第12話

❤️‍🩹⑫
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2025/10/06 06:44 更新
【Felix side】

僕は自分でも驚いていた。
新しい恋人――ジェイと過ごす時間は確かに心が安らぐ。
落ち着いた声、穏やかな手。
「君はそのままでいい」と繰り返すジェイの優しさは、かつて欲しかった形の愛に近かった。

けれど。
夜、ふとした瞬間に思い出してしまうのは、ヒョンジナの顔だった。
強引で、不器用で、でもどうしようもなく心を揺さぶる存在。
ジェイといると「安らぎ」なのに、ヒョンジナを思い出すと「痛みと熱」が蘇る。

ある夜。
ジェイの腕の中で眠りにつく直前、僕は心の奥で呟いた。

――僕は、どちらを選べばいいんだろう。



【Hyunjin side】

その頃、ヒョンジンもまた葛藤していた。
ヨンボガが新しい誰かと笑っている姿を思い出すたび、喉の奥が焼けるように苦しい。
でも同時に、彼が幸せそうにしていることが嬉しくもある。
「僕じゃない誰かに救われてる」
その現実が、残酷な矛盾を突きつけてくる。



再び二人が顔を合わせたのは、数日後のこと。
偶然だったはずなのに、避けられない運命みたいに。
HJ
HJ
…彼と、うまくいってる?
フィリックスは視線を逸らし、言葉を探す。
FL
FL
…優しいよ。すごく、ね。僕に何も求めないでいてくれる。
でも――
ヒョンジンが息を呑む。
FL
FL
それなのに、どうして君の顔が頭に浮かぶんだろう。
その告白は、ヒョンジンの胸を一気に熱くした。
けれど同時に、決して軽くない重みも感じた。
HJ
HJ
…俺は、君を惑わせてるだけかもしれない。
FL
FL
わかってる。…でも、もう一度だけ信じてみたくなるんだよ。君の言葉を。
二人の視線がぶつかる。
選べないまま、ただ揺れる。
安らぎと、熱。
癒しと、痛み。
どちらも捨てきれず、どちらも手放せない。

夜の静けさの中で、二人は答えを出せぬまま、ただ互いの呼吸を確かめ合っていた。

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