竈門炭治郎side
帰りたい。俺も家に帰りたいよ、禰豆子。
本当にもう疲れたんだ。
(涙を流す精神世界の炭治郎は肉塊に
取り込まれた状態だった)
お願いします、神様。家へ帰してください。
俺は妹と家へ帰りたいだけなんです。
どうか…………
(空へと手を伸ばした炭治郎の右腕に付いた
肉塊から目が現れ、無惨が炭治郎に話しかける)
(無惨の目が伸ばした手の甲にも現れる)
思い出が残ってる。あの幸せな日々は俺と
禰豆子がいる限り、消えない。だから、帰る。
(無惨の肉塊から少しだけ離れ、上に上がる)
(炭治郎の腕に付いた肉塊に顔の上半分ができる)
(誰かが炭治郎の背中を上へと押し上げる)
謝りたい。皆を傷付けてしまった事、戻って
謝りたい。
(無惨が尚も言い続ける)
それはお前が決めることじゃない。皆が俺を
心配してくれてる。匂いでわかる。
ボコッ(炭治郎の腕に付いた肉塊から無惨の体が
出てくる音)
(炭治郎の腕の肉塊から無惨の上半身ができ、
炭治郎の髪と隊服を鷲掴みにしながら言い続ける)
嫌だ。俺は人間として死ぬんだ。
無限の命なんて少しも欲しくない、いらない。
皆の所に帰りたい。
(無惨は冷たく炭治郎を見下す)
ボコボコ(無惨の肉塊が炭治郎の腕を更に
包んでいく)
(炭治郎の目から大粒の涙が頬を伝う。そんな
炭治郎の背中を誰かが押す感覚が。いくつもの
手が炭治郎の体を上へと押し上げる。)
しのぶさんの匂いがする。いや、これは…………
藤の花の匂いか…………
(藤の花の中から手が差しのべられる。炭治郎も
腕を伸ばす。その手に掴まれた時、声が聴こえた)
禰豆子…………
(炭治郎の目から涙が溢れる)
(無惨は声を荒げながら、炭治郎を
引き留めようとする)
ズズ(炭治郎が次第に上へ向かい、無惨から
次第に離れていく音)
そんな人いない。自分ではない誰かのために
命を掛けられる人たちなんだ。自分達がした
苦しい思いや悲しい思いを他の人にはして
欲しくなかった人たちだから。
(無惨が炭治郎の腰にしがみつくようにしながら、
必死に炭治郎に訴える)
(炭治郎の目には大粒の涙が浮かび、その
伸ばした手に禰豆子以外の手が
差しのべられていく。その手は冨岡、善逸、
伊之助、あなたのものだった)
皆…………。
(其処から次々仲間の腕が差しのべられ、
炭治郎を掴み、上げていく)
(無惨の言葉を他所に炭治郎は上へ上へと
上がっていき、遂に無惨の手から炭治郎が離れる)
(炭治郎は目を瞑ったまま、藤の花の花弁が
顔に乗ったりしながら通っていく。藤の花が脇に
退き、青空が広がる。それと同時に現実で
炭治郎は目を開く。開くと見えるのは自分を
囲んだ仲間たち、そして妹の禰豆子)
(涙を溢しながら、此方を覗く禰豆子。炭治郎も
涙を溢す)
ワッ(皆が歓声を上げる)
(冨岡が魂が抜けるように倒れそうになるのを
隠が支える。そして、禰豆子が炭治郎の顔を
手で包みながら、二人して涙する)
カナヲ…………よかった…………。生きてる…………
(離れた場所で横たわったカナヲは此方を見て、
涙を流しながら微笑んでいた。その微笑みに
炭治郎も微笑みに返した)
(あなたは胸に刀を突き刺したまま、
吐血しながら穏やかな微笑みを浮かべていた。
その目は人の目で涙を溜めていた。だが、それは
片目だけだった。赤い瞳は鬼だったが、殺気は
放っていなかった)
竈門炭治郎side 終了
冨岡義勇side
(冨岡はあなたの傍へ行き、あなたを上半身を
起こさせ、軽く抱き締めた)
(あなたは少し驚き、穏やかな微笑みを浮かべた。
冨岡は涙を浮かべながら、あなたを見つめた)
(あなたが手を空へ突き上げ、血気術を
発動した瞬間、冨岡は刀をあなたの胸から抜いた。
血気術の暖かな光は鬼殺隊の皆に降り注ぎ、
怪我がみるみる癒えていった。そして、
あなたは瞳を閉じた)
ポタポタ(冨岡の瞳から大粒の涙が零れ落ちる音)
(冨岡は深い眠りについてしまったあなたを
抱き締めた。そして、あなたが言っていた事を
思い出していた)
あぁ。いつまでも、待っているからな…………。
あなたが目覚めるまで…………ずっと。
血気術 暁の明星・癒命とは!!
あなたの血気術の一つ。命と引き換えに
その場にいる人たちの傷を無効化する事が出来る。
その代わり、人間の自我を持っているため、
長い間眠りに落ち、生き延びる可能性がある。
この可能性を信じて、あなたはこの血気術を
発動した。この血気術は痣の代償を
打ち消すことも出来る。長く生きて欲しい。
と言うあなたなりの優しさが造り出した
血気術でもある。