劇的な出来事が起きて早数週間。
我々はついに地上とのコンタクトに成功した。
そしてそれは、長い引きこもりの終了でもある。このインドア派なわたしですら、外泊が増えた。
今日もホテルの一室を借りてのお仕事だ。
午後の仕事前に、ホテルの部屋をチェック。
みぎよーし、ひだりよーし。
やべえヤツなーし?
・・・いや、なんか居るわ・・・。
え?大したことはないよ。
時々変なイヌとか、怪生物が部屋にあがりこんでるんだよ。
それを無言で抱っこで抱えてドアを開けてそっと外へ出す。
他の宿泊客も「あるある、変わった時報よね」とか慣れたようにいうんだよ。どういうこと?
ケトルでお湯を沸かし、アメニティのインスタントコーヒーをマグに入れて混ぜ、ミントチョコレートを齧りながら、今日の夕刊を開く。
記者の論調は、やや厳しめの意見だ。
地上との交渉状況についての現況をまとめた図と問題点、今後の国の方針についてこうすべき論で語られる社説が結構なスペースで掲載されていた。しかも、関係者以外に出していないはずの情報すらも含まれれていた。
これは問題かもしれんと、カメラで記事の一部を撮影して、それをトリエルに送る。
トリエルからは「ハロー。早速ありがとう、対処するわ」という返答をもらう。
どこから漏れてるのか分からないけど、どうにか見つけるんだろう、彼女なら。
───よし。
大量のメールチェックが終わったら、即座にデスクに向かう。
今から、雑誌取材のリモート会議だ。
いい面もあるけど、よくない面もある。
例えばつい詰め過ぎて仕事時間が増えちゃうとか。あとは仕事のことを考える時間が日常にまで侵食して気が休まる時間がグッと減ったりとかね。でも、もしこれが来訪必須だったら、移動時間を計算したり他の予定を後ろ倒しにする必要が出てくる。オンラインで即物事を進められるならその方がいい。
・・・・・・新聞の先の人みたいに、待ってる人もいるんだから。
わたしはちょうどよくいた「ひと」だから、求められる役割があった。
今の雑誌インタビューみたいに地下モンスターへの教育・広報担当。新聞チェックもその一環だ。
それぞれはもちろん引き受けないことも選べたけど、代わりにやる人に対して、わたし自身が負い目を感じてしまうことは性格上予想はついていた。それを見て気負いするくらいなら、自分が引き受けてしまう方を選ぶ。
笑顔で頭を下げて、退出ボタンをクリックしてウィンドウを閉じる。
んなあああ!!!アタマ疲れたッッ!!!
でも、まだ終わりではない。先ほど話した内容で気になった議題について別途報告資料化して、王さまへ頼み事を相談する場を設けて説明する仕事が残っている。
あぁ、途方もない。
いつおわる?
・・・・・・急に気が遠のく気がした。
・・・───やめろ、わたし。
時間経ったらさっきの内容忘れる。
ああ・・・でも、
会議ログ、残ってるから・・・あとでも、いいかな・・・。
そういえば、・・・わたしさいご、
いつ休みとったっけ・・・。
ぴた、と手に何か触れるものがあって目が覚める。
端末にアルフィーからの通知がどっさり入ってる。
電話も掛けてくれていて、それで何もわたしからのリアクションが無いから、わざわざ来てくれたということか。
申し訳なさマックスだ。
一応手を見たが、よくわからなかった。
ただアルフィーが嘘をつくわけないし、過労している自覚はあるのでバフとベッドに寝直した。
アルフィーは、何かが入ったコップを指差した。
なんだこれ・・・?
一度検品のため持ち上げて観察する。
中身は薄く黄味がかっており、粘性、ややコロイド状。
不気味な液体だ。
一度コップをおく。
きょうの・・・アルフィー、ちょっと圧がある。
ピリリと我々の間に緊張感が走る。
根負けして、スマホをアルフィーに渡すと、電源を切って机の方へ戻した。
ギュウ、とアルフィーに抱きしめられて言葉が詰まる。
・・・あたたかい。
安心する匂い。
・・・・・・わたしは、アルフィーの家にまだ部屋を残している。
今後地上に移り住むことになったとしても、それを無くしたいとは多分思う事はないのだろう、と思った。




















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編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。