体育館の扉を開けた瞬間、視線が集まった。
ボールの音も、足音も、その一瞬だけ遠くなる。
_______、場違いだな。
そう思いながらも、足は止めなかった。
ここに来たのは、自分で決めたことだから。
誰かが小さく呟く。
名前を呼ばれる前に、一歩踏み出した。
コートの中央。見慣れたネット。
その向こう側に並ぶ代表メンバー。
その中で、一人だけ。
動かない視線があった。
逸らすこともなく、真っ直ぐにこちらを見ている。
低い声。
大きくないのに、はっきり届く。
その視線の主は、小川智大だった。
ボールを片手に持ったまま、
じっとこちらを見ている。
できるだけ普通に返したつもりだった。
でも、その一言で空気が変わる。
静かに吐き捨てられた言葉。
敬語が消えている。
それだけで、十分だった。
一歩近づく。
距離が縮まる。
それでも小川は動かない。
視線が逸らせない。
分かってる。
こんな言葉で済む話じゃない。
言った瞬間、自分でも薄いと思った。
小川の目がわずかに細くなる。
乾いた声。
その奥にあるものは、笑っていない。
そこで、言葉が止まる。
そして、すぐに飲み込むようにして。
視線が外れた。
それだけで、胸の奥がざらつく。
何事もなかったように、小川はボールを弾ませた。
乾いた音が響く。
そのまま背を向ける。
呼び止める言葉は、出てこなかった。
何を言えばいいのか、分からない。
別の選手に声をかけられ、頷く。
コートに足を踏み入れる。
その瞬間、音が一気に戻ってきた。
でも、さっきより居心地が悪い。
レシーブ練習が始まる。
ボールが飛んでくる。
体は、ちゃんと動いた。
しっかり面を作り、いい感触で上がる。
________なのに。
次の瞬間、そのボールは俺には来なかった。
別の選手へ、綺麗に繋がれる。
ネットの向こうで、小川はもう構えに入っている。
一度も、こちらを見ないまま。
偶然じゃない。
意図的に、外されている。
もう一度ボールが来る。
今度は少し強い。
踏み込んで、低く繋ぐ。
無意識に、小川のいる位置へ。
その瞬間、小川が動いた。
完璧な位置取り。
迷いのない一歩。
______そして。
やっぱり、別の場所へ繋がれる。
一切の躊躇もなく。
小さく呟く。
でも、不思議と嫌じゃなかった。
むしろ_______…
何も言わずに消えた人間が、
何もなかったみたいに戻ってきて。
受け入れてもらえるわけがない。
分かってたことだ。
それでも、ここに来た。
逃げたまま終わるのが、嫌だったから。
もう一度、ボールが上がる。
次は、もっといい形で繋ぐ。
何度でも合わせる。
無視されても、切られても。
それでも、続ける。
ネットの向こうで、小川が構える。
その目は、冷たくて強い。
でも。
どこか、捨てきれていないものを
抱えているように見えた。
一瞬だけ、視線が合う。
すぐに逸らされる。
ホイッスルが鳴る。
次の一本が始まる。
これは、きっと。
ただの再会じゃ終わらない、そんな気がした。

名前 ↺ あなたの苗字 あなた / あなたの苗字のローマ字 あなたの下の名前のローマ字
ポジション ↺ アウトサイドヒッター
身長 ↺ 192cm
出身 ↺ 神奈川県
その他 ↺ アンダーカテゴリー日本代表選出経験有り
誰もが知っていて、絶大な人気を
誇るという過去を持つ、戻ってきた選手
はじめまして!!或いはお久しぶりです、磐佐悠李です。
この前完結した『無名の大エース』から来てくれた方も多いと思います。
『無名の大エース』をご覧になっていない方は、是非ご覧ください!
さて、新作ですよーー!新作ウィークですよーー!(?)
まずは新作ウィークの第一弾として、『憧れだったあの子』です。
この小説も20話で完結させちゃいます。
良ければご愛読ください、…!
投稿日は、月曜日と木曜日の朝6:00の週2回更新です。
では!『憧れだったあの子』を、是非ともお楽しみください!












編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。