第28話

24 最終種目、開始!
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2025/10/04 15:59 更新
昼休憩の終了、それはすなわち最終種目の開始を意味する。
ヒーローの卵たちが我こそはと全力をだしてぶつかり合う最後の戦い、その開始を。

散っていた生徒たちが戻ってくる中、プレゼント・マイクの放送が鳴り響く。
プレゼント・マイク
『最終種目発表の前に予選落ちの皆へ朗報だ!あくまで体育祭!ちゃんと全員参加のレクリエーション種目も用意してんのさ!』
プレゼント・マイク
『本場アメリカからチアリーダーも呼んで一層盛り上げ……ん?アリャ?』
放送室の困惑がマイクを通じて会場に響く。
イレイザーヘッド
『なーにやってんだ……?』
会場の視線が一点に集中する。
何故かチアリーダーの格好をしたA組女子たちの元へ。
プレゼント・マイク
『どーしたA組!!?』
1年A組のチアリーダーは、別の一角で踊っているアメリカのチアリーダーと同じ格好をしているが、全員真顔のせいで盛り上がりも何もあったものではない。
そして、耐えかねた女子の一人がとうとう叫んだ。
八百万百
峰田さん!!上鳴さん!!騙しましたわね!?
時は、数分前に遡る。




















爆豪くんとおしゃべりしながらカレーを食べていると、三奈がやって来た。
芦戸三奈
あなたここにいたんだ~!探したよ~
芦戸三奈
2人ともいつの間に一緒にご飯食べるほど仲良くなったの?
三奈がニヤニヤしている。
いつの間に…と言われても。
あなた
そもそも出席番号前後だから仲良いよ?
爆豪勝己
んなわけねぇだろ
爆豪くんは明後日の方向を向いています。
あれ、仲良くなかった?
あなた
え、でも爆豪くん私の家…
爆豪勝己
俺はもう行く!
ガターン!と椅子を蹴飛ばすようにして私の言葉を遮り爆豪くんは立ち上がる。
爆豪勝己
黒目と一緒にいたら迷子にもなんねぇだろ、じゃあな
スタスタと早足で去って行く爆豪くん。
麻婆豆腐食べおわるの早いなぁ…。
芦戸三奈
あの爆豪が取り乱してる…!?ワンチャン脈あったりするかな!?
あなた
脈…?うん、生きてるからみんな脈拍はあると思うけど…?
芦戸三奈
…やっぱダメかも
芦戸三奈
あ、何のためにここに来たのか忘れるとこだった!
芦戸三奈
あのさ、午後は女子ってみんなで応援合戦しなきゃいけないんだって
あなた
応援合戦?あ、私小学校でやったことあるよ
芦戸三奈
そう。で、チアリーダーの服着なくちゃいけないらしくてさー
あなた
チアリーダー?あ、ごちそうさまでした
なんとか食べ終わったカレーのお皿を返却し、そのまま三奈に連れられて更衣室へ。
そこにはA組女子の皆がいて、なんだか寒そうな衣装を着ていた。
葉隠透
あなたちゃん来たー!はいこれ~!
お礼を言って、私も透ちゃんが差し出してきた、皆と同じ服を着る。
あなた
やっぱり寒い…
蛙吹梅雨
よく似合っているわ
あなた
そ、そう?ありがとう
ちょっと照れる。

けれどお茶子ちゃんや百ちゃんは浮かない顔をしていた。
麗日お茶子
でもほんまに相澤先生の伝言なんかな…
八百万百
しかし本当だった場合、指示に従っていないと困りますもの…





そして、その数分後。
八百万百
峰田さん!!上鳴さん!!騙しましたわね!?
というわけだ。

しかし峰田くんと上鳴くんは全く応えていない様子で親指を立てあっている。
八百万百
何故こうも峰田さんの策略にハマってしまうの私…
耳郎響香
アホだろアイツら…
ガックリと肩を落とす百ちゃん、怒っている様子の響香ちゃん。
葉隠透
まァ本戦まで時間空くし張りつめてもシンドイしさ…いいんじゃない!?やったろ!!
蛙吹梅雨
透ちゃん、好きね
 
プレゼント・マイク
『さァさァ皆楽しく競えよレクリエーション!』
プレゼント・マイク
『それが終われば最終種目、進出4チームからなるトーナメント形式!!』
プレゼント・マイク
『1対1のガチバトルだ!!』
マイク先生の放送で、皆がミッドナイト先生の方を向く。
切島鋭児郎
トーナメントか…!毎年テレビで見てた舞台に立つんだあ…!
芦戸三奈
去年トーナメントだっけ
あなた
ううん、たしかスポーツチャンバラ?ってやつしてたはず
瀬呂範太
形式は違ったりするけど例年サシで競ってるよ
ミッドナイト
それじゃあ組み合わせ決めのくじ引きしちゃうわよ
ミッドナイト先生が「Lots」と書かれたくじ引きの箱を取り出した。「Lots」…「皆」か。
トーナメントはくじ引きか。ポイント順とかじゃないんだ。
ミッドナイト
組が決まったらレクリエーションを挟んで開始になります!
ミッドナイト
レクに関して進出者16人は参加するもしないも個人の判断に任せるわ。息抜きしたい人も温存したい人もいるしね
やらなくてもいいのか。
…だったら、私はやめておこうかなぁ…
ミッドナイト
んじゃ1位チームから順に…
尾白猿夫
あの…!すみません
尾白猿夫
俺、辞退します
大勢の中で尾白くんが手を挙げる。
周囲がざわめく。

