「へぇ、なるほど
そんなことがあったのね風間くんって」
私の体に付けたタコの吸盤のようなものを慣れた手つきで外しながら先生はどこか切なそうに呟いた
「で、風間くんのお祖母様はなんて?」
「協力…そういえば、その事故でもしかして両親って…」
唇をキュッと噛み、そっぽを向いた
先生はその私の態度から察してくれたのか、それ以上聞いてくることはなかった
「やっぱりそうなのね…入学の資料見た時に家族構成に記入されてなかったから」
先生の言葉に胸がズキズキと痛くなってくる…この話、もうしたくないな
ーキーンコーンカーンコーン…
先生は「大丈夫よ」そうひとこと言って帰してくれた
廊下に出るとちーくんが私のカバンを持ってドアの近くで待っててくれた
カバンを受け取り二人並んで寮へ向かった
到着してすぐ2階に上がりベッドに横になった
『戻るかもしれない』
先生がこの言葉にどれだけの可能性を持たせているのか、そんなの知らないし多分この先ずっと分からない
でもただ別人のようになった彼を、幼なじみを黙って見ることしか出来ないなんて絶対に嫌だ
私が困った時何回も助けてくれて、一緒に悩んでくれて、そして笑顔にしてくれた
そんな類を私は助けたい
可能性は無限大、そう…そうに決まってる
私は携帯をポケットから取り出し開いた
特になにかするつもりはなく、ただ待ち受けが見たかった
待ち受けに映る類は笑顔で私にシロツメクサの冠のかぶせてくれようとしてる画像
これが唯一持ってる類の写真
恥ずかしいって言ってなかなか取らせてくれなかったからなぁ…
あー、なんか眠くなってきちゃった…夕ご飯まではまだ時間あるし少し寝よっかな
携帯を枕元に置き、静かに目を閉じた
なんかあの頃の夢見れる気がする…なんてね
「おい!!」
「!?」
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。