私の名前は日和空。どこにでもいる普通の中学一年生。
好きなのは、絵を描くことと静かな場所。
苦手なのは、目立つことと......男の子。
朝。学校近くで、親友の海ちゃんと会った。
海ちゃんとは、小学五年生の頃からずっと仲良しの友達。
笑顔でうなずいて、2人で並んで歩いた。
私は、私立天空学園という中学校に通っている。
校舎が綺麗で、お城みたいな学校。制服も可愛くて、女の子から人気みたい。
私がここを選んだ理由は校舎や制服じゃなく、学校推薦を貰うことが出来たから。
学費が高い中学校だけど、特待生として学費免除で通うことが出来ているんだ。
もちろん、勉強は頑張らなきゃいけないから、学年三位の成績を収めるという特待生の条件を守るため勉強を頑張っている。
学校は大好きだから、毎日が楽しい。
学校の隣に立っているおうちを見て、海ちゃんが顔をひきつらせていた。
お城みたいな学校の隣には、本物のお城があるんだ。
ここには、理事長が住んでいるとか......こんなおうちに住めるなんて、理事長はお金持ちなんだろうな......。
そんなことを思いながら、正門をくぐった。
2人並んで、一緒に教室に向かう。
海ちゃんは手でパタパタと風を作るように仰いでいた。
今年は例年より暖かく、まだ五月の下旬なのに夏本番くらいの暑さだ。
私も暑さに強い方ではないけど、真っ青な空を見るのは好き。
今日も、一点の曇りもない青い空が広がっていた。
気持ちがいい朝だなぁ。
廊下の窓から空を見ながらそんな事を思っていた時、誰かとぶつかった。
思わずふらついたけど、海ちゃんが支えてくれたら転ばずに済んだ。
ぶつかった相手は、男の子だった。
男の子だと気づいた瞬間、私の身体が金縛りにあったみたいにこわばってしまう。
怖いという感情が浮かんで、思わず視線を下げた。
相手と目を合わせないまま、私も謝る。
って、感じが悪いかな......。
海ちゃんははっきり言えるタイプの女の子だから、そう言ってさっきぶつかった子を睨みつけていた。
海ちゃんが私の手を引っ張って、歩き出す。
はぁ......怖かった......。海ちゃんが一緒にいてくれてよかった......。
そう言って微笑んでくれる海ちゃん。私はいつも、海ちゃんに助けられてばっかりだ。
さっきぶつかった男の子の声が、後ろから聞こえた。
コソコソと話している会話の内容に、ちくりと胸が痛んだ。
海ちゃんも聞こえていたのか、鬼の形相で振り返った。
放っておいたら、このままあの男の子達に掴みかかっていきそうな勢いだ。
私はぎゅうっと海ちゃんに抱きついて、必死に海ちゃんをなだめる。
私のために怒ってくれるのは嬉しいけど、海ちゃんが誰かとケンカをしちゃうのはイヤだっ......!
そう言えば、海ちゃんは納得してくれたのか、振りあげていた腕を下ろした。
海ちゃんが言ってるのは、このメガネと、シンプルにふたつにくくった髪型の事だと思う。
私はいつも、分厚いメガネをかけているから。
ちなみに、視力はどっちも2.0でとてもいい。
このメガネも伊達メガネ。
実は、海ちゃんと2人きりの時はメガネは外している。
家でもつけないし、つけるのは外に行く時と、学校にいる間。
びっくり......?私はメガネがあってもなくても、そこまで見た目に変化はないと思うけどな......。
このメガネは、私にとってお守りみたいなものだ。
男の子が苦手になったのは、まだ小学校低学年の時だった。
私はいつもクラスメイトの男の子達からからかわれたり、いじめられていた。
ブスだって言われたり、スカートをめくられたり......そんなイヤがらせを受けて、いつの間にか男の子が怖くなってしまったんだ。
学校に行くのも怖くなって、一週間家に引きこもった。
そんな私に、お母さんがこのメガネをくれたんだ。
次の日メガネをかけて学校に行くと、少しだけ恐怖心が薄れていた。
このレンズ1枚が、私と男の子達の間に壁を作ってくれているみたいで、安心出来たんだ。
それから......私はこのメガネを、手放せなくなった。
瞳の奥に、メラメラと怒りの炎を燃やしている海ちゃん。
こんな親友を持って......私は幸せだなぁと感じた。
海ちゃんが、ぎゅっと私を抱きしめてくれる。
ふふっ、ありがとう海ちゃん。本当は口に出して言いたかったけど、また言い過ぎだって怒られる気がしたから、心の中でお礼を言った。













編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。