やっぱり…決意は変わらないんだね。
緑谷出久
尾白くん!何で…!?せっかくプロに見てもらえる場なのに!!
心が沈む。
私も辞退すべきなのだろうか。
結局心操くんとは話せなかった。彼は何を思っているのだろう。
尾白猿夫
騎馬戦の記憶…途中から終盤ギリギリまでほぼボンヤリとしか記憶がないんだ
尾白猿夫
多分奴の個性で…
緑谷出久
!?
尾白猿夫
チャンスの場だってのはわかってる。それをフイにするなんて愚かなことだってのも…!
緑谷出久
尾白くん…
尾白猿夫
でもさ!皆が力を出し合い争ってきた座なんだ、こんなわけわかんないままそこに並ぶなんて…俺は出来ない
葉隠透
気にしすぎだよ!本戦でちゃんと成果を出せばいいんだよ!
芦戸三奈
そんなん言ったら私だって全然だよ!?
尾白猿夫
違うんだ…!俺のプライドの話さ…俺が嫌なんだ
尾白くんは目頭をおさえて口にする。
尾白猿夫
あと何で君らチアの格好してるんだ…!
庄田二連撃
僕も同様の理由から棄権したい!実力如何以前に…何もしてない者・・・・・・・が上がるのは、この体育祭の趣旨と相反するのではないだろうか!
切島鋭児郎
なんだこいつら…!!男らしいな!
プレゼント・マイク
『なんか妙な事になってるが…』
イレイザーヘッド
『ここは主審ミッドナイトの采配がどうなるか…』
会場が静まり、ミッドナイトの言葉を皆が待つ。
ミッドナイト
そういう青臭い話はさァ…好み!!!
ミッドナイト
庄田・尾白の棄権を認めます!
ピシャアン!!と鞭をしならせてミッドナイト先生が叫んだ。認められちゃった…
ミッドナイト
繰り上がりは5位の鉄哲チームだけど…
鉄哲徹鐡
やりてェッス!
班内で話し合いが行われ、鉄哲くんと塩崎さんが参加することになった。
ミッドナイト
ということで鉄哲と塩崎が繰り上がって16名!!
ミッドナイト
組はこうなりました!
私の1戦目の相手は……えっ。
あなた
み、三奈と…!?
芦戸三奈
えーっ!?あなたと!?
トーナメント表の真ん中あたり、私と三奈の苗字が並んで書いてあった。

騎馬戦前に言い合った言葉が脳裏をよぎる。
芦戸三奈
入試からずっとあなたに助けてもらった、だから今回は全力でぶつかってみたい
あなた
私も、三奈には色々助けてもらってるから…本気で勝ちに行ってみたい
あなた
まさか、こんなに早くぶつかることになるなんて…
芦戸三奈
でも、これで…
あなた
うん!三奈と、思いっきりやれる!
三奈だから、戦いたい。
三奈とだから、勝ちたいんだ。

私たちは顔を見合わせて笑う。親友で、ライバル。この関係が心地よかった。
プレゼント・マイク
『よーしそれじゃあトーナメントはひとまず置いといてイッツ束の間、楽しく遊ぶぞレクリエーション!』

















レクリエーションをするかしないかは個人の判断らしいので、私は参加しないことにした。体力が続かないからだ。
私はしばらくA組女子の皆と一緒にチアダンスなるダンスをしていた。三奈に教わりながら。
芦戸三奈
あなた違う!腕は伸ばすの!曲がってる!
あなた
腕は伸ばす…こう?
芦戸三奈
そうだけど足も真っ直ぐにしない!足は曲げる!
あなた
足は曲げる…、
芦戸三奈
見てて!お手本見せるから!
 
麗日お茶子
あなたちゃん通常運転すごいわぁ…
八百万百
本当ですわね…













そんなこんなで、レクリエーションは終わり、最終種目がもうすぐ始まる。
セメントス
オッケー、もうほぼ完成
プレゼント・マイク
『サンキューセメントス!』
コンクリートを操っていたセメントス先生が立ち上がる。
ステージには、大きなステージができあがっていた。
プレゼント・マイク
『ヘイガイズアァユーレディ!?色々やってきましたが!!結局これだぜガチンコ勝負!!』
私たちは観客席に座り、今から1戦目…緑谷くん対心操くんの試合を見るところだ。
プレゼント・マイク
『頼れるのは己のみ!ヒーローでなくともそんな場面ばっかりだ!わかるよな!!』
プレゼント・マイク
『心・技・体に知恵知識!!総動員して駆け上がれ!!』
プレゼント・マイク
『1回戦!!成績の割になんだその顔、ヒーロー科緑谷出久!!バーサス!!普通科ながら騎馬戦2位!心操人使!!』
マイク先生の放送が、興奮状態の観客席に鳴り響く。
会場の熱気があがり始める。

