時間は、思っていたよりも簡単に過ぎていった。
一週間。
二週間。
一ヶ月。
その間に、季節は少しだけ進んで、
体育館に入る空気も、わずかに変わった。
でも。
その事実だけは、何も変わらなかった。
俺は、無意識に視線を巡らせて、
そして毎回同じ結論に辿り着く。
どこにもいない。
短く返す。
レシーブは、相変わらず完璧だった。
むしろ前より安定している、
とコーチに言われたほど。
そう答えながら、内心で小さく笑う。
違う。
ただ、余計なことを考えないようにしてるだけ。
考えた瞬間、頭に浮かぶのは決まっている。
あの背中。
あのフォーム。
あの、当たり前みたいにそこにいた存在。
小さく舌打ちが漏れる。
その瞬間、ボールが少しだけ大きく返った。
俺が軽く謝り、セッターが即答する。
ミスじゃない。
今のは、自分の問題だ。
まだ、引きずっている。
認めたくない事実が、じわじわと滲んでくる。
その日の練習終わり。
ロッカールームのテレビで、
スポーツニュースが流れていた。
何気なく、視線が向く。
反射的に、足が止まった。
名前が呼ばれる。
その瞬間、空気が一気に冷えた気がした。
画面には、見慣れた姿。
過去の試合映像。
スローモーションのジャンプ。
決まるスパイク。
全部、知ってる。
全部、何度も見てきた。
___、それだけ。
それだけだった。
ただ淡々と継げられる、耳の痛い事実。
思わず、声が漏れる。
隣にいたチームメイトが振り向く。
言葉が続かない。
画面はもう次の話題に移っている。
笑顔のアナウンサー。
別の選手の特集。
何事もなかったみたいに、世界が進んでいく。
誰にも聞こえない声で呟く。
怪我。
長期離脱。
復帰未定。
それで終わり?理由は?
どこが悪いのか。
どれくらい重いのか。
戻ってくる気はあるのか。
何も分からない。
何も、言われていない。
喉の奥で、何かがひっかかる。
最初は、ただの違和感だった。
でもそれは、時間と一緒に形を変えていく。
ざらつきが、
棘になって、
少しずつ、内側を削っていく。
振り払うように答える。
でも、もう分かっていた。
これはもう、待ってる側の感情じゃない。
置いていかれた側の感情だ。
ロッカーに手をかける。
勢いよく閉めるつもりはなかった。
でも、思ったより強く音が響いた。
バンッ、と。
ぽつりと落ちた言葉は、
自分でも驚くくらい、冷たかった。
あんなに追いかけていたのに。
あんなに、届きたかったのに。
理由も言わず、何も残さず、
ただ、消えるなんて。
小さく吐き捨てる。
その瞬間、胸の奥がじくりと痛んだ。
でも、その痛みすら。
もう、どうでもよかった。












編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。