その夜、私は約束通り、拓実とバーで会った。
拓実はピンクの小さな箱を私の前に置いた。
私は、言われるがまま、開けてみるとダイアモンドの指輪が入っていた。
気まずい沈黙が流れた。
私は、バーを離れた。
いつからだろう。私と拓実の価値観が変わってきたのは。
昔は、普通のカップルみたいに、お休みの日に、遊園地に行ったり、映画を見に行ったりした。
部屋でまったり、ゲームをするのも楽しかった。
でも、拓実が今のIT企業に転職してからだ。拓実は水を得た魚のように、自分の力を発揮していった。
収入も今までの5倍に増えたと自慢していた。
でも、その分会える時間は少なくなり、たまに彼の開いている夜に、バーで話しをするだけだった。
仕事が成功してくれるのは、嬉しかったけど、面倒見が良い、正義感の強い性格だけは、変わって欲しくなかった。
拓実は、私と連絡を取りづらくなったようだった。
ある日、拓実は会社の近くのバーに入り1人でお酒を飲んだ。
拓実が、バーテンダーの顔を見ると見覚えのある顔だった。
学校…
彼女の描いた画用紙を受け取った。
仲良く並んで笑いあっている2人。
でも、何だか嬉しくて私はそれを受け取った。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。