第5話

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2026/01/26 09:45 更新
その日の午後、







事務所内の1つの部屋では、バックにつくための振り確認が行われていた







ドアの前に立ち、耳をすませるとたくさんの音が聞こえる






音楽と、







床を打つ足音、







なんだか、懐かしくて、少し苦しい思い出も蘇ってきて…







でも、とっても好きな音







私はゆっくり扉を開けた







するとより鮮明に音が聞こえる







久しぶりに見た彼らの背中は、








あの頃より一回り大きくなっていた








それに身にまとっているものもだいぶ変わっている







ジャラジャラした鎖に、ゴツゴツした靴







彼らが前よりずっと大人になったんだなってことを実感した
大介
…え?
最初にこちらを見たのは大ちゃんだった






それに続いてみんなも私の方を振り返る






大ちゃんは信じられないとでも言うような顔で私の顔を見つめてて、






その瞳はどんどんうるうるしていって…、
大介
…あなたちゃん…っ、
あなた
…久しぶり、大ちゃん(笑)
大介
…ほんとに…、ほんとにもどってきた…っ
そのままこっちに向かって走ってきて、ぎゅーって抱きしめられる





待って待って、これマネージャーの立場的にダメじゃない?






いちばんダメだよね?
あなた
ちょ、だいちゃ…!
大介
…いまだけ…っ、
そう言われたら何も出来なくて、





大人しく抱きしめられることにした
翔太
…今の俺らについたって、
なんもいい事ねぇぞ
亮平
翔太
翔太
…はぁ、おい佐久間
振りの確認終わってないから
涼太
…ごめん、あなたちゃん
一旦出ててくれる?集中したいんだよね
あなた
…ぁ、うん
辰哉
佐久間、やるよ
あなたちゃん離して
大介
…ぐすっ、わかってる…っ、
そう言ってそっと体を離された





そのまま大ちゃんはみんなの元へ戻っていく






なんか…空気がおかしい







ピリピリしてて、正直すごく居心地が悪かった







仲のいい6人のはずなのに






それに翔太くんのあの言い方と声のトーン







あれは翔太くんの心が限界の時の声だった







私聞いたことあるもん








翔太くんが体調崩して、せっかくあった雑誌のお仕事キャンセルしなきゃいけなくなった時、







苦しそうに、いつも以上に荒い言葉遣いで泣いてたから






色んな考えが頭の中によぎったけれど、







まずはひーくんに言われた通りそっと部屋を後にした
部屋の外に出た後、私の足は勝手にスクリーンの方へ向かっていた





あのままあそこで突っ立ってるより移動した方がいいよなって思ったのもあるけど、





誰が練習してるんだろって単純に気になったから





大きなスクリーンにたくさんの部屋番号が映し出されてて、






1つの部屋番号の下には「SnowMan」と書いてある





その近くの部屋が使用中になっていて、






気になる名前が映し出されていた





「村上真都ラウール」






聞いたことない名前だったけど、きっと真面目な子なんだろうなって






そんなことを考えてたら、







滝沢
「…あなたか?」








声をかけてくれたのは滝沢さんで、






とりあえず近くの共用スペースの椅子に座った
あなた
お久しぶりです(笑)
滝沢
「…7年ぶり、だよな。
あんまり身長は変わってないか(笑)」
あなた
失礼ですよ(笑)!
滝沢
「悪い悪い(笑)」







滝沢
「SnowManのマネージャーになったんだろ?」







滝沢さんはそう言ってニカッと笑った









滝沢
「ジャニーさんがずっと言ってたんだよ、あの子は絶対戻ってくるって」



あなた
…そうだったんですか





滝沢
「なに、あいつらにもうなんか言われたの?」


あなた
いや…言われたというか、ちょっと邪魔しちゃったみたいで…、それに空気もピリピリしてるし…


滝沢
「お、さっそく新人マネージャーの出番じゃん」








滝沢
「…あいつらさ、解散の噂とか出ちゃってて…
6人は6人なりに沢山考えてるんだろうけどさ」




あなた
…頑張ります


滝沢
「服装とか、髪型とか結構変わっててびっくりしたでしょ(笑)」
あなた
…それはもう(笑)
結構びっくりしましたね
滝沢
「まぁ、でも…
中身は全然変わってないからさ(笑)」






滝沢
「あなたが知ってる、あのころのアイツらのまんまだと思うよ」

あなた
…はい(笑)
私もそう思います、自慢のお兄ちゃんたちなんで(笑)

