第5話

いかないで
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2025/10/12 00:02 更新
お祭りの夜の賑やかさが、まだ耳の奥に残ってる。


でも今日は、太鼓の音も、屋台の匂いも、もうない。


昨日までそこにいた君も、いないーーー。

人がたくさんいるのに静かだった。


線香の煙がゆらゆらと揺れて、

提灯みたいなあたたかい光が部屋を照らしていた。


君は眠っていた。


棺の中で、何も知らないみたいな顔で。


「祭りも終われば、いつもと同じ夜が来る」

っていつか誰かが言っていた。


ーーー本当にそうだった。


君がいなくなっても、日が沈んで、いつも通りの夜が来る。


空は今日も暗くなって、風も吹く。



でも、君がいないだけでこんなに世界は変わる。




最後に見た君の顔は、どこか大人っぽかった。

綺麗に化粧されてて、肌も白くて、


普段の君よりも、少しだけ色っぽく見えた。

今にも目を開けそうで、声をかけたら返事が返ってきそうで、


僕はそれをただ見つめることしかできなかった。


「泣いちゃだめ」と自分に言い聞かせる。

君の前ではちゃんとしたいと思っていたから。


でも本当は、


「いかないで」


そう叫びたかった。



みんなが帰って、部屋が静かになって、気がつけば夜だった。


いつもと同じ夜。

でも、どこかが違ったーーー。





帰り道、街灯がぼんやり光ってた。

その下を歩く僕の影が、ずっと伸びて、揺れていた。

いつもの道なのに、今日はすごく長く感じた。


誰かと話したかったけど、誰とも話したくなかった。


ずっと時間だけが過ぎていって、君はいないまま、日常は戻ってくる。

でも、心の中ではずっとあの日の君の姿が消えてくれない。


「泣いちゃだめ」


そう思ってても、心のどこかでまだ言いたいんだ、


「いかないで」

って。

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