第54話

Chapter.54
810
2022/06/13 13:11 更新





2月14日。




寒さもピーク。

マジで寒い。無理。


厚着は嫌いだけど、寒いのも苦手。

だから若い頃からパーカーに、革ジャンが定番。
(ばりばり中にヒートテック着るけど)




今日、たまたまロケで行った有名なパティシエのお店で、チョコレートケーキを買ってきた。



あなたにバレンタインデーで逆チョコ。(ケーキだけど)



コーヒー好きのあなたは、
チョコも大好きだからきっと喜ぶはず、と


柄にもなくひとりでちょっとだけ
ホクホクした気持ちになりながら

玄関のドアを開けた。




あなたが喜ぶ顔を想像すると
やっぱテンション上がる。







ガチャ








『ただいまー!』



『...........』







何も返事がない。

部屋の中が真っ暗だった。






『............え? あなた?』





まさか逆にサプライズとかしてくれてる?

とか思いながら
ゆっくりリビングに近づく。






『...............あなた?』






耳を澄ました。

人の気配がない。

物音ひとつせず、シンとした部屋だった。





リビングの灯りをつけた。








すると、テーブルの上に

一枚の書き置きと、部屋の合鍵が置いてあるのを見つけた。




買ってきたケーキを置き、メモを手に取る。









--- 翔太さんへ


たくさんの幸せをありがとう。

一緒に暮らしたのはたった4ヶ月だったけど、私の人生の中で一番幸せな時間でした。

突然、いなくなるのを許してください。
翔太さんは何も悪くないし、私が勝手に決めたことです。

翔太さんが大大大大大スターになるのを、心から願ってるし、誰よりも楽しみにしてます。

ずっとずっと呼んでみたかったの。

愛してるよ、翔太。


あなた ---
















頭の中が

真っ白になった。









『........は....?』






何が起こった?




まったく状況を飲み込めなかった。













その晩、

その足で、思い当たるところを探し回った。





と言っても、

東京に、あなたとの思い出の場所なんてほとんどなかったし

行く当てなんてあるわけがない。




夜遅くて"タマ"の店も、もう閉まっていた。










探しながら、ずっと考えた。







昨日まであなたは普通だった。

はず。




普通を装っていたのか?

俺があなたの異変に気づけなかったから?

仕事で忙しくしすぎたから?

潔癖すぎた?

甘えすぎた?

俺ってそんなに頼りない?






なんでだ、

普段は気づかないような

自分の欠点がどんどんどんどん湧き上がる。






あなたのこと思い出すと全部が笑顔。







なんで。



結局、頭に浮かぶのはこの文字。






もう、歩く気力がなくなり、一歩も進めなかった。



人のいない夜の歩道に立ちすくんだ。















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