「ちがッ、俺やってないッ」
ローレン・イロアス少年は焦っていた。
数分前まで、
砂場で一人で遊ぶことに没頭していたはずなのに。
今現在彼は自身を囲む
五名中三名の園児に責め立てられている。
もちろんその他二名とは、
手を繋いだあなた少女と刀也少年のことである。
「ローレンくん早く謝って!!」
「だから俺じゃな……」
「早く、早く!!」
「ぇ、う……」
ローレン少年には話す隙も与えず、
園児たちは早く謝れと口々に急かす。
彼らには、瞳に薄い水膜を浮かべる
ローレン少年の様子に目を留めていなかった。
「ちょっとどうしたの!?」
「ぁ、せんせ……」
はな組の担任が騒ぎを聞きつけて駆け寄ってきた。
それを見てほんの少しだけ安心したローレン少年は、
鼻を啜り事情を説明しようとする。
「俺──」
「ローレンくんが私のお城壊したの!!」
しかしそれを遮って話し始めたのは、
ローレン少年に砂のお城を壊されたと証言する女児。
その瞬間、
周りの園児たちも我先にと口を開く。
まるで、彼一人を犯人に仕立てあげるように。
それを聞いた先生はしばらくの間考えると、
「ローレンくん、お友達にごめんなさいして?」
ローレン少年に謝るように催促する。
何故彼女がローレン少年の意見を聞かないのか、
疑問に思うだろう。
民主主義のこの世の中で多数の意見を信じることは、
あながち間違いではない。
しかし、
彼女は無意識の先入観によって
判断を間違えてしまったのだ。
大人なのに、と思うかもしれないが
それが人間の汚い部分だ。
それでも彼女はなるべく平等であろうとはしていた。
その証拠に、声を荒らげて叱ることなく、
ローレン少年の背中をさすって答えを待っている。
そんなことをされては、
幼子でも自分が謝らなくてはいけないと
嫌でも察してしまうだろう。
「……ごめ、」
拳を力いっぱい握りしめ、
俯きながら謝罪の言葉を口にしようとした刹那、
「待って先生」
音楽の女神、ミューズの祝福を
一身に受けたような女の声が響いた。
バッ、と弾かれたように顔を上げた
ローレン少年の目の前には、
形の良い眉をキュッと顰めて「不機嫌です」と
言い張るような顔をした、
それはそれはかわゆいおなごが立っていた。
勿論、あなた少女である。
「あなたちゃん? どうしたの?」
「その子何もしてないわよ」
「私、見ていたもの」
先生の問いかけに、
彼女はさも当然と言ったように答えた。













編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。