僕は、透谷を二度も
死なせてしまった。
彼の冷えた身体にも
触れる事が出来なかった。
けれど、皆が持ち帰った
遺品の持ち主は、想像より
多くの文豪達だったような
気がしてしまう。と、僕は
天井から藤の花が垂れ、
部屋の中には何匹かの
モルフォ蝶が常に
飛び回るこの部屋で、それを
ずっと思い出していた、が。
どうしても寝られなかった
僕は、こっそり起きて皆の
部屋を確認した。まず、
太宰君の部屋は水の中のような
様相になっていて、芥川君の
部屋は煙草の匂いが充満していた。
中也君の部屋は、まるでサーカス
の小屋のように鮮やかで、谷崎君の
部屋は、何と言おうか…女の足の
彫刻が無数に置いてあり、常に
ピンク色の照明で照らされていた。
そして最後に透谷の部屋を見てみると、
その中は、まるで鳥籠の中のように
なっていて、その鳥籠の中には
蝶がぎっしりと詰まっていた。
そして、その蝶の群れの中から、
何かが腐るような匂いがしていた。
先程の透谷を思い出し、
例え、怖気付いていても、
気になった僕は、
窓を開けてその中を
確認してみた。
すると、そこに
あったのは……
あんなにも小さく、
可愛らしい姿をしていたが
今は身体のほとんどが
腐っていた新美南吉と、
彼を守るように丸くなり、
首の後ろから腰までは
蝶に卵を産み付けられたのか
所謂、集合体恐怖症の人であれば
絶対に耐えられそうもない
ような姿になった、江戸川乱歩の
凄惨な遺体がそこにはあった。
乱歩のすぐ近くには、南吉が
よく抱っこしていたごんも
落ちていたから、恐らく、
僕達が来る前に犠牲になって
いたのだろう。状態から察するに、
ここで化け物に襲われた南吉を
乱歩が庇ったが腕の隙間から
虫が入り込んで……という感じだろう。
嫌な予感がした僕は、すぐ
皆の部屋に戻った。そして、
寝具の下や、棚の中等を
徹底的に探し回った。
すると、その中からまた、
沢山の人だった物が出てきた。
まず太宰君の部屋。
ここでは、ベッドの下から
織田君の頭部、そして
坂口君の両腕の無い遺体を
見つけた。太宰君がベッドの下を
見ず、そのままぐっすり寝ていたのは
ある意味幸運だったのかもしれない。
次に中原君の部屋。此処では床下に
賢治君の両足の無い遺体が見つかった。
見つけた時、偶然、中原君が
運悪く起きてしまって、
二人で遺体を見てしまったけれど、
意外と彼は、僕に何があったのかは
察していたと思われるから、必要以上に
責めては来なかった。そして、芥川君の
部屋からは…何も見つからなかった。
仲間の遺体が何も見つからないのだ。
もしかしたら、彼は透谷が亡くなる
夕食前に遺体を片付けていたのかも
しれない。と、僕は考えている。
谷崎君の部屋も同様だった。が、
彼が遺品を見て泣き叫んでいたのは
恐らく遺体がもう、アグニさんに
よって処分されたからだろう。
僕も、かもしれないが……
皆はもう精神的に不安定になっていた。














編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!