滝沢
「あなたがさ、連れ戻してやってね
6人が変な方向に行こうとした時は」






滝沢
「いや…、連れ戻すも違うか
あいつらなりの正解に進もうとしてるんだもんな」







滝沢さんの言葉1つ1つが私の心にすっと入ってくる

あなた
…私が、正解にします!
彼らの行こうとした道を

滝沢
「…おう(笑)」






突然、滝沢さんが悩むような仕草を見せて私と連絡先を交換しようと言いだした





びっくりしたけど、言われるがまま携帯を取り出して交換すると、






私と滝沢さんのトーク画面に、1つのリンクが送られてくる






滝沢
「明日、あなたに話がある。
19時にここまで来い」






滝沢さんはそう言って、「じゃ」と手を振って去っていった






2時間後…






部屋から出てきたみんなはバラバラだった







「おつかれ」










互いに声をかけ合うくらいで、目は全くあってない








唯一、たつくんが私に声をかけてきた
辰哉
あなたちゃん、さっくんが話したいみたい
付き合ってやって(笑)
あなた
…ぁ、うん
もちろん(笑)
辰哉
今日はごめんね、なんか…嫌な空気だったっしょ(笑)
辰哉
ちょうど、翔太とさっくんが言い合ったあとでさ…(笑)
あなた
大丈夫だよ、全然気にしてないから!
なんなら私がタイミングずらせばよかったんだよね…、こちらこそごめんね
辰哉
…んや、あなたちゃんは何にも悪くねぇよ(笑)
ありがとうね、戻ってきてくれて
あなた
…ふふっ、うん!
辰哉
じゃあ、俺もまた様子見に来るから
あなた
またね、たつくん
辰哉
おう
部屋に入ると、壁に体を預けてぼーっとしてる大ちゃんがいた
あなた
大ちゃん
髪はボサボサで、こちらに視線を向けた時に首元のジャラジャラしたネックレスが小さく音を立てる
大介
…ねぇ、あなたちゃん
あなた
ん?
大介
俺らさぁ…、何がダメだったのかな…(笑)
大ちゃんは笑ってるつもりだろうけど、全然笑えてない

大介
SnowManって名前貰ってさ、6人みんなで頑張ってきたはずなのに
悔しそうに拳をぎゅって握りしめた大ちゃんは目を伏せた
大介
…なんか、全然進めてねぇ気がして
あなた
何も言えなくて、少し無言の時間が続く
大介
…あなたちゃんにさ、
大ちゃんがこちらをちらっと見た
大介
胸張って会えるくらいでっかくなってるつもりだったんだ
大介
俺らここまで来たよって、あなたちゃんとの約束のおかげで頑張れたよって…

自虐するようにふっと鼻で笑った大ちゃん
大介
…でも、結局なんも変わってねぇ(笑)
あ〜…っ、かっこわりぃ…っ、
——違う







かっこわるくなんかない







大ちゃんは、






大ちゃんたちは、








私にとって、ずっとかっこいいよって







言いたいのに







喉の奥が、ぎゅって詰まって








声が、出てこない








だって、私がいないうちにどれだけ悔しくても苦しくても頑張ってきた人たちに、







絶対大丈夫!って言うのは無責任だし、








私にとってはかっこいいだけじゃ不十分だし、







…今のわたしにできること…、








必死に頭を巡らせて考える








…ぁ、








私は大ちゃんの方に1歩近づいて、拳を突き出した








何も言わずに







大ちゃんは戸惑った顔で、私を見つめる








それから泣きそうなのを必死に堪えて、自分の拳をそっと当ててきた








—コツ。






小さな音が静かな部屋に響く








そのまま私は彼の腕をぎゅっと掴んで、








思いっきり、引っ張り上げた





大ちゃんが立ち上がった拍子に、ネックレスやチェーンが大きく音を立てる
あなた
踊ろう、大ちゃん

私はスマホを取りだして、先輩たちの曲がランダムで流れるようにした






イントロが流れた瞬間、大ちゃんが私の方を見る
大介
…、今?
あなた
うん
最初は私のダンスがぎこちなくて全然揃わなかったけれど、







やっぱり身体は覚えてるんだね








自然と足が出て、手が動いて、








足音や呼吸があってくる








大ちゃんが踊ってる









昔隣で踊ってたあの時みたいに









やっぱりなんにも変わってない(笑)












さっきの練習の時の大ちゃんのダンス、







外から少し覗いてた時に思ったんだ








苦しそうだなって








無理してる時の顔をして、必死になって踊ってたから








だから、思い出して欲しくて







ただひたすら楽しくて、







踊りたいから一緒に踊ってたあの時のこと








曲が終わってまた新しい曲が流れようとした時に、
大介
…はぁ〜っ、
大ちゃんがそのまま床に寝転がった
大介
…つかれたぁ

大の字になって、大きく胸で呼吸をする大ちゃん






私もその横にそっと腰を下ろした






上がった息がなかなか戻らない






でも、すごく楽しかった(笑)







そんなことを思いながら大ちゃんを見ると、








大ちゃんがニカッと笑う







それは紛れもなく私の大好きな笑顔たった
あなた
…ふふっ、楽しいね大ちゃん
そう言うと、








大ちゃんは一瞬照れたみたいに目を逸らして、







また私の目を見た
大介
…うん(笑)
to be continue…

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