お祭りの夜の賑やかさが、まだ耳の奥に残ってる。
でも今日は、太鼓の音も、屋台の匂いも、もうない。
昨日までそこにいた君も、いないーーー。
人がたくさんいるのに静かだった。
線香の煙がゆらゆらと揺れて、
提灯みたいなあたたかい光が部屋を照らしていた。
君は眠っていた。
棺の中で、何も知らないみたいな顔で。
「祭りも終われば、いつもと同じ夜が来る」
っていつか誰かが言っていた。
ーーー本当にそうだった。
君がいなくなっても、日が沈んで、いつも通りの夜が来る。
空は今日も暗くなって、風も吹く。
でも、君がいないだけでこんなに世界は変わる。
最後に見た君の顔は、どこか大人っぽかった。
綺麗に化粧されてて、肌も白くて、
普段の君よりも、少しだけ色っぽく見えた。
今にも目を開けそうで、声をかけたら返事が返ってきそうで、
僕はそれをただ見つめることしかできなかった。
「泣いちゃだめ」と自分に言い聞かせる。
君の前ではちゃんとしたいと思っていたから。
でも本当は、
「いかないで」
そう叫びたかった。
みんなが帰って、部屋が静かになって、気がつけば夜だった。
いつもと同じ夜。
でも、どこかが違ったーーー。
帰り道、街灯がぼんやり光ってた。
その下を歩く僕の影が、ずっと伸びて、揺れていた。
いつもの道なのに、今日はすごく長く感じた。
誰かと話したかったけど、誰とも話したくなかった。
ずっと時間だけが過ぎていって、君はいないまま、日常は戻ってくる。
でも、心の中ではずっとあの日の君の姿が消えてくれない。
「泣いちゃだめ」
そう思ってても、心のどこかでまだ言いたいんだ、
「いかないで」
って。












編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!