第96話

🌑
604
2025/11/18 12:01 更新







  迫り来る6の手から逃げるべく、俺は近くの
  物陰に隠れる。
  手は見失えば、俺の所に迫る事はねェ。


  👁️( ぎょろッ 




爆豪
 はッ…!? 
  途端、目の前に巨大な目が現れて俺を捉える。
  そして、それに反応するかのように6の手が
  俺の所に迫ってくる。
  この目ッ…手とリンクしてんのかよ!!



 あーあー…みっともねぇな… 
 何が探すだ、何が見つけるだ 
 逃げてるばっかりの奴があの人を 
見つけるとか無理だろ
爆豪
 チッ…うっせぇなッッ…!!


  個性も使えねぇから、体術とかで何とかする
  しか術がねぇんだよッ!!
  それに、手は捕まったら逃げるのは不可能だ。
  あの手の大きさは、俺は手足を拘束されちまう。


  なんとか逃げ続けると、手の動きが遅くなった。
爆豪
( 何で急に…っ )
  と、油断した瞬間だった。
  正面からとんでもないスピードで迫ってくる手に
  反応しきれずに手にぶつかる。
  そのまま精神領域の壁まで飛ばされて身体を
  壁に打ち付けられた。


爆豪
 がッッ…!? 
  いってぇ…!!?
  壁がくそ硬い!!なんッだこれ!!?



 手眼《張》ハンドガン はツ 
  手の平で押し潰すように両サイドから手が迫る。
  何とか逃げるも、今度は両手で押し出すように
  手が動き出す。自我でもあんのかボケ!?


  自力で動き回ったり、その辺の壁や段差などを
  駆使して逃げ続けるも人間にゃ限界がある。
  ちくしょう、チクショウ!畜生ッ!!










  何で個性が使えねェんだッ…








  何で誰も救えねェんだ…!!







  何で誰も助けれねェんだ!!











  何であの時、俺は瑠衣アイツを怪我させたんだッ!!













  何であの時、直ぐにあなたがヴィランじゃねぇ
  事を否定を…俺は出来なかったんだよッッ!!



爆豪
 ッがは!! 


  動け、俺の身体動けよ!!
  こんな所で死ぬくらいなら俺はあなたにッ…!



  全身打撲した様に痛みが走る。苦かった筈の
  口の中は鉄の味がする。
  嫌な汗が流れて地面に垂れる。
  俺は今、焦ってる。悔やんでる。後悔してる。





  気付けなくてごめん。





  怪我させてごめん。





  悪口言ってごめん。





  突っかかってごめん。





  情けなくてごめん。


  こんな俺はきっと…瑠衣おまえに嫉妬してた。



  何でも出来る文武両道の彼奴。

  努力しなくても何でも感覚で出来るアイツと、
  努力と才能でなんとか補ってきた俺。





爆豪
 くそッ…クソ、くそッッ!! 



  出ろよ俺の個性。
  手の平から、足裏から、何処でも良い。
  俺の個性爆破
  出ろ、出ろ出ろ出ろ出ろ出ろ出ろ出ろッ!!!



爆豪
 俺は行かなきゃいけねぇ… 
爆豪
 いかねぇとッ…!! 



爆豪
 ッあなたの所に!! 



  立ち上がる俺を見て、餓鬼は俯く。
 …本当にお前は馬鹿みてぇだな… 
  餓鬼の握る拳は力んで震え、爪が食い込んで
  血が滲み出て垂れている。
 何処に行くってんだよ… 






 行ってどうすんだよッ… 






 “あなた姉ちゃん”に何すんだよッッ!!!
爆豪
 …は? 
  あなた“姉ちゃん”だァ…?
  そんな呼び方する奴…俺の記憶ん中には1人しか
  心当たりがねぇ。
爆豪
 テメェ…あなたの親戚の餓鬼か 
 ッ…違う!俺はそんな奴じゃねぇ!! 







