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〈朝日奈永遠〉、改め〈花火〉の三回目のゲームであった。
彼は元来デスゲーマーではない。そもそも性格的に向いていない。
しかし身体的にはどうなのかと問われれば話は別になる。
一回目、二回目共に友人に半強制で参加するような形であったが、彼は卒なくこなしている。人を殺す機会がなかったというのも功を奏したか。
何はともあれ、花火は二回、デスゲームをクリアしており、これが三回目だと言う事実は揺るがない。
そしてこれは、彼が初めて自ら参加を希望したデスゲームでもあった。
◇
「デスゲームに参加したい?」
数日前のこと。その女性は、美しく澄み渡った湖のような髪を揺らし、手を頰に当て、いかにもお嬢様が驚いたときの反応をした。
彼女は管理人──所謂デスゲーム運営、ゲームマスターであった。
「まあ……はい。次に開催する予定のゲームに参加できないですか?」
ゲームに参加表明をするなんて慣れないことをしているからか。相手を伺う控えめな表情で永遠は問うた。
「もちろん可能ですわ。しかし……どういった風の吹き回しですの? まさか永遠様がゲームに参加したいなんて仰るなんて。明日は槍でも降ってしまうのかしら。ああでもデスゲームを日常とする者たちからすればそれはただの日常、非日常でもなんでもないですわね。最も、私や永遠様はデスゲームプレイヤーではありませんが。しかし槍なんてものが振るより非日常じみた存在が身近にいますものね」
槍では少々インパクトが足りませんわね。管理人はそうゆっくりと言っているはずなのに、どこか早口のマシンガントークを彷彿とさせるような口調で言葉を並べ立てた。発言の九割は無駄なものに思える。
「兎にも角にも、永遠様は何を理由として遊戯に参加しようと思われたのでしょうか?」
にこり、と微笑みを称え、手を顔の横で一つに合わせて管理人はそう言葉を投げかけた。〈面白そう〉と考えていることがその態度からひしひしと伝わってくる。まるで新たな玩具を見つけた子供のように。
「あー……まあ。お金ってとこでしょうか。周りが裕福なせいとかあって今月結構厳しくて」
事実だった。嘘は吐いていない。ある程度相手の嘘を看破できる管理人の目からしてもそれは明白だった。しかし、それと同時に。本当の目的はそれじゃないですわね。そこまで管理人は見抜いていた。
「大方……デスゲームを自殺道具にでもしようというところかしら」
永遠は目を見開いた。あー、やら、うー、やら言って、そして。
「……バレちゃいますか。まあ、そうなるかもとは予想してましたが……」
永遠は気まずそうに目を逸らす。彼はデスゲーマーじゃない。デスゲーマーじゃないからこそ、そうやってデスゲーム本来の用途以外に都合よく使おうとする行為に申し訳なさを抱いていた。
しかし、管理人の返答は彼にとって意外なものだった。
「あら、そう申し訳なさそうされないでくださいまし。私は別に構いませんわよ? そもそも、自殺目的のプレイヤーだっていますもの。恐らく誰も気にしませんわ」
にこりと笑った笑みを一切崩すことなく管理人はそう言って。
「私はどんな死に方でも、生き様でも、どんなゲームも見るのが大好きですもの。それは例外なく永遠様にも通じますわ」
そして。
「永遠様が自ずからゲームにご参加されること、心より歓迎いたしますわ」
それは彼女には珍しい、弾けた笑みだった。
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〈続きは明日!〉













編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!