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第9話

新たな犠牲者
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2024/09/29 11:24 更新
皆が寝静まった其の翌日、
また犠牲者が出てきた。
犠牲となったのは、
北原一門の北原白秋、
室生犀星、萩原朔太郎の
三名だった。三人は、
夜には月がよく見えるであろう
丘の上で、川の字のように、
師である白秋を二人が挟むかの
ように倒れ込んでいた。
北原は首を刃物のような物で
切り裂かれていた。手に固く
刃物を握りしめていたから、
恐らく自分で切ったのだろう。
萩原は、特に外傷は
見当たらなかったが、
口から微かにアーモンドの様な
臭いがしたので、青酸系の
毒物を飲んだ……いや、
飲まされたという表現でもいい。
何せ、同じ死因であろう室生の
手には、青酸カリの入った瓶が
握ってあって、彼等二人の唇は
何方も毒の匂いがしていたから。
島崎藤村
島崎藤村
……やっぱり居たね。
芥川龍之介
芥川龍之介
……うん、新しい遺体。
谷崎潤一郎
谷崎潤一郎
……
最早、皆はもう、
人の遺体を見ても驚かなく
なってしまったようで、
最初はあんなにも叫んで
いたと云うのに、今は
「嗚呼、そこにあったのか。」
とでも言いそうな状態なのである。
芥川龍之介
芥川龍之介
……そう云えば…藤村君。
島崎藤村
島崎藤村
…?何かな。
芥川龍之介
芥川龍之介
皆が寝ている頃、
僕の寝室の窓の外に…
透谷君が居たんだ。
島崎藤村
島崎藤村
……は…?
芥川龍之介
芥川龍之介
いいや、窓の外…と云うか…
庭園に、透谷君の姿が……
島崎藤村
島崎藤村
……どういう事…?
だって、透谷は……
芥川龍之介
芥川龍之介
……何故かは判らないけど…
透谷君は確かに居たんだよ。
影もあったし、頬は紅くて、
目の光も、生気もあった。
島崎藤村
島崎藤村
……本当に…?
芥川龍之介
芥川龍之介
嗚呼。あれは絶対に
透谷君だと、僕は
思っているよ。
谷崎潤一郎
谷崎潤一郎
……では、もしかしたら…
荷風先生や春夫先生も…
芥川龍之介
芥川龍之介
うん、もしかしたら…
実は生きていて、
未だ何処かに隠れている
だけかもしれないね…
谷崎潤一郎
谷崎潤一郎
それなら、まだ安心です…
島崎藤村
島崎藤村
……(透谷が生きてる…
もしかしたら違うかも
しれない…でも、あの時、
食べられたのが本物の
透谷じゃなかったとしたら…
少しだけなら信じても
いいかもしれない筈…)
芥川龍之介
芥川龍之介
?藤村君?何かあったのかい?
島崎藤村
島崎藤村
否……何でもない。
谷崎潤一郎
谷崎潤一郎
……(藤村を見つめる)

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