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第1話

拝啓︰この世の神様へ、来世に期待してもいいですか?
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2026/08/30 10:21 更新
「────流行り病です。余命はもって半年程」
「えっ?」

自身の耳を疑った。村にたった1人しかおられないお医者様から告げられた言葉が、妙に信憑性を帯びていない。
下半身に掛けられた布団が余計に重く感じられた。
それに反して体は僅かな気怠さを纏っただけで、無意識に布の裾を握りしめる。

「名前を聞いたことぐらいはあるでしょう?▢▢ですよ」
「えっと…私がその▢▢に…?」
「ええ、異常なぐらいの感染力、致死性で話題になっています。間違いありません」

世界が遠退いた感覚がした。あとにも続いた永遠のような言葉が、頭を殴って後ろへと流れていく。
両親がいなくなってしまったこの家は酷く広く、酷く温かみを帯びていない。ベットに腰掛けた私、真摯な眼差しを宿すお医者様、物理的に腹を肥やした村長。
腕を組んで腹を揺らしながら、村長が言った。

「メメ、お前をこの村から追放する。異論は認めない」
「そ、村長…?冗談だとしても──」
「冗談などではないわ!俺の村に病原菌を持ち込むだなんて…汚らわしい!命があるだけ感謝しろ!」
「なんで…私が何をしたって言うんですか…!」
「黙れ!恨むんなら病原菌を持ち込んだ自分自信を恨みな!」

なにも…言葉が出てこなかった。人はこれを絶句と呼ぶのだろうか。
水分を失った言葉が喉に張り付き、確かな不快感と焦燥感を抱く胸へと戻っていく。
微かに震え続けた指先まで体温が巡らず、元々白い肌が青白さを孕んでいた。

「立て!」
「ひゃぁ!」

布団をひったくられて無理矢理立たされた後、掴まれた手首を玄関の外へと放り出された。固い地面の上で跳ねた体が悲鳴を上げる。見上げた村長の顔は歪み過ぎて原型がなかった。

「家は燃やしといてやるから病原菌が感染ることはないだろうな、せいぜい感謝しろ!今まで生きてこられたのもお前の両親の影響だろうに…汚らわしい菌を持ってこなかったらよかったのにな!」
「まって!違うんです!燃やさないでください!」
「黙れ!何も違わない!菌を飛ばすな」
「ゴホッゴホ…お願い…」

咳が喉へと絡みつく間に、無情にも私の目の前で扉がしまった。亡き両親と暮らしていた、大切な場所。過去形を付けてしまうほど、この状況を理解している自分に恐れを隠せない。
…そのまま…他人事の絵空事のように捉え続けることが出来たのなら、私は幸せになれたのだろうか。
いや、そんなことは無理でしょうね…

重たい体を引きずるように歩き出す。打ち付けられた腰を擦りながら、ゆっくりと足を前へ前へと進めていく。

「痛っ!」

不意に背中に鋭い痛みが走った。後ろを振り返れば、石を握りしめた子供達や大人違がおり、足元にも似たような石が転がっている。
そこまで…私は睨まれるような行いをしましたか…?
理由なんて関係ない。不満まみれの日常で、誰かが不幸を背負うなんて最早当たり前の事象と化してしまっている…誠に残念なことながら。

その数多の瞳が、奇妙なぐらい同じ感情を宿していた。其処にいる全員の名前を把握しているのは…私だけなのだろう。私という存在を知らぬまま、"追放された"という概念だけで迫害されて…こんな有様だ。
瞳を細めたのは、決して痛みなどではない。

彼処(あそこ)は…まだ残っているでしょうか…?
村の範囲内には含まれないけど、幼馴染と遊んだ場。
不定期的に痛みが走るなか、縺れた足で駆けていった。
私は…何を呪えばいいと言うのだ。

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