【Felix side】
僕は自分でも驚いていた。
新しい恋人――ジェイと過ごす時間は確かに心が安らぐ。
落ち着いた声、穏やかな手。
「君はそのままでいい」と繰り返すジェイの優しさは、かつて欲しかった形の愛に近かった。
けれど。
夜、ふとした瞬間に思い出してしまうのは、ヒョンジナの顔だった。
強引で、不器用で、でもどうしようもなく心を揺さぶる存在。
ジェイといると「安らぎ」なのに、ヒョンジナを思い出すと「痛みと熱」が蘇る。
ある夜。
ジェイの腕の中で眠りにつく直前、僕は心の奥で呟いた。
――僕は、どちらを選べばいいんだろう。
⸻
【Hyunjin side】
その頃、ヒョンジンもまた葛藤していた。
ヨンボガが新しい誰かと笑っている姿を思い出すたび、喉の奥が焼けるように苦しい。
でも同時に、彼が幸せそうにしていることが嬉しくもある。
「僕じゃない誰かに救われてる」
その現実が、残酷な矛盾を突きつけてくる。
⸻
再び二人が顔を合わせたのは、数日後のこと。
偶然だったはずなのに、避けられない運命みたいに。
フィリックスは視線を逸らし、言葉を探す。
ヒョンジンが息を呑む。
その告白は、ヒョンジンの胸を一気に熱くした。
けれど同時に、決して軽くない重みも感じた。
二人の視線がぶつかる。
選べないまま、ただ揺れる。
安らぎと、熱。
癒しと、痛み。
どちらも捨てきれず、どちらも手放せない。
夜の静けさの中で、二人は答えを出せぬまま、ただ互いの呼吸を確かめ合っていた。













編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。