その日、僕[あなたの名字 あなたの下の名前]はほんの少し急いでいた
長期休み前最後の大学の講義が予想より長引いて
終わる頃には辺りは日が傾き始め、暗くなりかけていた
スマホを片手に電車の時刻表を確認しながら、
赤信号の横断歩道の前で立ち止まる
ちょうど青になった信号の前でそう思った、
その瞬間だった
僕の視界の端で、ふっ と影が動いた
____あ、
考えるより先に、体が動いた
横断歩道を歩き始めた男性
こちらに向かってくる車
ブレーキ音は やけに遅れて聞こえた
声にはなりきらなかった
思いきり手を伸ばした
衝撃は一瞬
押した感触、軽く身体が浮く感覚、そして地面を転がる断片的な映像が、ばらばらに頭に流れ込む
次に聞こえたのは、誰かの叫び声
誰かが、必死に呼んでいる、?
どうやら名前みたいだが、僕のではないっぽい
多分僕が思い切り突き飛ばした人のものだろう
……あ、怪我なかったかな、謝りたい
その名前に ものすごく物申したい気持ちになったが
そんなことはできる訳もなく
遠くで、いくつも声がする。
頭の上では誰かが動き回っている気配
僕は仰向けに倒れていて、空がやけに広かった
不思議と、焦りはなかった
耳からの情報はほとんど聞こえない
頭も もう動かない
意識は最後に、すとん と落ちた
身体が 動かない
節々が痛いものの無事
なんとか、目線だけでウォルピスに伝える
ウォルピスがニャンヤオの代わりに、
電話を耳に押し当てこの状況を伝えている
りするは焦ってはいるみたいだが、
なんとか冷静に周囲を確認しながら指示を出している
ニャンヤオはこの近くにいない
視界を動かすと 俺の近くには一つの人だかり
聞き慣れた声はあっちから聞こえてくる
多分、その中心は 倒れているであろうさっきの青年
さっきまで、ただの通行人だったはずの人
俺を、庇ったんだ












編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!