「はあ!?なにそれ!弟が殺されかかってんのよ!?」
亡骸の外、空の下へと出されて降ろされたかごめがあなたの名前。〇〇丸など漢字推奨に詰め寄る。
『そう言われてもな。両方弟だ』
「で、でも、」
その時大きな衝撃があって、殺生丸と犬夜叉も亡骸を突き破って外へ飛び出してきたのがすぐそこへ見えた。
「犬夜叉!」
「殺生丸様ぁー!!」
殺生丸が唸り、右眼をしきりに瞬いている。
しかし依然として白い身体には傷一つ見えないままである。
『眼をやり返したか』
「犬夜叉様、どうです鉄砕牙の威力は!さあ殺生丸様にとどめを!フギャー!」
「バカ言え!こんな刀つっかえ棒にしかなんねえ、よ…」
振り返った犬夜叉は、黒く鋭い爪先でプチッと潰された冥加をみて語気を僅かに弱めた。
『うるさい虫だ』
「ち、ちくしょう…本当にこのボロ刀がどうにかなんのかよ」
そう言う間にも殺生丸が前脚を振り下ろす。
それを一応鉄砕牙で弾いてみるが、やはりなまくら刀のようであった。
『ふむ。どれ、巫女、何か言ってやれ』
「えっ!…犬夜叉!頑張って!今の一発効いてるわよー!」
「ちぇ、あのなあ!全然効いてねえんだよ!!」
「だってそれ、あんたの刀なんでしょ?あたしは信じてるからね、あんたの力!」
口火を切らせたのはあなたの名前。〇〇丸など漢字推奨ではあったものの、かごめが明るい表情でそう犬夜叉に言い切った。
「…っち、いいのかよ、そんな能天気なこと言って!俺ぁ頑丈だからいいけれどよ、このままじゃ、おめえは死ぬかもな」
「……やっぱり、駄目なの?」
『おや』
「え、うおお、おお、俺か?お、俺が泣かしたのか?」
かごめの後ろに立っているあなたの名前。〇〇丸など漢字推奨に視線で助けを求めるが、当の兄はしれーっと別の方向を向いている。
「ひっく」
「な、泣くなー!」
「じゃあ笑えっての!?」
「やかましい!俺がお前を守るっつってんだ!!」
え?とかごめの涙が引っ込む。
「くそお、そこで見物でもしてな!兄貴!」
『やれやれ』
外に出てもか、とかごめの襟首を引いて下がらせながらあなたの名前。〇〇丸など漢字推奨は殺生丸のほうを見る。
邪見が近くまで行っているが、まあ奴は自分で避けたり出来るだろう。
「い、今の聞き間違いじゃないわよね…今、あたしを守るって」
『兄も聴いたぞ』
「よね…」
ー…犬夜叉は、乱暴だけど、殺生丸とは何かが違う。何かが…。
「くそぉ、こうなったらどうにでもなれだ。きやがれ、化け犬!!!」
『ん?』
「い、犬夜叉は、あなたの名前。〇〇丸など漢字推奨さんのことは言ってないわよ、殺生丸のことだけよ!」
『そうじゃない。何か聴こえぬか』
「え?いや、なにも…」
「殺生丸様!犬夜叉ごとき半妖など頭から食ってしまいなされ!!ぽえ!」
「うるさいわね!まだ負けないわよ!」
あなたの名前。〇〇丸など漢字推奨に言われたものの何も聞こえなかったかごめは、はじめは怖がっていたはずの人骨のようなものを邪見に投げつけて黙らせた。
殺生丸が高く飛び上がり、犬夜叉に向かって左前脚を振り下ろす。
「いける!!!」
迎え打った犬夜叉の手元で、鉄砕牙が変化した。
そのまま大きな刃が深く突き刺さり、勢いそのままに前脚を縦に切り割いていく。
肩口まで来たところで、犬夜叉は横に刀を薙ぎ払った。
大きな身体が傾いて、倒れる。
『殺生丸!』
左前脚は見事に斬り落とされ、身体を起こした殺生丸の眼に大きな牙となった刀が映し出された。
「へへ…牙か…親父も大したもんを遺したもんだな」
立ち上がった殺生丸の傷口からは滝のように血液が流れている。
「だがよ、どうだ殺生丸よ!親父の形見を奪い合って戦っている俺たちは、親父の身体のでかさに比べりゃなんて小せえんだ!わかってるか!俺たち親父の腹ん中や体の上で戦ってるんだぜ!!」
犬夜叉の言葉を聞いて、『今更か…』と兄が呟いたのをかごめは聞いた。
「へへ、まだまだ親父にはなんにも敵わねえってことか!」
グゥウゥ、と殺生丸が憎しみの篭った眼を向ける。
「俺は親父にかわいがられた記憶なんて何にもねえが、この親父の牙が俺の目ん玉ん中に隠されてた以上…どこの誰にもこの刀は渡しはしねえ!」
犬夜叉の柄を握る手に力が入る。
「たとえそれがご立派な兄貴様でもなあ!!!」
飛びかかった殺生丸の胸に、鉄砕牙の一閃がひらめいた。
