第13話

きっとこれは良くないキス
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2023/04/16 16:12 更新
ソンハンビン
あなたこそ、仕事遅かったんだね。
こんな時間までいるなんて、珍しい。
ハンビンが言うと、あなたは「あぁ、うん。」と
ちょっと言葉に詰まった。
あなた
実はハンビンに言いそびれてたんだけど。
ソンハンビン
うん。
少し気まずそうなあなたの顔を、ハンビンは怪訝そうに見る。
あなた
今日でこの仕事、最後なんだ。
ソンハンビン
え?
思いもよらないあなたの言葉に、ハンビンの
思考が止まる。
あなた
だから、引継ぎとか色々でこんな時間になって
しまいました。
ソンハンビン
え、聞いてないよ。
ハンビンがおいてけぼりをくったように言うので、
あなたは慌てて弁解した。
あなた
聞いてないのはハンビンだけじゃなくて、
関係者の人以外はほとんど知らないと思う。
ただ通訳が変わるだけだから。
私、臨時だったし。
ソンハンビン
そう・・・なんだ。
自分が関係者の中に入っていないことに悲しくなる。
ソンハンビン
(え?待てよ。ということはあなた、
 フランスに帰っちゃうの?)
急な展開すぎて、頭がうまく働かない。
あなた
だから、最後の挨拶をしようと思って。
ソンハンビン
・・・最後の挨拶って・・・
(もう2度と会えないような言い方。)
そんな言葉を軽く言うあなたにハンビンはショックを受ける。

そんな彼の気持ちも知らずに、あなたは言葉を続ける。
あなた
ハンビン、あんまり話せなかったけど
会えて嬉しかった、ありがとう。
ペコリとお辞儀をするあなた。

(え?これで終わり?)
あまりの事に、あぜんとするハンビン。
あなた
ごめんね、練習の邪魔して。行くね、私。
そうして練習室のドアを開けようとする。
ソンハンビン
待って。
そのドアを反射的にハンビンが押さえていた。

突然、目の前に来た幼なじみに驚いた様子で
見上げてくるあなた。

自分の影に隠れた、小柄な彼女を見つめるハンビン。
ソンハンビン
なんでそんなにあっさりしてるの?
あなたは俺と会えなくなるの、寂しくないの?
何怒ってるんだ、俺。

止めなきゃと思うのに、彼女を見ていると
想いが溢れ出てきてしまう。


あなた
え・・・だって。
ハンビンの勢いに押されていたあなたが言い返そうとする。
ソンハンビン
行かないでよ。
あなたに反論の余地をあたえず、ハンビンが言う。

目の前にいる、あなたを見つめていると自然に
手が彼女の頭に伸びる。
そのままゆっくり、彼女の髪をやさしく撫でた。

ハンビンの幼なじみらしからぬ行動に、あなたの目が
驚きに満ちる。


ソンハンビン
行かないで。
駄々をこねるようにもう1度言う。
そしてあなたの頬に手を当て、彼女の顎を持ち上げる。

彼女の少し怯えたような目から、目をそらして
キスをした。





ソンハンビン
あなた、好きなんだ。
唇を離すと、びっくりして少し肩をすくめている
彼女に言った。
ソンハンビン
いなくならないでほしい。
彼女が逃げるのが怖くて、肩をつかんでしまう。
ソンハンビン
お願い、行かないで。
自分の声が震えた。
すがるように彼女を抱きしめる。

(なんてかっこ悪くて自分勝手なんだ、俺。
こんな事言ったって困らせるだけなのに。)

最低なことをしていると分かっているのに、
彼女を抱きしめる腕を解くことができなかった。


(俺、お縄になるかも・・・)

どこか冷静な頭でそう思うハンビンであった。

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