第3話

プロポーズ
17
2023/06/12 12:16
その夜、私は約束通り、拓実とバーで会った。

相葉七海
拓実の会社は土曜日は休みじゃないの?
倉科拓実
俺の仕事に、土日もないよ。その代り、働いただけ、報酬もらえるから嬉しいけどね。
相葉七海
そうなんだ。教師は一応公務員だから、土日は休み。忙しい時は出勤だけど。。
倉科拓実
そんな、七海にももう、無駄なストレスかけたくなくてさ。
拓実はピンクの小さな箱を私の前に置いた。

倉科拓実
開けてみ?
私は、言われるがまま、開けてみるとダイアモンドの指輪が入っていた。
相葉七海
これは…
倉科拓実
俺と結婚してくれないかな?七海を養うだけの年収もあるし、新築マンション買って一緒に暮らそう?
七海は、部屋でゆっくり専業主婦やればいい。
相葉七海
待って。私、今の仕事辞めたくない。やりがいもあるし。
倉科拓実
面倒くさい生徒の世話がツラいって言ってたじゃん。
相葉七海
あれは、頑張って解決したの。それに施設にいる母親の事もあるし。
倉科拓実
あんな、変な事件を起こすような施設は辞めて、俺がもっといい、設備の整った施設探してやるよ。
相葉七海
…待って。勝手に物事を進めないで。
気まずい沈黙が流れた。

相葉七海
とにかく、少し時間を頂戴。
私は、バーを離れた。


いつからだろう。私と拓実の価値観が変わってきたのは。

昔は、普通のカップルみたいに、お休みの日に、遊園地に行ったり、映画を見に行ったりした。

部屋でまったり、ゲームをするのも楽しかった。

でも、拓実が今のIT企業に転職してからだ。拓実は水を得た魚のように、自分の力を発揮していった。

収入も今までの5倍に増えたと自慢していた。

でも、その分会える時間は少なくなり、たまに彼の開いている夜に、バーで話しをするだけだった。

仕事が成功してくれるのは、嬉しかったけど、面倒見が良い、正義感の強い性格だけは、変わって欲しくなかった。

拓実は、私と連絡を取りづらくなったようだった。

ある日、拓実は会社の近くのバーに入り1人でお酒を飲んだ。

林田瑠衣
拓実?
拓実が、バーテンダーの顔を見ると見覚えのある顔だった。

倉科拓実
瑠衣?
林田瑠衣
覚えてくれて嬉しいー。中学以来だもんね。今、なんの仕事してるの?
倉科拓実
IT関連企業。結構、年収も貰えるようになったのに、彼女は何が不満なのか、結婚申し込んでも、少し待ってくれ…とか言われちゃうしさ。
林田瑠衣
もしかして、相手って相葉七海?
倉科拓実
そう。中学から、今までずっと彼女一筋の気分でいたんだけどな。
林田瑠衣
続くねー。あんた達。という私も園田由希と、中学から今でも付き合っているんだけど、こっちもあんまり上手くいってないわ。
優しいんだか、おひとよし何だか、なんで介護士なんかして安月給でツラい重労働しているのかしら?
倉科拓実
うわ。すげー偶然。七海今、由希の働いている施設で、母親見てもらっているらしいよ。
林田瑠衣
え?そうなの?

学校…
菅野沙也加
先生、プリント落としましたよ?何、ボーッと歩いているんですか?
相葉七海
あら、菅野さん、ごめんなさい。
菅野沙也加
私、先生にもプレゼントの絵を描いて見たんです。

私と大前さんを仲良くさせてくれた御礼。
彼女の描いた画用紙を受け取った。

相葉七海
これって、私と由希?
仲良く並んで笑いあっている2人。
菅野沙也加
だって、園田さんと、先生、凄く仲良さそうだったんだもん。
相葉七海
だから、私と由希はそんなんじゃないって、言ってるのに。。
でも、何だか嬉しくて私はそれを受け取った。

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