第14話

お誘い
92
2025/09/13 01:48 更新
夜の街。
あなたは単独でのパトロール中、逃げる窃盗犯を追い詰めて拘束していた。

「ふぅ……よし、確保完了っと!」
手早く拘束テープで縛り上げるあなた。そこに、ふっと風を切る音とともに影が降り立つ。

「いやぁ、相変わらず動きが軽いね。ちっちゃい頃から見てるけどさ、育ったねぇ」
赤い翼を広げ、軽口を叩くホークスが立っていた。

「ホークスさん!?なんでここに?」
「たまたまパトロールルートがかぶっただけ。……いや、正確には狙って来たんだけどさ」
「え?」

ホークスは犯人をちらっと見て、すぐヒーロー課の到着を待つ間、あなたの隣に軽く腰を下ろす。

「君さ、もう今の事務所で学べることは、だいたい終わってるんじゃない?」
「……そんなこと……」
「いや、俺が見れば分かる。即応力も冷静さも、一人で現場回せるレベルだ。……だけどさ、君の力はもっと広い世界で羽ばたける」

あなたは言葉を失う。
ホークスの目は、いつもの飄々とした雰囲気とは違い、真っ直ぐで鋭かった。

「俺の事務所に来ない? サイドキックとして」

「っ……!」
突然の勧誘に、あなたの胸は大きく跳ねた。
ホークスの下で働くということは、日本でトップクラスの環境に身を置くということ。
そして、憧れの背中をずっと近くで見られるということでもあった。

「……そんな、大きなこと、私が……」
「自信ない?」ホークスはニヤリと笑った。「大丈夫。俺が保証する」

その一言が、不思議と胸に響いて、心が揺さぶられる。

「……考えさせてください」
「もちろん。すぐ答えろなんて言わないよ。でもね、俺の直感ってけっこう当たるんだ。君が来てくれるってさ」

羽をひらりと舞わせて、ホークスは夜空へ飛び去った。
狐白はその背中を見上げ、胸の奥が熱くなるのを感じていた。
夜の街。
ホークスが飛び去った後も、狐白はしばらくその場に立ち尽くしていた。
胸の奥がざわざわして、落ち着かない。

(ホークスさんの事務所……サイドキック……私なんかが……)

そのとき、ふと頭に浮かんだのは、かつての担任の顔だった。
彼なら、どう答えるだろうか。

あなたはポケットからスマホを取り出し、登録された「相澤消太」の名前をタップする。
卒業後、先生の言った言葉を思い出す。
「何かあったら相談しろ」
割と早く使うことになってしまった。
コール音が数回鳴り、やがて、眠たげな声が聞こえてきた。

『……こんな時間に電話とは、何かあったか』

「……先生。あの、少し相談したいことがあって」
あなたの声は、思ったよりも震えていた。

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