『317』『72』
やっぱり、信じられなかった。信じたくなかった。こんなに圧倒的な差があるなんて信じたくなかった。
悔し過ぎて泣く僕に蓮くんは優しく抱き締めてくれて、それもなんだか涙が出てきた。
あぁ、僕は結局この人と一緒にやることはないんだって。
色々励ましてくれる蓮くんの言葉がなにも耳に入ってこない。何度同じ場面でもこの悔しさを味わうのか。なんとなく頷きながら…
ボソッと蓮くんが言った言葉の違和感に気付く。ちょっと待って、そのフレーズは…
なにかがおかしい。なんとなく瑠姫くんが怪しいと思っていたけど、違うかもしれない。
いや、もっと注意深く見なきゃいけないんだ。
勝利をつかむ道は僕たちだけの道なんだから。
ポジション審査は僕の知っている結果になっていった。本田くんが1位になったときはやっぱり胸が熱くなったし嬉しかった。ただ、本田くんに対し喜ぶ姿を見ながら、さっきの違和感をぬぐえなかった。
いや、昔僕が言われてたから思い付いた言葉だったのか?いや、違う。そんなことはないはず。じゃあ、蓮くんは…
でもそんなはず無い。じゃあ…
変わらない世界だと思うけど、もし変える力が働くとしたら…
グループバトルだ。グループバトルの結果がもし変わるとしたら…
僕の推測はあくまで推測だそして今の段階でこの推測を話せるのはかつ君しかいない。いまここで話しておかないと…
余り人のいない場所にかつ君を連れ出した。
かつ君がにっと笑って僕の肩を叩いた。何となく肩の荷が降りた気がする。
なんでこんなことになったのかまだ掴みきれていないけどなんとかなる気がしてきた。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!