結論から言ってしまえば、この世界は狂っている。
人間は平等でそこに格差はない、と人々は言う……だが、現実はどうだろうか。幸せになる権利を持つ「選ばれた人間」と、それに搾取されるためだけに存在する「持たざる者」。その区分は、努力など入り込む隙もなく、生まれた時から決まっている。更に、上のセリフを言うのは、その「選ばれた人間」だけというのだから笑えない。
運命の女神とは、きっと極度の偏愛主義者か、あるいはただのサディストなのだろう。特に、この裏社会においては顕著だ。特定の血筋に宿るのか、それとも突然変異か。“異能”なんて、わけのわからない力を一部の人間に与えたせいで、今日もまた人が沢山死んでいる。昨日も、今日も。たぶん明日も。
力を持つ者は溺れ、持たざる者は怯える。
そんな生存競争の果てに、私たちは何を求めているのか。
でも不思議なことに、瓦礫の山で死体から金歯を抜き取っているような人たちでさえ、懐には「守りたい女」の写真を入れていたりする。実際、今私の足元に転がっている肉塊も、最期には誰かの名前を呼んでいた。
生存本能よりも強く、死への恐怖よりも深く。明日の命さえ保証されないこの街……本能に従うなら、他者を蹴落とし、孤独に徹するのが唯一の正解なはずだ。なのに、悲劇を生むとわかっていながら、人は愛しあうことをやめられないでいる。
泥に塗れ、血を流し、奪い合いながらも、誰かを求めずにはいられない。その愚かさが、この狂った世界に残された唯一の救いなのか、それとも最も残酷な呪いなのか。
私にはまだ、わからないままだ。
それでも……誰かが私に、一本の蜘蛛の糸を垂らして救ってくれる。そんな来るかもわからない時をただ待ち侘びている。私だけの力でこの地獄から這い出ることは、疾うに諦めているのだ。












編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!