迫り来る6の手から逃げるべく、俺は近くの
物陰に隠れる。
手は見失えば、俺の所に迫る事はねェ。
👁️( ぎょろッ
途端、目の前に巨大な目が現れて俺を捉える。
そして、それに反応するかのように6の手が
俺の所に迫ってくる。
この目ッ…手とリンクしてんのかよ!!
個性も使えねぇから、体術とかで何とかする
しか術がねぇんだよッ!!
それに、手は捕まったら逃げるのは不可能だ。
あの手の大きさは、俺は手足を拘束されちまう。
なんとか逃げ続けると、手の動きが遅くなった。
と、油断した瞬間だった。
正面からとんでもないスピードで迫ってくる手に
反応しきれずに手にぶつかる。
そのまま精神領域の壁まで飛ばされて身体を
壁に打ち付けられた。
いってぇ…!!?
壁がくそ硬い!!なんッだこれ!!?
手の平で押し潰すように両サイドから手が迫る。
何とか逃げるも、今度は両手で押し出すように
手が動き出す。自我でもあんのかボケ!?
自力で動き回ったり、その辺の壁や段差などを
駆使して逃げ続けるも人間にゃ限界がある。
ちくしょう、チクショウ!畜生ッ!!
何で個性が使えねェんだッ…
何で誰も救えねェんだ…!!
何で誰も助けれねェんだ!!
何であの時、俺は瑠衣を怪我させたんだッ!!
何であの時、直ぐにあなたがヴィランじゃねぇ
事を否定を…俺は出来なかったんだよッッ!!
動け、俺の身体動けよ!!
こんな所で死ぬくらいなら俺はあなたにッ…!
全身打撲した様に痛みが走る。苦かった筈の
口の中は鉄の味がする。
嫌な汗が流れて地面に垂れる。
俺は今、焦ってる。悔やんでる。後悔してる。
気付けなくてごめん。
怪我させてごめん。
悪口言ってごめん。
突っかかってごめん。
情けなくてごめん。
こんな俺はきっと…瑠衣に嫉妬してた。
何でも出来る文武両道の彼奴。
努力しなくても何でも感覚で出来るアイツと、
努力と才能でなんとか補ってきた俺。
出ろよ俺の個性。
手の平から、足裏から、何処でも良い。
俺の個性。
出ろ、出ろ出ろ出ろ出ろ出ろ出ろ出ろッ!!!
立ち上がる俺を見て、餓鬼は俯く。
餓鬼の握る拳は力んで震え、爪が食い込んで
血が滲み出て垂れている。
あなた“姉ちゃん”だァ…?
そんな呼び方する奴…俺の記憶ん中には1人しか
心当たりがねぇ。
深く被ったフードん中から水が溢れる。
…泣いてんのか、此奴。
思っていたよりも、ちっせぇ身体。
そんなチビの背中であなたを守ろうとしてたんか。
俺はお前に負けた。
お前の《偽善者ってヤツを潰す》って信念と
お前の《あなたを守る》って気持ちににゃ、
俺なんかじゃ勝てなかった。
俺が勝てる筈が無かった。
どれ程、目の前の此奴とあなたの家族が大切に
あなたを扱って居たのかよく分かる。
他人の俺でも分かる。
彼奴は大切にされてる。
どんな我儘も大抵は許される。
その理由が、あなたは何でもやり遂げるからだ。
そんな彼奴に嫉妬した。尊敬した。
兎に角、あなたの欠けた部分を見つけるために
俺は必死に食らいついた。
見つかる度に見下した。嘲笑った。
せめて、何かあなたに勝てたならと欠けた部分を
指摘して優越感に浸ってた。
俺の胸元を掴んで、そう叫ぶあなたの親戚。
普段の顔とは違う泣きっ面には俺も察した。
目から鱗。また胸が苦しい。口の中が苦い。
あなたの声と、あなたの顔と、あなたとの思い出が
俺の中を渦を巻く。
膝から崩れ落ちるガキ。
その言葉に、俺は何も言えなくなった。
もうそれ以上は…喋れなくなった。
ただただ目の前で泣くガキを相手にして俺は
精神領域内で突っ立っているだけだった。
「もうスッキリしたから何したか覚えてないわ。」
…なんて言う茨さんは珈琲を飲む。
茨さんは九州まで訪問して来たプロヒーローの
イレイザーヘッドさん達を無理やり返した。
本州に返された2人は、
と、だけ残して彼等は戻された。
茨さんは恐ろしい。
俺もあの2人の立場だったら俺も何も言えない。
茨さんは珈琲を飲む手を止めて言う。
あなたちゃんの事は、ヒーローにもヴィランにも
隠蔽すべき人材なのだ。
大切だからこそ、何も理解出来ない人達との
関わりを持つのは許可できない。
それは俺も茨さんも同じ考えなのだろう。












編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。