眠れない。
新月の夜、辺りは本当に真っ暗で、
音もあまりしない。
怖くなって、寝息を立てる万葉の手にそっと触れた。
万葉は眠い目を擦ってあなたの頬に触れる。
相変わらず、万葉の目には色々なものがお見通しだ。
あなたは少し安心して、万葉の懐に潜った。
万葉はあなたを抱きしめて、背中をトントンと叩いてくれた。
その温度を感じて、音に耳を傾ける。
万葉は先程よりも腕に力を込めて、あなたを包み込む。
あなたの耳が自分の胸に当たるように体勢を変えて、耳元で優しく言う。
万葉の心音が聞こえてくる。
規則正しく、ゆっくりと打つ音に包まれていると、なんだか安心できた。
あなたは涙目で万葉を見上げる。
万葉は少しバツが悪そうに微笑みながら、頭を撫でてくれた。
あなたは少し視線を落として黙ってしまった。
万葉は困ったように苦笑いを浮かべながら、またあなたの背中に手を回す。
そう言って、万葉の胸にまた耳を当てる。
とくんとくんと頭に響く音が、今は精神安定剤のように心を落ち着かせてくれた。
万葉は優しい目で微笑んで、あなたの頭に手を置いて見ていた。
万葉の声は心地よくて、彼の体温が温めてくれる。
気がつけば、あなたは夢の中だった。
あなたの寝顔にそっと口づけを落として、万葉も目を閉じた。
穏やかな風が木を揺らす音だけが響き、
真っ暗な世界で2人は温かい夢を見ていた。












編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!