朝。俺は手を置いている物がビクッと大きく動いた事で目を覚ました。
まだ覚醒していない意識の中、窓から差す朝日の眩しさに渋々目を開けると、
顔を真っ赤にした莉犬くんが頭の上に置かれた俺の手を上目遣いに見ていた。
ただ、ぼんやりした夢と現実の狭間にいた俺は、
それが現実だと自覚できずに、
と言いながら、その言葉で更に顔を赤らめた莉犬くんの頭を撫でながら微笑して、再び眠りについたのだった。
目を開けた俺は、自分の肩を揺すっていた人物の事を認識すると、慌てて跳ね起きた。
何故莉犬くんが俺の寝室に。
俺の頭の中はそんな疑問で埋め尽くされていたが、
しばらくして頭が冷静になると、昨日の出来事が脳裏に蘇ってきた。
再び顔を赤く染めた莉犬くんが、俯きながら小さく口を開く。そのぼそぼそとした声を聞いて、俺は2度寝する前の出来事を完全に思い出した。
普段は2度寝する前の記憶などほとんど残っていないのに、なぜか今日だけは莉犬くんのさらさらな髪の毛の感触がしっかりと手に残っていた。
やっぱりこういう時はストレートに謝るのが1番だ。
俺は素直に莉犬くんへ頭を下げた。
莉犬くんは謝罪をしてきた俺に少し困惑しつつも、
俺の失態を許してくれた。
優しい。
照れた莉犬くんは、その事を隠すように俺の腕をつつきながらからかってくる。
冗談抜きで俺はこの1件が起こるまで自分の寝起きは結構良い方だと思っていたのだ。
俺は申し訳なさから莉犬くんと目を逸らした。
俺が二度寝していた間に莉犬くんが作ってくれていた意外と手の込んでいる朝ごはんを2人で食べ、身支度を整え、俺たちはショッピングモールへと出かける準備をしていた。
莉犬くんの声に俺は後ろを振り向く。
莉犬くんは「別に着替えくらい見てもいいのに」と
言っていたが、さすがに見る勇気はない。
莉犬くんは俺じゃとても思いつかないようなオシャレな格好をしていた。
それでも、裾が長いためダボッとしているズボンが可愛くて、俺は微笑を浮かべた。
俺の視線に莉犬くんは物言いたげな顔をしていたが、
俺の格好に莉犬くんもまた微笑を浮かべた。
そう。俺が今着ているのは莉犬くんセレクトのシンプルな白いTシャツだった。
莉犬くんは、俺と同居することが決まってから、
荷物と一緒に俺に似合いそうな服を何着か選んで持ってきてくれたのだった。
ふふんとドヤ顔をする莉犬くんの顔を目に焼き付けながら、俺は外出する時にいつも被っているバケットハットを身につけた。
莉犬くんも犬の耳型に膨らんだ可愛い帽子を身につけ、準備が整った俺たちはドアを開けて外へと足を踏み出した。
ショッピングモールの入口前で、莉犬くんの元気な声が響き渡る。
俺は莉犬くんに続いてショッピングモールの中に入ると、冷房の効いた涼しい室内に思わず笑顔になる。
隣では莉犬くんも「涼しいね〜」と 微笑んでいる。
莉犬くんは目を輝かせて俺のことを見つめる。
莉犬くんが俺と一緒にしたかった事、、、?
考えを巡らせるが思い当たる事はなく、俺が莉犬くんを見つめ返していると、莉犬くんは元気に口を開いた。














編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!