昼休憩の終了、それはすなわち最終種目の開始を意味する。
ヒーローの卵たちが我こそはと全力をだしてぶつかり合う最後の戦い、その開始を。
散っていた生徒たちが戻ってくる中、プレゼント・マイクの放送が鳴り響く。
放送室の困惑がマイクを通じて会場に響く。
会場の視線が一点に集中する。
何故かチアリーダーの格好をしたA組女子たちの元へ。
1年A組のチアリーダーは、別の一角で踊っているアメリカのチアリーダーと同じ格好をしているが、全員真顔のせいで盛り上がりも何もあったものではない。
そして、耐えかねた女子の一人がとうとう叫んだ。
時は、数分前に遡る。
爆豪くんとおしゃべりしながらカレーを食べていると、三奈がやって来た。
三奈がニヤニヤしている。
いつの間に…と言われても。
爆豪くんは明後日の方向を向いています。
あれ、仲良くなかった?
ガターン!と椅子を蹴飛ばすようにして私の言葉を遮り爆豪くんは立ち上がる。
スタスタと早足で去って行く爆豪くん。
麻婆豆腐食べおわるの早いなぁ…。
なんとか食べ終わったカレーのお皿を返却し、そのまま三奈に連れられて更衣室へ。
そこにはA組女子の皆がいて、なんだか寒そうな衣装を着ていた。
お礼を言って、私も透ちゃんが差し出してきた、皆と同じ服を着る。
ちょっと照れる。
けれどお茶子ちゃんや百ちゃんは浮かない顔をしていた。
そして、その数分後。
というわけだ。
しかし峰田くんと上鳴くんは全く応えていない様子で親指を立てあっている。
ガックリと肩を落とす百ちゃん、怒っている様子の響香ちゃん。
マイク先生の放送で、皆がミッドナイト先生の方を向く。
ミッドナイト先生が「Lots」と書かれたくじ引きの箱を取り出した。「Lots」…「皆」か。
トーナメントはくじ引きか。ポイント順とかじゃないんだ。
やらなくてもいいのか。
…だったら、私はやめておこうかなぁ…
大勢の中で尾白くんが手を挙げる。
周囲がざわめく。
やっぱり…決意は変わらないんだね。
心が沈む。
私も辞退すべきなのだろうか。
結局心操くんとは話せなかった。彼は何を思っているのだろう。
尾白くんは目頭をおさえて口にする。
会場が静まり、ミッドナイトの言葉を皆が待つ。
ピシャアン!!と鞭をしならせてミッドナイト先生が叫んだ。認められちゃった…
班内で話し合いが行われ、鉄哲くんと塩崎さんが参加することになった。
私の1戦目の相手は……えっ。
トーナメント表の真ん中あたり、私と三奈の苗字が並んで書いてあった。
騎馬戦前に言い合った言葉が脳裏をよぎる。
三奈だから、戦いたい。
三奈とだから、勝ちたいんだ。
私たちは顔を見合わせて笑う。親友で、ライバル。この関係が心地よかった。
レクリエーションをするかしないかは個人の判断らしいので、私は参加しないことにした。体力が続かないからだ。
私はしばらくA組女子の皆と一緒にチアダンスなるダンスをしていた。三奈に教わりながら。
そんなこんなで、レクリエーションは終わり、最終種目がもうすぐ始まる。
コンクリートを操っていたセメントス先生が立ち上がる。
ステージには、大きなステージができあがっていた。
私たちは観客席に座り、今から1戦目…緑谷くん対心操くんの試合を見るところだ。
マイク先生の放送が、興奮状態の観客席に鳴り響く。
会場の熱気があがり始める。
そんな中、私の隣でぼそりと呟く人が一人。
そんなこと言わないの。
いや、ケガするのはダメでしょ。
開始の合図と共に走り出した緑谷くんが、急停止する。
まさか…
心操くんの個性、洗脳はかけてしまえばそこで勝てる。なぜか私には効かなかったけど…あの時は気づかなかったが、今考えてみれば、1つだけ心当たりがあった。
お父さんだ。
お父さんが個性「守護」で私を守っていたから、心操くんの個性が防がれたのかもしれない。
体育祭中はやめてって言ったんだけどな…
心操くんの命令を聞いて、緑谷くんが場外に向かって歩いていく。
ああなったらもうダメだ、打つ手はない。
緑谷くんが、負けちゃう…!
そう思っていたけれど。
バキ…!
指を、動かして…!?
心操くんの悲痛な叫びが心に突き刺さった。
…騎馬戦の時も、そう思ってたの?
ステージ上の2人は取っ組み合いを始めた。
初回のヒーロー基礎学の授業、爆豪くんとの戦闘訓練の時に使っていた背負い投げで緑谷くんは心操くんを倒した。
ダン!!と心操くんが地面に打ち付けられ、そのかかとが場外に出る。
あ、それは言っちゃ…
ほら…
沈痛な面持ちで退場していく心操くん。
何か言ってあげたい、でも。
そう思っていたところに、声をかける人たちがいた。
普通科の人たちだった。
観客席の手すりから、心操くんへ次々に声をかける。
…?良い勝負しちゃだめなのかな…?
会場のあちらこちらから心操くんの個性を褒める声が聞こえてくる。
肩を落としているように見えていた心操くんが、顔をあげた。
後ろ向きに、緑谷くんに話しかける。
え、今洗脳されなかった?あれ?試合終わったのに?
大丈夫だ。
私が何かを言ってあげなくても、彼は進んでいける。
そう、私は思った。












編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!