第10話

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2024/12/17 08:20 更新





それから、もう大学にも、サークルの活動にも慣れてきた頃




俺はまだ、スンミニの姿すら見ていなかった。



一度本腰を入れて構内を探してみたりしたけど、やっぱり見つからなかった。










hn
こんちわー


コンコン、とノックをしてガラガラとドアを開ける。


3人しかいないのに揃いの悪いこのサークルだが、今日は全員いるらしく

チャンビニヒョンとチャニヒョンが作業片手に出迎えてくれる。



cb
おーす、今日全員揃ったな
bc
まぁ揃ったとしても個人で作業するのには変わらないんだけどね



このサークルはあくまで個人で作曲作業に取り組むもので、口出ししても少しのアドバイス程度。


ヒョン達は合作を作ったことが何度かあるらしいけど、俺はまだ無い。


hn
ちょっ、それ俺のマイク!
cb
いいやつ使ってんなぁお前、くれよ
hn
金持ちが何言ってんの…



なんてわちゃわちゃした雰囲気で作業に取り掛かる。



bc
~♪…~、~♬
hn
新しいの?
bc
そう、今朝思いついちゃってさ
hn
へぇ、柔らかい感じで良いね

cb
あー、今朝といえば、今朝俺初めてあの校内入ったわ
hn
あの?
cb
なんだっけ?聴覚なんたら…みたいな人用の。
bc
あぁ、去年出来たやつね。
hn
聴覚…?聴覚支援学校、的な?
bc
そうそう。
去年、盲学校と一緒に大学に組み込まれたんだよ
hn
へー…




そんなのがあるんだ。



…聴覚障がい、かぁ……





cb
教授に用があって行ったんだけど、校内超綺麗だった
hn
えー、羨ましい。ここの部屋はこんなにボロいのに

cb
それにさ、手話?使ってる人もいて
cb
手の動きで話せるって凄いよなぁ
bc
手話かぁ…、難しいよね、俺も覚えるの超大変だったよ
cb
えっ、覚えてんの!?
bc
あれ、言ってなかったっけ?
俺の弟、その支援学校に通ってるんだよ
hn
えぇっ、弟いるの!?
bc
…言ってなかったっけ?
cb
なにも聞いてない!!てか、チャニヒョン手話できんの!?ちょっと教えてよ
bc
あぁ、良いけど…




俺は自分のことを何も言わないチャニヒョンに呆れていると、いつの間にか手話の教室が始まっていた。








bc
…これが、「ありがとう」で
bc
これが「おはよう」


チャニヒョンは身振り手振りで教えてくれるが、チャンビニヒョンは頭にハテナを浮かべながら聞いている。


俺も当然全く分からないんだけど。


bc
これが「さようなら」で…、

bc
これが、「ごめん・・・







そう言いながら、眉間に指を当てて手刀を下におろすような動作をしたチャニヒョン。




その動きが、どうにも見覚えがあるものだった。







cb
へぇ…、凄いな、ひとつも分かんねぇ
bc
普段から使わないとなかなかね。
bc
まぁ、手話使えなくても生活はできるし。耳の聞こえない人がみんな手話を使えるわけじゃないみたいだよ




俺はそんなヒョン達の会話など耳に入らないほど、過去の記憶を遡っていた。


























………






思い、……出した。








忘れもしない、あの日。





スンミニと、この場所で再会したときだ。













hn
……なん、で?














だって、手話って

耳が聞こえない人がするやつで。






いや、俺の記憶違いかもしれないし…



ただ、ふざけてテキトーにした動きがたまたま似てたとかかもしれないし。






なんて現実逃避なことを考えれば考えるほど、あの時のスンミニの表情が脳裏に浮かぶ。











cb
なんだ?ぼそぼそと…



不思議そうに俺の方を見る視線になど気付かない。





































スンミニは、耳が聞こえなくなったのか。
















その仮説だけが俺の頭に色濃く残った。









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