第59話

第肆拾捌話~帰ろう~
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2021/10/05 12:49
冨岡義勇side
(炭治郎の攻撃を食らったのは、禰豆子だった。

禰豆子は鬼化した兄を噛まれながら、グッと

抱き締めていた)
あなた(自我無し・鬼化)
竈門 禰豆子
お兄ちゃん
ギギ(炭治郎が禰豆子の背中を強く握る音)

ジワ…………(禰豆子の背中から血が服に滲む音)
竈門 禰豆子
ごめんね。
竈門 禰豆子
ずっと私、何も分からなくなってて
ごめんなさい。
竈門 禰豆子
お兄ちゃん独りに全部背負わせたね。
竈門 禰豆子
どうしていつもお兄ちゃんばっかり、苦しい目にあうのかなあ。
竈門 禰豆子
どうして一生懸命に生きてる優しい
人達が、いつもいつも踏みつけに
させられるのかなあ。
あなた(自我無し・鬼化)
……………………
竈門 禰豆子
悔しいよ、お兄ちゃん。負けないで。
竈門 禰豆子
あともう少しだよ。鬼になんてなっちゃ駄目。
(ボロボロと涙を溢しながら、兄に噛まれながら、

兄を抱き締める)
竈門 禰豆子
帰ろう、ね。家に帰ろう。
竈門炭治郎(鬼化)
グオオオオ
ガリガリ(背中を引っ掛かれた音)
竈門 禰豆子
!!
ブン(禰豆子を投げようとする音)
我妻 善逸
炭治郎、止めろーっ!!
ガシィ(善逸が炭治郎の背中に飛び付く音)
あなた(自我無し・鬼化)
!……………………豆子…………ちゃん
我妻 善逸
禰豆子ちゃんだぞ!元に戻ってる!
人間に戻ってる!
我妻 善逸
こんなことしたら死んじゃうよ!!
我妻 善逸
お兄ちゃんて呼んでるだろ!!
あなた(自我無し・鬼化)
!………………………………さん
竈門炭治郎(鬼化)
グワウ
嘴平 伊之助
やめろーーっ!!
バシン(伊之助が炭治郎の頭を殴る音)
嘴平 伊之助
ガーガー言うな!禰豆子に怪我とか
させんじゃねえ!
嘴平 伊之助
お前そんな…………
そんな奴じゃないだろ!
あなた(自我無し・鬼化)
!…………伊之助…………さん
嘴平 伊之助
あんなに優しかったのに…………!!
わーん(伊之助が泣く声)


ボカボカボカ(伊之助が何度も殴る音)
嘴平 伊之助
元の炭治郎に戻れよォオオオ!!
竈門炭治郎(鬼化)
ガアッ
ドン(炭治郎の周りの地面が割れ、衝撃波が

放たれた音)
竈門 禰豆子
ううっ…………
我妻 善逸
グッ…………ゲホッ
あああ…………
冨岡義勇
ハア
(禰豆子は辛うじて、炭治郎を抱き締めている。

善逸は支えてくれていた隠の所まで飛ばされ、

伊之助は壁が壊れる程、壁にぶつかる。冨岡同様)
あなた(自我無し・鬼化)
………………………………さん
(あなたは何一つ怪我を負っていなかった。

と言うより、場所は一切変わっていなかった

炭治郎は背中に触手のようなものが生えていた。

這いつくばっているにも関わらず、

抱き締め続けている禰豆子)
竈門 禰豆子
お兄ちゃん、負けないで。
竈門 禰豆子
お兄ちゃん…………!!
竈門炭治郎(鬼化)
ハアッ、ハアッ、グルル
(炭治郎が善逸に攻撃しようとする)
竈門 禰豆子
駄目!!
冨岡義勇
水の呼吸 肆ノ型・打ち潮!!
禰豆子を噛んだ!!血の味を覚えてしまった!

もう終いだ…………!!早く!!早く炭治郎を

殺さなければ、人を殺す前に。だが…………

日光も赫い日輪刀も炭治郎には効かない。

多分、あなたも同様だろう。しかも、

炭治郎を殺そうとすれば、多分あなたが

炭治郎を守ろうとするだろう。所謂、己を

犠牲にしてでも守る可能性が高い。

殺す方法がない…………!!
あなた(自我無し・鬼化)
!!ガァウ
冨岡義勇
!!しまっ…………
ドンッ(あなたに冨岡が押し倒された音)


ガキンッ(冨岡の刀をあなたが噛み付いた音)


キキキキキキ(炭治郎が口の前に丸い衝撃波を

集める音)
冨岡義勇
!!
竈門 禰豆子
誰も殺さないで!!
竈門 禰豆子
お兄ちゃん、お願い!!
竈門 禰豆子
やめて!!
(禰豆子が炭治郎の口の前に手を出す)


ドギャ(衝撃波が放たれた音)
あなた(自我無し・鬼化)
グルルル
ギチギチギチ(あなたの噛む力が

強くなっていく音)
冨岡義勇
っく…………
我妻 善逸
わああ、禰豆子ちゃん!!
(禰豆子の手は血まみれだった)
冨岡義勇
…………あなた。…………頼む、
もう止めてくれ…………。
殺させないでくれ…………あなた。
ポタ(冨岡の目から涙が頬を伝う)
あなた(自我無し・鬼化)
グン(炭治郎が移動し始める音)
竈門 禰豆子
駄目!!
竈門 禰豆子
もう今のやったら駄目!!
ギャゴ(炭治郎が攻撃する音)


