あなたの名字Side
諸伏「あなたの名前、さきほどの考え事、何を話していたのか、教えていただけませんか?どんな内容でも、受け止めますから」
驚いた顔を浮かべ、そしてしばらく考え込んだのち、高明さんはゆっくりと口を開いた。
私がさっき考えていたこと。
諸伏景光と高明さんは親族か何かなのか。
高明さんは今何か、人に話せない辛いことがあるんじゃないか。
そして、その2つには何かしらの関係があるんじゃないか。
あなたの名字「諸伏景光っていう人、知っていますか?」
私の考えは、何度も言うけど推測に過ぎないから、この質問で何かわかるのかはわからないけれど。
ただ、私が諸伏景光、という名を出すと、高明さんの表情は明らかに変わった。
それが良い表情に変わったのか、悪い表情に変わったのかはわからない絶妙な顔。
けれど、高明さんは諸伏景光という人について、何かあるんだろう、ということがわかる。
諸伏「ええ、景光でしたら、私の弟ですが......」
あなたの名字「高明さん、弟さんがいらしたんですか!?」
諸伏「はい、しばらく連絡が取れていませんが......」
あなたの名字「私が知っている限り、諸伏景光さんは、警察官になったはずです、私や貴方と同じく、警察官に」
諸伏「ええ、それは知っています。ですが3年前から連絡が取れなくなっているのですよ。警察官をやめたか、あるいは......公安部に配属されたか......」
あなたの名字「公安......」
確かに、警察学校にいたころ、伊達班の5人は問題児ではあったものの、"全員"がずば抜けて優秀だった。
ということは、景光さんもきっと、ものすごく優秀だった。
と、なると公安にスカウトされていてもおかしくはない.....。
ではどうして高明さんは辛そうな顔をしていたのだろうか。
私が景光さんの名前を出したときに浮かべた表情から考えるに、そこに何かあると思うのだけれど......。
あなたの名字「仲は良かったのですか?」
諸伏「ええ、よい方だったと思いますよ。それに、私が中学生のころに両親が殺害され以来、唯一のこっている肉親ですから、とても大切な存在です」
景光さんは、高明さんにとって唯一の生き残りの家族。
けれどその景光さんとも3年前から連絡が取れなくなった。
ただ警察官をやめただけだったり、最悪、殉職していたら、何かしらの報せが来るだろうから。
と、いうことはやはり、公安部に配属された、と考えるのが妥当。
公安部に配属されれば、たとえ親族だろうとも連絡を取るのが禁止される。
だから、そうして離れた弟が心配だった......?
でも、高明さんが浮かべていた表情は、心配、というよりも悲しみだった。
ただ連絡取れないのが悲しかった?
でも彼の周りには、ほぼ家族も同然な幼馴染がいる。
いや、でもそれじゃあだめなのか、やっぱり家族じゃないと......。
あなたの名字「高明さん、私、貴方が心配なんです」
諸伏「それはまた、どうして」
あなたの名字「無理しているように見えて。人には無理するなって言っておきながら、精神的にも肉体的にも、無理してるんじゃないかって。それでいつか耐えられなくなって、いなくなっちゃうんじゃないかって......!」
諸伏「それはまた、おもしろいことをおっしゃいますね。大丈夫ですよ、私は......」
あなたの名字「大丈夫じゃない人ほど大丈夫っていうんですよ、高明さん!」
諸伏「いえ、私はこうして今、敢助くんや上原さん、そしてなによりあなたの名前と、素敵な仲間に囲まれ幸せですから」
あなたの名字「それは、そうかもしれません。確かに大和警部たちと話す貴方は楽しそうに見える。幸せそうに見える。でも、でも、一人でいるときに浮かべている表情が、苦しく見えるんですよ!なにか、人には言えない苦しみを一人で抱え込んでいるような、そんな表情に......」
諸伏「疲れているだけではないでしょうか、ここ数日、事件も多いですし。物騒ですよn......」
あなたの名字「先ほども言いましたが、友人や恋人っていうのは、幸せだけじゃなくて、辛いことも共有していい存在です。私は、私は貴方の恋人です!最大の理解者になれるかどうかはわからないけれど、それでも貴方のことをよくみていて、そばにいられる立場ですから、頼ってください!」
諸伏「ですが......」
あなたの名字「私じゃ、貴方の苦しみを分かち合うには、力不足でしょうか......」
私がそういうと、高明さんは意を決したように、すべてを話し始めた。













編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。