それから、もう大学にも、サークルの活動にも慣れてきた頃
俺はまだ、スンミニの姿すら見ていなかった。
一度本腰を入れて構内を探してみたりしたけど、やっぱり見つからなかった。
コンコン、とノックをしてガラガラとドアを開ける。
3人しかいないのに揃いの悪いこのサークルだが、今日は全員いるらしく
チャンビニヒョンとチャニヒョンが作業片手に出迎えてくれる。
このサークルはあくまで個人で作曲作業に取り組むもので、口出ししても少しのアドバイス程度。
ヒョン達は合作を作ったことが何度かあるらしいけど、俺はまだ無い。
なんてわちゃわちゃした雰囲気で作業に取り掛かる。
そんなのがあるんだ。
…聴覚障がい、かぁ……
俺は自分のことを何も言わないチャニヒョンに呆れていると、いつの間にか手話の教室が始まっていた。
チャニヒョンは身振り手振りで教えてくれるが、チャンビニヒョンは頭にハテナを浮かべながら聞いている。
俺も当然全く分からないんだけど。
そう言いながら、眉間に指を当てて手刀を下におろすような動作をしたチャニヒョン。
その動きが、どうにも見覚えがあるものだった。
俺はそんなヒョン達の会話など耳に入らないほど、過去の記憶を遡っていた。
………
思い、……出した。
忘れもしない、あの日。
スンミニと、この場所で再会したときだ。
だって、手話って
耳が聞こえない人がするやつで。
いや、俺の記憶違いかもしれないし…
ただ、ふざけてテキトーにした動きがたまたま似てたとかかもしれないし。
なんて現実逃避なことを考えれば考えるほど、あの時のスンミニの表情が脳裏に浮かぶ。
不思議そうに俺の方を見る視線になど気付かない。
スンミニは、耳が聞こえなくなったのか。
その仮説だけが俺の頭に色濃く残った。












編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!