「あ、あなたのにこ」
仕事帰り。明日は休みで、姉さんのとこに泊まりに行こうと夜ご飯の買い物に立ち寄ったスーパーで蓮くんと奨くんにばったり。
あなたのにこ「え、偶然?買い物?」
奨「今日早く終わったから久しぶりに飯でも作ろうかなって、なんか蓮がついてきた(笑)」
蓮「ご馳走になろうと思って、あなたのにこは?あなたちゃんとこ?」
あなたのにこ「うん、私もご飯作ってあげようかなって思って」
蓮「まだ元気ない?」
あなたのにこ「んー、まぁちょっとね」
奨「...そっか」
蓮「...みんなでご飯食べる?」
あなたのにこ「え?」
蓮「そうだ、そうしよ?奨くん、あなたちゃんちお邪魔しようよ」
奨「え、急に行ったら迷惑じゃ、」
あなたのにこ「連絡してみようか?」
蓮「してしてー」
奨「蓮、」
蓮「いいじゃん、みんなで食べた方が楽しいし、奨くんも心配してたじゃん?」
奨「まぁ、それは...、」
なんか腑に落ちないような奨くんを気にしつつ。姉さんに電話して、奨くんと蓮くんも連れてっていいか聞いてみた。笑いながら「いいよ、大丈夫」って了承してくれたから、ふたりに伝えて。にんまり顔の蓮くん。奨くんが困ったように笑った。
蓮「なに作るの?」
奨「人数増えたからね、餃子にしようかと」
蓮「プロテイン?」
奨「女の子にプロテインは作んないわ」
あなたのにこ「うん、私もプロテインはいらないわ、気になるけど」
奨「包むの手伝ってね」
あなたのにこ「もちろんです」
蓮「楽しみー」
マンションに着いて、エントランスを開けてもらって。笑顔で迎えてくれた姉さんにほっとしながら。蓮くんと奨くんも少しだけ安心したようだった。
あなた「いらっしゃいませ」
蓮「こんばんはー」
奨「ごめんね、急に」
あなた「ううん、全然だよ」
リビングに向かいながら「今日は奨くんの手料理だってー」なんて笑ったら、姉さんの目がキラキラ輝いて。
あなた「え、ほんと?」
奨「大層なものは作れないけどね」
あなた「嬉しい、楽しみ」
ふふって笑う姉さんに奨くんも微笑み返して。私と蓮くんまで微笑んでしまう。なんかこのふたり、マイナスイオン出してそう。出てねぇですけども。
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あなたのにこ「飽きたー疲れたーもう奨くんが全部やってー」
奨「手伝うって言ったじゃん」
カウンターに蓮くんと並びながら。せっせと餃子を包んでるあなたのにこちゃんと與那城くんを眺めてた。與那城くんの手が大きいのか、あなたのにこちゃんの手が小さいのか。サイズのバラけた餃子がぎゅうぎゅうに詰められていく。それが可愛くて、思わず写真を撮ったりして。これ、何人分なんだろ?多くないか?なんて思った。
あなたのにこ「休憩ー、姉さん交代!」
そそくさとキッチンを離れて、鞄からポーチを取り出したあなたのにこちゃん。
蓮「あーあなたのにこ、もうやめなさいって言ってんじゃん!」
あなたのにこ「わーわー聞こえない聞こえなーい!」
ベランダに向かうあなたのにこちゃんをぎゃーすかと追いかける蓮くんと逃げるあなたのにこちゃん。仲良し。「お邪魔します」って、手を洗って、與那城くんの隣に並んだ。
「なに?あれ」
「お煙草休憩」
「え、あなたのにこちゃん吸うんだ?」
「みんなの前で吸った事なかったもんね、蓮くんにバレて怒られたみたいだよ、体に悪いでしょって」
「お母さんか」
「だね(笑)」
「好きにさせてあげればいいのに、やめる時は自分でやめるでしょ」
「へぇ、與那城くん寛大」
「そう?」
「自分の彼女が吸ってても気にしない?」
「んー別に気にしない、吸いたきゃ吸えばいいし、止めたくなったら自分で止めるでしょ」
「そっか」
與那城くんと並んで、黙々と餃子を包む。やっぱりこれ、多くないかな?なんて、餃子を見つめてみた。下手かもしれない。手作り餃子の経験がなさすぎて、自分がこんなに下手なの知らなかった。へこむ。與那城くんは上手だな。
「...大丈夫?」
「え?」
「や、ぼーっとしてるから」
「あぁ、自分の下手さに絶望してた(笑)」
「下手じゃないよ」
「そうかなぁ、下手だよ」
「大丈夫だって、...大丈夫だからね」
「...?」
「...、」
「...、」
相変わらず、せっせと餃子を包む與那城くんを思わず眺めた。あぁ、與那城くんはいつもそうだったね。大丈夫だよ、心配しなくていいよって。いつも言ってくれるね。今日だってきっと、ふたりとも心配して来てくれたんだ。あなたのにこちゃんと会ったのは偶然だとしても、会いに来てくれたのはふたりの優しさだ。
「...ありがとう」
「...、」
「與那城くんが大丈夫っていつも言ってくれるから、大丈夫な気がする」
なにが大丈夫なのか、自分がなにを気にしてるのか。自分でもわかってはないけど。でも、なんだか全部、大丈夫な気がしてきた。今、落ち着かないこの状況もなんとなかる気がしてくる。
「出会ってそう経ってないけど、今までずっとあなたちゃんの事見てきたからさ、」
「...?」
「威尊とあなたちゃんは大丈夫だよ」
「...うん、そうだね」
「なにがあったかわかんないけど大丈夫だから、心配いらないよ」
「うん」
「それでも、」
「うん?」
「...それでも、それでもつらかったら、」
與那城くんの手が止まって。時間さえ、止まった気がした。
「俺のとこ来てもいい」
「...え、え?」
與那城くんがへらって笑う。餃子を見つめたまま。こっちを見向きもしないで。
「俺もそれなりにかっこいいし、優しいし?」
「...、」
「条件的には悪くない」
「...ん、」
「威尊と同じくらいだと思うけどなぁ、...でも違うんだろうなぁ」
「え?」
「条件は同じでも、威尊を選ぶんだろうね」
「與那城くん、」
「ごめん、言うつもりなかったんだけど」
「...、」












編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。