私の両親は,私が“ママ”と呼べる様に成った頃に
不慮の事故で此の世を去った。
それから私は,両親が残した“荷物”として
親戚中に煙たがられ,結局,
金銭面により叔母さんの家に引き取られ,
“絶対私達をママ,パパなんて呼ばないで”
と,厳しく躾を受けて育った。
息苦しい生活で唯一自由に呼吸が出来たのは,
優しくて面白いお爺ちゃんの家。
其処は都会から外れた森の奥に佇んでおり
木漏れ日がきらきらと差し込む,
一昔前の洋館の様な一軒家。
私は其処が好きだった。
“爺ちゃんの昔のお話,聞いてくれるか?”
お爺ちゃんの話は殆どがデタラメで
私のお気に入りは幼少期に出会った吸血鬼の話だ。
“庭で遊んでると,
顔色の悪い青年が影で倒れて居るのが見えてな…”
どうも其の青年を助けた後
とても仲良く成り,毎日一緒に遊び,
一緒に悪戯をして,一緒に叱られた。
私にも,其んな友達が欲しかった。
ずっとお爺ちゃんのデタラメな話を
聞いて居たかった。
大好きだったお爺ちゃんが,2年前に
両親の元へ行って仕舞った。
遺品整理の為、久し振りに懐かしい風景を見る。
其処は草が生い茂り,森の命が溢れていた。
今でも鮮明に思い出せる,お爺ちゃんとの日々。
よくお花屋さんごっこをしたガゼボに目を向けると
花を見つめる誰かが居た。
振り向いた顔を見て,私は直ぐに確信した。
白髪に赤い瞳。
青白い肌の“彼”だ。
これは,幻覚かもしれない。
おじいちゃんから聞いた“彼”だ。
デタラメなんかじゃ,無かった。
“彼”は,本当に,確かに,存在した。
そう言うと暫く葛葉さんは口を噤んで
下を向いた。
葛葉さんは頭を掻きながら
気怠そうに私の方へ歩いてくる。
其れは,おじいちゃんが大切にしていた
花の数々だった。
確かに,お爺ちゃんが亡くなってから
誰も来ていない筈なのに,自然に
育ったとは言い難い,綺麗な花達が咲いて居る。
照れた様に笑う葛葉さんは,
蔦で開か無く成ったドアを横目に,
割れた窓ガラスから家の中に消えて仕舞った。
これが,私と葛葉さんの出会いである。












編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。