そんな中、私の隣でぼそりと呟く人が一人。
爆豪勝己
…死ねデク
そんなこと言わないの。
プレゼント・マイク
『ルールは簡単!相手を場外に落とすか行動不能にするか、あとは「まいった」とか言わせても勝ちのガチンコだ!!』
プレゼント・マイク
『ケガ上等!!こちとら我らがリカバリーガールが待機してっから!!道徳倫理は一旦捨ておけ!!』
いや、ケガするのはダメでしょ。
プレゼント・マイク
『だがまぁもちろん命に関わるよーなのはクソだぜ!!アウト!ヒーローはヴィランを捕まえる為・・・・・に拳を振るうのだ!』
プレゼント・マイク
『そんじゃ早速始めよか!!』
プレゼント・マイク
『レディィィィイ!!!』
プレゼント・マイク
『スターートーー!!!』
開始の合図と共に走り出した緑谷くんが、急停止する。
まさか…
プレゼント・マイク
『おいおいどうした!?大事な緒戦だ、盛り上げてくれよ!?』
プレゼント・マイク
『緑谷、開始早々──完全停止!?アホ面でビクともしねえ!!心操の個性か!!?』
あなた
これ…ヤバいかも
麗日お茶子
デクくん…!?
プレゼント・マイク
『騎馬戦では復田が矢面に立ってて目立ってなかったけど彼、ひょっとしてやべえ奴なのか!!!』
心操くんの個性、洗脳はかけてしまえばそこで勝てる。なぜか私には効かなかったけど…あの時は気づかなかったが、今考えてみれば、1つだけ心当たりがあった。

お父さんだ。
お父さんが個性「守護」で私を守っていたから、心操くんの個性が防がれたのかもしれない。
体育祭中はやめてって言ったんだけどな…


心操くんの命令を聞いて、緑谷くんが場外に向かって歩いていく。
ああなったらもうダメだ、打つ手はない。
緑谷くんが、負けちゃう…!

そう思っていたけれど。
バキ…!
あなた
!?
爆豪勝己
あいつ…
指を、動かして…!?
あなた
洗脳を、解いたの…!?
 
心操人使
なんとか言えよ!
心操人使
指動かすだけでそんな威力か、羨ましいよ
心操人使
俺はこんな個性のおかげでスタートから遅れちまったよ、恵まれた人間にはわかんないだろ
心操人使
誂え向きの個性に生まれて、望む場所へ行ける奴らにはよ!!
心操くんの悲痛な叫びが心に突き刺さった。

…騎馬戦の時も、そう思ってたの?


ステージ上の2人は取っ組み合いを始めた。
緑谷出久
あああああ!!!
爆豪勝己
初回のヒーロー基礎学の授業、爆豪くんとの戦闘訓練の時に使っていた背負い投げで緑谷くんは心操くんを倒した。

ダン!!と心操くんが地面に打ち付けられ、そのかかとが場外に出る。
ミッドナイト
心操くん場外!!緑谷くん、二回戦進出!!
プレゼント・マイク
『二回戦進出!!緑谷出久──!!』
 
上鳴電気
爆豪も背負い投げられてたよな
あ、それは言っちゃ…
爆豪勝己
黙れアホ面…
ほら…
爆豪勝己
んのクソが…!!
プレゼント・マイク
IYAHAイヤハ!緒戦にしゃ地味な戦いだったが!!とりあえず両者の健闘を称えてクラップユアハンズ!!』
緑谷出久
………心操くんは、何でヒーローに…
心操人使
憧れちまったもんは仕方ないだろ
沈痛な面持ちで退場していく心操くん。

何か言ってあげたい、でも。
そう思っていたところに、声をかける人たちがいた。
普通科の人
かっこよかったぞ、心操!
普通科の人たちだった。
観客席の手すりから、心操くんへ次々に声をかける。
普通科の人
正直ビビったよ!
普通科の人
俺ら普通科の星だな!
普通科の人
障害物競走1位の奴と良い勝負してんじゃねーよ!!
…?良い勝負しちゃだめなのかな…?

会場のあちらこちらから心操くんの個性を褒める声が聞こえてくる。
普通科の人
聞こえるか、心操おまえ、すげェぞ
肩を落としているように見えていた心操くんが、顔をあげた。
後ろ向きに、緑谷くんに話しかける。
心操人使
結果によっちゃ、ヒーロー科編入も検討してもらえる。覚えとけよ?
心操人使
今回は駄目だったとしても…絶対諦めない。ヒーロー科入って資格取得して…絶対おまえらより立派にヒーローやってやる
緑谷出久
──うん
え、今洗脳されなかった?あれ?試合終わったのに?
心操人使
フツー構えるんだけどな、俺と話す人は…ったくどいつもこいつも…
心操人使
そんなんじゃすぐ足を掬われるぞ?せめて、みっともない負け方はしないでくれ
緑谷出久
っうん……あ…
大丈夫だ。
私が何かを言ってあげなくても、彼は進んでいける。

そう、私は思った。

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