第42話

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2024/04/16 11:39
季節はめぐり、夏になった。


夏は、朝を過ぎるとぐっと暑くなる。

蓮は洗濯物を終わらせ、日陰で息を吐いた。
蓮
今日も暑くなりそう……
久堂家はあたりはのどかな自然に包まれているから、日差しは強くないけど、さすがに夏本番になるとぐったりしてしまう。





でも、こんな暑さの中でも、中庭から

しゅっ、しゅっ


と音がする。


家の影から様子を見てみると、あなたが木刀で素振りをしていた。
女性的な優美さに加え、男性的な凛々しさを含んだ、まるで欠点のない美貌のこの家の主。


非番の日には、こうして稽古を欠かさず行っている。
蓮
(ってダメダメ!そろそろ稽古が終わる頃だよね)
冷たい水を用意して中庭に顔を出せば、あなたがちょうど素振りを中断したところだった。
蓮
あなた様、どうぞ
(なまえ)
あなた
ありがとう(微笑)
あなたは綺麗すぎる。
見つめられる度にドキドキする。こんなに心臓に悪いものは無い。
(なまえ)
あなた
蓮、顔が赤いけど、大丈夫?
蓮
っ!
顔を覗き込まれ、びっくりしたが、そんなものはお構い無しにあなたは蓮の額に手を当てる。
(なまえ)
あなた
熱は……なさそうね
蓮
は、はい。全然、全然平気です
(なまえ)
あなた
そう?
(なまえ)
あなた
水を浴びてくるから、体調が悪くなったら、ちゃんと休んで
蓮
は、はい
それから数分後
久堂 葉弥(はや)
久堂 葉弥(はや)
ごめんください
玄関に立っていたのはこの質素な家にはやや不釣り合いの格好をした男性。
久堂 葉弥(はや)
久堂 葉弥(はや)
初めまして、あなたが蓮?私は久堂葉弥。あなたの兄です
蓮の顔を見た途端、目を輝かせて駆け寄ってきた葉弥に、蓮はあっけに取られる。
蓮
は、初めまして……
あなたの兄と名乗った葉弥は、明るい印象の男性だった。
顔立ちはところどころあなたと似ているけど、雰囲気は男性ではあるが、柔らかい。
ゆり江
ゆり江
お久しぶりです。葉弥様
玄関で出迎えたゆり江がにこやかに会釈する
久堂 葉弥(はや)
久堂 葉弥(はや)
おお!ゆり江!お久しぶり。最後に会ったのは何年前だっ毛か?まだまだ元気そうでなによりだ
ゆり江
ゆり江
ありがとうございます
(なまえ)
あなた
まったく……相変わらずね、お兄さん
そこへ、水浴びを終えたあなたが仏頂面で声をかけた
久堂 葉弥(はや)
久堂 葉弥(はや)
お、あなた。仕事は?
(なまえ)
あなた
非番よ
久堂 葉弥(はや)
久堂 葉弥(はや)
もぉやだな〜。あんたこそ、いつまでも無愛想なんだから。せっかくこんなかっこいい婚約者ができたって言うのに……
(なまえ)
あなた
大きなお世話よ
口を尖らせる葉弥は、あなたより年上のはずなのに若々しく、少年のような仕草も不思議と違和感がない。
久堂 葉弥(はや)
久堂 葉弥(はや)
まぁいい。それより蓮。あっ、蓮って呼んでもいいか?
蓮
は、はい
久堂 葉弥(はや)
久堂 葉弥(はや)
俺、あなたに頼まれて蓮の先生を引たんだけど、話は聞いてる?
蓮
ええと……
来客が来ることはもちろん聞いている。
でもそれがあなたの兄だとは聞いてなかった。


蓮は混乱しながらも、数日前のことを思い出す……

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