第3話

可能性は無限大
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2018/12/28 09:33
「へぇ、なるほど
そんなことがあったのね風間くんって」

私の体に付けたタコの吸盤のようなものを慣れた手つきで外しながら先生はどこか切なそうに呟いた

「で、風間くんのお祖母様はなんて?」
野村優希(のむら ゆうき)
野村優希(のむら ゆうき)
先生から聞いた話だと完全に記憶がなくなった訳じゃなくて、その事故のショックで記憶が正確には飛んでいるらしいんです
だからもしかしたら元に戻るかもしれないって…それで私のところに協力を求めて来てくれたんです
「協力…そういえば、その事故でもしかして両親って…」

唇をキュッと噛み、そっぽを向いた
先生はその私の態度から察してくれたのか、それ以上聞いてくることはなかった

「やっぱりそうなのね…入学の資料見た時に家族構成に記入されてなかったから」

先生の言葉に胸がズキズキと痛くなってくる…この話、もうしたくないな

ーキーンコーンカーンコーン…

色上 千尋(しきがみ ちひろ)
色上 千尋(しきがみ ちひろ)
のーんちゃーん!迎えに来たよ、もう終わったかなー?
野村優希(のむら ゆうき)
野村優希(のむら ゆうき)
あ、ちーくん…先生、私もう行っても大丈夫ですか?
先生は「大丈夫よ」そうひとこと言って帰してくれた

廊下に出るとちーくんが私のカバンを持ってドアの近くで待っててくれた

野村優希(のむら ゆうき)
野村優希(のむら ゆうき)
カバンありがと…
色上 千尋(しきがみ ちひろ)
色上 千尋(しきがみ ちひろ)
大丈夫!
…それよりさ、先生と何かあったの?
野村優希(のむら ゆうき)
野村優希(のむら ゆうき)
実はなんで男子校に入学したの?って聞かれて、そのまま類のこと話して…
色上 千尋(しきがみ ちひろ)
色上 千尋(しきがみ ちひろ)
そっか…それは辛かったよね
今日はもうこれで終わりだから帰ろ?
カバンを受け取り二人並んで寮へ向かった

到着してすぐ2階に上がりベッドに横になった

『戻るかもしれない』

先生がこの言葉にどれだけの可能性を持たせているのか、そんなの知らないし多分この先ずっと分からない

でもただ別人のようになった彼を、幼なじみを黙って見ることしか出来ないなんて絶対に嫌だ

私が困った時何回も助けてくれて、一緒に悩んでくれて、そして笑顔にしてくれた

そんな類を私は助けたい

可能性は無限大、そう…そうに決まってる


私は携帯をポケットから取り出し開いた

特になにかするつもりはなく、ただ待ち受けが見たかった

待ち受けに映る類は笑顔で私にシロツメクサの冠のかぶせてくれようとしてる画像

これが唯一持ってる類の写真

恥ずかしいって言ってなかなか取らせてくれなかったからなぁ…

あー、なんか眠くなってきちゃった…夕ご飯まではまだ時間あるし少し寝よっかな

携帯を枕元に置き、静かに目を閉じた

なんかあの頃の夢見れる気がする…なんてね

「おい!!」

「!?」

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