  深く被ったフードん中から水が溢れる。




  …泣いてんのか、此奴。





 俺はただのッ…ただの一般人で…! 
 そんな親戚とかじゃねぇッ… 
俺はお前みたいな偽善者を壊す為にっ…
 俺は、俺はっ…ッ… 


  思っていたよりも、ちっせぇ身体。
  そんなチビの背中であなたを守ろうとしてたんか。














爆豪
 __…松門圭一 
松門圭一
 ッだから違ぇって…!! 
松門圭一
 それは俺じゃねぇ…それは俺の名前じゃッ 



爆豪
 …ごめん 
松門圭一
 ……はッ、?
  俺はお前に負けた。



  お前の《偽善者ってヤツを潰す》って信念と
  お前の《あなたを守る》って気持ちににゃ、
  俺なんかじゃ勝てなかった。



  俺が勝てる筈が無かった。
  どれ程、目の前の此奴とあなたの家族が大切に
  あなたを扱って居たのかよく分かる。
  他人の俺でも分かる。




  彼奴は大切にされてる。


  どんな我儘も大抵は許される。

  その理由が、あなたは何でもやり遂げるからだ。
  そんな彼奴に嫉妬した。尊敬した。




  兎に角、あなたの欠けた部分を見つけるために
  俺は必死に食らいついた。
  見つかる度に見下した。嘲笑った。


  せめて、何かあなたに勝てたならと欠けた部分を
  指摘して優越感に浸ってた。




爆豪
 俺如きにゃお前には敵わねぇ 
爆豪
 俺はあなたを探すって決めたが資格がねぇ 
爆豪
 だから、合わす顔もねぇ 
松門圭一
 ッ嗚呼そうだ、当たり前だろ…!! 




松門圭一
 お前のせいで、どれだけあなた姉ちゃんが 
傷付いてたと思うんだよッ
 
松門圭一
 お前みてーな偽善者のせいで 
松門圭一
 あなた姉ちゃんは笑わなくなったんだよッッ 
 
松門圭一
 人の心が疑心と失望に埋もれて消えた 
あなた姉ちゃんの気持ちを考えろよッ…!
 




 
松門圭一
 __っ返せよッッ!! 
松門圭一
 あなた姉ちゃんの“笑った顔”をッッ!!! 
松門圭一
 俺達に返せよッッッ!!!!! 
  俺の胸元を掴んで、そう叫ぶあなたの親戚。



  普段の顔とは違う泣きっ面には俺も察した。
  目から鱗。また胸が苦しい。口の中が苦い。
  あなたの声と、あなたの顔と、あなたとの思い出が
  俺の中を渦を巻く。



松門圭一
 ッ責任くらい、取れよ… 
  膝から崩れ落ちるガキ。
松門圭一
 あなた姉ちゃんの昔みたいな笑顔を 
俺に返せよ…母ちゃんに返せよッ…
松門圭一
 また昔みたいに笑い合いたいのに、
松門圭一
 あなた姉ちゃんはもう俺には笑ってくれねぇ 


松門圭一
 笑っても、下手な笑顔をしてんだよッ 
松門圭一
 そんなあなた姉ちゃん顔なんてッ… 
大切な奴の顔なんてッ!!
松門圭一
 テメェも見たくねぇだろーがッッ!!! 


  その言葉に、俺は何も言えなくなった。
  もうそれ以上は…喋れなくなった。
  ただただ目の前で泣くガキを相手にして俺は
  精神領域内で突っ立っているだけだった。










ホークス
 ひぇ…怖いですねぇ… 
松門茨
 あら?何の事かしら? 
 「もうスッキリしたから何したか覚えてないわ。」
  …なんて言う茨さんは珈琲を飲む。


  茨さんは九州まで訪問して来たプロヒーローの
  イレイザーヘッドさん達を無理やり返した。
  本州に返された2人は、
相澤消太イレイザーヘッド
『 …情報提供を感謝します 』
八木俊典オールマイト
『 わざわざ時間を割いてくれて有難う 』
  と、だけ残して彼等は戻された。



  茨さんは恐ろしい。
  俺もあの2人の立場だったら俺も何も言えない。
ホークス
 …良いんですか? 
松門茨
 何が? 
ホークス
 あなたちゃんの居場所… 
“嘘の情報”なんて教えちゃって
松門茨
 …あら?それの何が駄目なの? 
  茨さんは珈琲を飲む手を止めて言う。
松門茨
 あの子あなたちゃんの気持ちを理解できない奴になんて 
居場所どころか知る権利すら無いのよ
松門茨
 担任のくせに何も理解しちゃいない 
松門茨
 そんな奴等に、大切な家族あなたちゃんの情報を渡す 
なんて貴方には出来るの?


ホークス
 ……出来ないっすねぇ、笑
ホークス
 俺も、俺の大切な人の何かを売るなんて 
絶対に出来ないですよ
  
  あなたちゃんの事は、ヒーローにもヴィランにも 
  隠蔽すべき人材なのだ。
  大切だからこそ、何も理解出来ない人達との
  関わりを持つのは許可できない。
  それは俺も茨さんも同じ考えなのだろう。


松門茨
 あなたちゃんの事はくれぐれもこの場 
以外で口外しないようにね
ホークス
 任せて下さいよ~ 

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