!
エリーゼ
あっ……
エリーゼの顔に動揺が走った。

……前代未聞だ。

あってはならないことだ。

……どうしようもない危険が近づいている気しかしない。

おい。

私に何をしようと言うんだ。
ニーナ
帰りてぇ……
グレーテル
今日ね、実はクッキーをたくさん作ってたの!
丁度いいし、それを皆で食べよう!
ニーナ
いや、私、もう帰りますから……
……あ。

空気が凍り付いた。
グレーテル
……食べて、くれないの?
マズい。

これは危険だ。

食べなきゃ殺される、そんな感じだ。
ニーナ
あ、いえ、だったら頂こっか……
グレーテル
あ、良かったー!
ニーナ
(クソ……!)
にこにこと微笑むグレーテル。

いや怖いって。
グレーテル
アレクシアも呼んで、お茶会をしましょう!
エリーゼ
分かった、呼びに行ってくる!
ニーナ
(あああぁぁぁぁ……)
数分後。

私、エリーゼ、アレクシア、そしてグレーテルの4人は、

先程までアレクシアがゲームをしていた部屋に座っていた。

アレクシアの顔が引きつっているのは見なかったことにする。

クソが。
グレーテル
……さあ、召し上がれ!
ニーナ
あ、はい……
グレーテル以外の3人の前には、それぞれクッキーを盛られた皿がある。

クッキーの量は3人とも同じくらい……ではなかった。

私の前だけ、異様に多い。

怖い。怖すぎる。
ニーナ
……エリーゼ、お前もう少し食べろよ
エリーゼ
いやー、せっかくだしニーナが多く食べな!
ニーナ
アレクシアも……
アレクシア
……お腹空いてない。あんたが食え
そう言いながらもアレクシアは膝の上のポテチをバリバリと食べている。

矛盾だ。

矛盾だらけだ。
ニーナ
いや、私は……
かちり。

音のした方……右を向くと、エリーゼが無言でピストルに指をかけていた。

左を向くと、アレクシアが無言でナイフに指をかけている。

正面にいるのは、満面の笑みを浮かべたグレーテルだ。

逃げ場がない。

おい。

どうなってんだよクソが。
アレクシア
ほら、食え……う、美味いぞ
エリーゼ
うん、本当に、美味しいよー?
アレクシアの声が震えている。

エリーゼの瞳は、ここではないどこかを見ているようだ。

ああ、このクッキー。

絶対に美味しくない。

危険だ。

だが、食べないと私の命が危険だ。

……ああもう!!!!!

……ざけんじゃねぇよ!!!!!
ニーナ
……っ、いただきます
意を決した。

クッキーを一つ、口に放り込む。
グレーテル
どう、美味しい——
ニーナ
————うっ!?!?!?
……視界が、白く染まった。
続く……

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