「殺生丸様ー!!」
亡骸の上からはるか下の地上へ落ちていく大きな身体を邪見が泣きながら見る。
『殺生丸』
そのまま地面に落ちるかと思われたが、光に包まれ小さくなりながら空へと上昇し、遠くへ消えた。
「殺生丸様ぁお待ちくださいー!!」
邪見が走って追いかけていく。
それを見送りながら、あなたの名前。〇〇丸など漢字推奨はどうしたものかと長い爪で頭を掻いた。
***
『犬夜叉、身体は大事ないか』
「ん、もう治った」
『そうか。だが何故濡れておるのだ?』
「…いろいろあったんだよ」
村の巫女の家の木に座っている犬夜叉の横へ降り立ったあなたの名前。〇〇丸など漢字推奨は、犬夜叉が座れよと示すので弟と同じように枝に座ってみた。
「兄貴、その…助かった、あの人間、連れて逃げたりしてくれて」
『なに、お前に頼まれたからな』
「ああ…。なあ、それはそうと、兄貴は鉄砕牙は欲しくねえのか?あの力を見ても。まあもうボロ刀に戻っちまったけどよ…」
『要らん。大振りの得物は好きではない』
「へっ、なんだよそれ」
『それに、やはりそれはお前の刀であった』
犬夜叉の金色の目が、同じ色をした目を少し見上げる。
『我が抜こうとしても抜けなかったであろうよ。…父上は、お前の母君を守るためあの刀をお作りになったときく。私は人間を慈しんでいるわけではない。お前に関係してなければ、あの娘のことも興味は持てない。殺生丸と同じだ』
「あいつと同じだ?…そんなわけねえ。興味はなくても、虫けらみたいに扱ったりしないだろ」
『おや…そう思わせて、鉄砕牙もこの村も、油断させて奪う算段かもしれぬぞ』
「欲しけりゃ取るなんて雑作もねえだろ、兄貴には」
『さてな。殺生丸がああなったとあっては』
言って、夕陽に照らされる遠くの山並みを見つめるあなたの名前。〇〇丸など漢字推奨の顔を見て、犬夜叉が居心地が悪そうに身動きした。
「あのさ……殺生丸のこと」
『ん?ああ、なに…死んではおらんだろうよ』
「…ちっ」
『あまり兄を困らせるな』
困った顔で犬夜叉を小突いたあなたの名前。〇〇丸など漢字推奨に、少しばかりホッとした様子で犬夜叉は凭れかかった。
飄々として、いつだって何処にいるのか知れなくて、今日のような殺生丸とのやりあいさえ本気で止めに来たりするような兄ではないが、半妖の自分でも血縁として扱ってくれるのはこの男くらいだ。
『どうした。…私も濡れるのだが…』
「なんでもねえよ…なあ、俺のおふくろのこと、覚えてるか」
『勿論』
「喋ったことあるか?」
『…そうだな。ちゃんとお前の兄として話したのは一度だけ。その前に、通りすがりの者として話したこともある。その他は、こちらから姿は見れどもわざわざ声をかけたことはない』
兄の言葉を聞きながら、幼少の頃の記憶がまた蘇って来て、「通りすがりって、あれか」と犬夜叉は少し笑った。
蹴鞠を投げられ、取りに行った先にいつの間にか立っていた少年。
黄昏時、いつの間にか庭に現れ、何度か密かに遊んだあの黒髪の少年とは、不意に迎えに来た母と彼が顔を合わせてから、終ぞそれきり会わなかった。
黄昏時から夕闇に変わるまで何ヶ月も待ちぼうけたあの少年が、自分の腹違いの兄だと知ったのは、それから少し後、母が死んでからだ。
「…ていうか…兄貴とおふくろが会ったのは、あの庭での一回きりだと思ってた。違うのか?」
『お前の様子を見にあの後もあの屋敷には足を運んでな。見に来る我の存在には気付いておられたようだ。…兄として名乗り話をしたのは、その時ではないが』
「なんで俺の前には出てこなくなったんだよ」
『はは、忘れた』
「笑ってんじゃねえ!」
『…それにしても、お前の母君は我を恐れた様子はなかった。我がお前の兄だとは、死の間際まで知らなかったはずだが』
「へえ」
ー…あなたには、優しい黒いお犬様がついているのですね。
優しく笑んだ母の顔を思い出した。
「……そうかな。俺のおふくろ、多分だけど…兄貴のこと、誰なのか、知ってたと思う」
『うん?』
「いや、なんでもねぇや」
小さく笑った犬夜叉が、あなたの名前。〇〇丸など漢字推奨の身体に巻き付く黒い毛皮に頭を擦り付けた。











編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!