⚠あてんしょん
・付き合ってません
・類寧々要素あります
・指定ほどでは無いですが微えろ表現ありです
ライブハウスの帰り。
ライブを見て熱くなっては歌いたいなとなり
あなたの下の名前と共に流れでカラオケへ。
……というのはまあ、建前である。
ライブを見に行って歌いたくならないわけが無い。
それを図ってあなたの下の名前を誘っていた。
事の始まりは1週間前。
媚薬なんて大声で言うもんだから
人差し指を口の前で立て、「小声で話してください」
と告げる。
驚いたのかと思えばふふ、と笑っている。
相変わらずこの人は何を考えているのか分からない。
そんな物にしか頼れない己の不甲斐なさ。
自分でも痛感するくらいに最低だと思う。
あなたの下の名前とは小学生からの付き合いで、
ずっと片想いをしていた。
でもやっぱ俺は不器用だったらしく、
どうすれば気を引けるのか、意識してもらえるのか
全く分からなくて。
結局頼ろうと決めたのは媚薬。
最低だと分かっている。
だけど、あなたの下の名前への気持ちが抑えられなくて。
自分のものにしてしまいたいという欲望が渦まく。
呆れるを通り越してもはや尊敬である。
何というものを持ち歩いてるんだよこの人は。
いやまああの先輩だし持ってるかと思い
望みを抱き声をかけたのだがやはり持っていた。
しかも今持っているというのだから恐ろしい。
神代先輩はカバンからピンク色の小瓶を取り出す。
その中には、液が半分程入っていた。
いやてか三、四滴で十分なんて
なんて恐ろしいものをこの人は作っているんだ。
こんな先輩の相手をさせられる草薙に向け
心の中で手を合わせる。
先輩から瓶を受け取り、誰かに見られる前に
自分のカバンの中へ。
受け取った後にとんでもなく恥ずかしいことを
しているのではと思ったが恥れば負け。
何も気付かないフリをして、神代先輩と別れた。
そして今に至る。
あなたの下の名前は個室から出ていく。
足音がしなくなったのを確認して、
素早くバッグからあの小瓶を取り出した。
やばいのはあなたの下の名前も同じだが。
男と二人きりで個室なんて、警戒心の欠けらも無い。
無さすぎる。
いつかぱったり居なくなってしまうのではないか、
そう不安で仕方がない。
静かに小瓶の蓋を開け、好奇心で匂いを嗅いでみた。
ふわっと、甘い香りが広がる。
だけどそれは一瞬、次に刺激的な甘さが襲ってきた。
匂いだけでこれって、まじかよ……
こんなのたった数滴だけでも、やべぇんじゃ……?
迷っている時間は無い。
烏龍茶の入ったあなたの下の名前のコップに、
液体を三滴垂らした。
コップを持ち上げ混ぜるように軽く揺らす。
一定のラインを、超える気は無い。
あなたの下の名前をただ傷つけたくなくて
少し雰囲気が出るんじゃないかって思って。
あなたの下の名前はソファに腰かけ烏龍茶のコップを手に持ち
それを口元へ持っていき、飲む。
烏龍茶と共に媚薬が流れて行っている。
そう思うだけで、僅かに動くあなたの下の名前の白い喉に
釘付けになった。
飲んだ。確かに飲んだ。
匂いが強烈だからバレるんじゃないかと思ったが
幸いあなたの下の名前が気づいている様子はなかった。
コップを置いてはタブレット端末を手に取り
操作し出す。
さぁ、いつ効き出すのか、
じっとあなたの下の名前の顔を眺める。
俺の視線に気づいたあなたの下の名前は不思議そうに首を傾げた。
俺はこの動作が本当に好きだった。
きょとんとしては少し上目遣いで俺を見てくる。
可愛いなんて言葉で表せるもんじゃない。
一瞬、ほんの一瞬だったが僅かにあなたの下の名前が
言葉に詰まったような気がした。
効いた。効いてる。
俺は心の中でガッツポーズをした。
だけどあなたの下の名前の前では平静を必死で装う。
あぁ、格好わりぃな俺。
少し息が上がっているようだった。
顔もほんのり赤らんで汗も僅かにかいているようで。
愛おしい。可愛い。触れたい。
だめだ、目に毒すぎる。こんなの理性が
吹き飛んじまう。
何とか生きている理性で己の本能を抑え込む。
それと同時にあなたの下の名前に最低なことをしてしまった
という罪悪感が俺に押し寄せた。
呼びかけに応じず、背を向けたままのあなたの下の名前に
「大丈夫か」って声をかける。
元はと言えば俺のせいではあるが。
それでも反応しないあなたの下の名前の肩をトンと叩いた。
あなたの下の名前は悲鳴に近い声を上げ、
肩をビクンと跳ねさせた。
まさか、ここまで効果があるものだったなんて。
「これは、ちがくて」とふるふると首を振っては
涙目で俺に訴えてくる。
だめだ、こんなの、本当に────
耳元であなたの下の名前とを呼べば、
またピクっとなって涙を溜める。
それに上げた声は熱を含んで色っぽくて
熱と涙と声、それが俺を刺激してくる。
こんな状態じゃつき飛ばせるはずもない。
そんなこと分かっていたけど、
嫌われたくないための理由を作るためか、
そう口に出していた。
そしてそのままあなたの下の名前をソファに押し倒した。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!