【ボスニア・ヘルツェゴビナ共和国視点】
ベオグラードへ会議という名の説教もどきをされるために行ったのは今回が初めてじゃない。
こんなことに時間を使うんだったら、作戦会議にもっと出席していたかった……
酷く憂鬱な後悔をしていた。でも…
ピシャンッ!!!
鈍く響いたこの音を無視できる俺じゃあなかった。
何があった?
日々の疲れで軋む体を野次馬精神が掻き立てる。
そこで待っていたものが……
……隣のビルから飛び降りた奴だったとは微塵も考えずに。
ドロッとした血が足元にじわじわと迫っていく。
面倒事に巻き込まれる前に離れようとも思ったが、
なぜか目が離せない。必死に引き留める理性と相反し、気づけば血溜まりのなかに足を踏み入れていった。
握った手にはまだぬくもりがあった。
どこかで知った顔、でも会ったことはない。
彼女を見ていると、妙な気分になる。心がざわついて、捻り潰されるような感覚だ。
今の俺を突き動かすのは、単なる自殺未遂への恐怖と野次馬精神ではない、別の何かだ。
病院で聞かされた彼女の名は……あなた。
やはり、と言うべきか。
聞き馴染みのあるような、しかしどこで見聞きしたのか分からない名前である。
一度彼女の名前を口にすれば、あの時の無もなき感情が俺を襲う。
ニュースで見た顔?いいや違う。
本で見た顔?それも違う。
プロパガンダポスター?テレビ?全部違う!!
一つ確実なのは、白いベッドで呻きながら眠る彼女に…
俺が一種の危険な感情を抱いたことだけだ。











編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。