ガキンッ(冨岡に当たるかと思われたが、何かに

弾かれる音)
冨岡義勇
!?
何だ?何かに弾かれた?何に?
我妻 善逸
嫌だ嫌だ、禰豆子ちゃん離れて!!
嘴平 伊之助
たん、じろ…………ねず…………
何故、禰豆子を殺さない?血の滴る食い物が

目の前にあるというのに。先刻の攻撃は何故

逸れた?抗ってるのか?炭治郎、お前も。


ポタ…………(冨岡の頬に生暖かいものが落ちる)
冨岡義勇
!!
あなたの方を見ると、あなたは泣いていた。

刀は噛んだままだが、それ以上来なかったし、

離れなかった。まず、片腕ならもう殺されても

おかしくない。それなのに殺されてない。

あなたもなのか?あなたも抗ってるのか?
あなた(自我無し・鬼化)
ポタポタ(赤い瞳から大粒の涙が零れ落ちる音)
炭治郎とあなたの自我を取り戻す事が

できれば…………!!しかしそんな奇跡が容易く

起こせるのか、俺に…………!!

冨岡義勇side 終了


愈史郎side

まずい、まずい、何てことだ…………!!

無惨め…………!!死んで尚、これ程他人に不快感を

味わわせるとは。クソッ、日の光のせいで

向こうに行けない…………!!太陽の下では

血気術すら塵と消える。俺にはもう何も

出来ることがない!


フラフラ…………(栗花落が歩いてくる音)
愈史郎
!?
フラ…………(栗花落が歩いてくる音)

愈史郎side 終了


栗花落カナヲside
栗花落 カナヲ
ハア、ハア、ハア
栗花落 カナヲ
炭治郎…………、禰豆子ちゃん…………、あなたちゃん…………
(その目には大粒の涙が後から後から零れ落ちる)
栗花落 カナヲ
可哀想に…………
栗花落 カナヲ
ハア…………、ハア…………
(胸ポケットから小さな細長い木箱を出す)
割れてない…………使える…………

~回想シーン~

《すみません、割愛させてもらいます!!》

~回想シーン 終了~
栗花落 カナヲ
私の目を片方残してくれたのは、
この為だったんだね、姉さん。
栗花落 カナヲ
あ、でも…………
薬はひとつだけ…………。炭治郎かあなたちゃん。

どちらかにしか使えない。二人とも鬼になってる。

どうしよう…………。

栗花落カナヲside 終了


あなたside
あなた(自我無し・鬼化)
ウ゛ウ゛ウウウウ…………
ダンッ(冨岡から離れた音)
冨岡義勇
!!
あなた(自我無し・鬼化)
ハアッ、ハアッ、ハア、ハア…………
あなた(自我無し・鬼化)
……………………カナヲちゃん!!
栗花落 カナヲ
!!
あなた(自我無し・鬼化)
わ、私…………は、いい…………からっ!
あなた(自我無し・鬼化)
薬を…………炭治郎に使って!!
私、は、血気術で何とかする!!
あなた(自我無し・鬼化)
だから…………ッお願いっ!!
栗花落 カナヲ
っ!!
そう、私は眺めている間、何とか自我を

取り戻す事ができた。まぁ、微妙すぎるが。

私は心を読むことができた。だから、

カナヲちゃんが考えていることが見えた。だから、

言った。何とかするから。と。大丈夫。

あの・・血気術なら、人間に戻れる可能性が

高い。死んでもいい。でも、炭治郎は

死んじゃ駄目。皆が悲しむから。でも、私は

違う。死んだって、悲しむ人なんて…………。


あなたside 終了


栗花落カナヲside

あなたちゃんのお陰で決心がついた。

鬼になってすぐだから、今ならまだ片目でも。

炭治郎の攻撃も掻い潜れるはず。
栗花落 カナヲ
花の呼吸 終ノ型・彼岸朱眼
栗花落カナヲside  終了


冨岡義勇side
冨岡義勇
!?
胡蝶の…………!!

(カナヲが炭治郎達に一直線に向かう。炭治郎は

攻撃しようとしたが、何とか避け…………)


ドシッ(炭治郎に薬を打ち込んだ音)


ギュウウウ(薬の容器を強く握る音)


(涙を流しながら、炭治郎に訴える)
栗花落 カナヲ
炭治郎、駄目だよ。
栗花落 カナヲ
早く戻ってきて。
栗花落 カナヲ
禰豆子ちゃん泣かせたら
駄目だよ…………
栗花落カナヲside  終了


竈門炭治郎side

禰豆子…………

ドッ(炭治郎に負わされた傷で地面に落ちる音)
竈門 禰豆子
カナヲちゃん
ドクン(炭治郎の心臓が、跳ね上がる音)

(その顔は苦しげに歪んでいた)
あなた(自我無し・鬼化)
…………
ブンッ(あなたが陽月ノ刀を振り上げた音)
冨岡義勇
!?あなた!?
ドスッッ(陽月ノ刀があなたの胸を貫く音)


ゴフッ(あなたが吐血した音)


ドサッ(地面に血を流しながらあなたが

倒れる音)
冨岡義勇
あなた!!
竈門 禰豆子
あなたちゃん!?

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