第31話

後日談#5
219
2025/06/05 15:37 更新
あなたの名字Side


諸伏「あなたの名前、さきほどの考え事、何を話していたのか、教えていただけませんか?どんな内容でも、受け止めますから」


驚いた顔を浮かべ、そしてしばらく考え込んだのち、高明さんはゆっくりと口を開いた。
私がさっき考えていたこと。
諸伏景光と高明さんは親族か何かなのか。
高明さんは今何か、人に話せない辛いことがあるんじゃないか。
そして、その2つには何かしらの関係があるんじゃないか。


あなたの名字「諸伏景光っていう人、知っていますか?」


私の考えは、何度も言うけど推測に過ぎないから、この質問で何かわかるのかはわからないけれど。
ただ、私が諸伏景光、という名を出すと、高明さんの表情は明らかに変わった。
それが良い表情に変わったのか、悪い表情に変わったのかはわからない絶妙な顔。
けれど、高明さんは諸伏景光という人について、何かあるんだろう、ということがわかる。


諸伏「ええ、景光でしたら、私の弟ですが......」


あなたの名字「高明さん、弟さんがいらしたんですか!?」


諸伏「はい、しばらく連絡が取れていませんが......」


あなたの名字「私が知っている限り、諸伏景光さんは、警察官になったはずです、私や貴方と同じく、警察官に」


諸伏「ええ、それは知っています。ですが3年前から連絡が取れなくなっているのですよ。警察官をやめたか、あるいは......公安部に配属されたか......」


あなたの名字「公安......」


確かに、警察学校にいたころ、伊達班の5人は問題児ではあったものの、"全員"がずば抜けて優秀だった。
ということは、景光さんもきっと、ものすごく優秀だった。
と、なると公安にスカウトされていてもおかしくはない.....。


ではどうして高明さんは辛そうな顔をしていたのだろうか。
私が景光さんの名前を出したときに浮かべた表情から考えるに、そこに何かあると思うのだけれど......。


あなたの名字「仲は良かったのですか?」


諸伏「ええ、よい方だったと思いますよ。それに、私が中学生のころに両親が殺害され以来、唯一のこっている肉親ですから、とても大切な存在です」


景光さんは、高明さんにとって唯一の生き残りの家族。
けれどその景光さんとも3年前から連絡が取れなくなった。
ただ警察官をやめただけだったり、最悪、殉職していたら、何かしらの報せが来るだろうから。
と、いうことはやはり、公安部に配属された、と考えるのが妥当。

公安部に配属されれば、たとえ親族だろうとも連絡を取るのが禁止される。
だから、そうして離れた弟が心配だった......?
でも、高明さんが浮かべていた表情は、心配、というよりも悲しみだった。
ただ連絡取れないのが悲しかった?
でも彼の周りには、ほぼ家族も同然な幼馴染がいる。
いや、でもそれじゃあだめなのか、やっぱり家族じゃないと......。


あなたの名字「高明さん、私、貴方が心配なんです」


諸伏「それはまた、どうして」


あなたの名字「無理しているように見えて。人には無理するなって言っておきながら、精神的にも肉体的にも、無理してるんじゃないかって。それでいつか耐えられなくなって、いなくなっちゃうんじゃないかって......!」


諸伏「それはまた、おもしろいことをおっしゃいますね。大丈夫ですよ、私は......」


あなたの名字「大丈夫じゃない人ほど大丈夫っていうんですよ、高明さん!」


諸伏「いえ、私はこうして今、敢助くんや上原さん、そしてなによりあなたの名前と、素敵な仲間に囲まれ幸せですから」


あなたの名字「それは、そうかもしれません。確かに大和警部たちと話す貴方は楽しそうに見える。幸せそうに見える。でも、でも、一人でいるときに浮かべている表情が、苦しく見えるんですよ!なにか、人には言えない苦しみを一人で抱え込んでいるような、そんな表情に......」


諸伏「疲れているだけではないでしょうか、ここ数日、事件も多いですし。物騒ですよn......」


あなたの名字「先ほども言いましたが、友人や恋人っていうのは、幸せだけじゃなくて、辛いことも共有していい存在です。私は、私は貴方の恋人です!最大の理解者になれるかどうかはわからないけれど、それでも貴方のことをよくみていて、そばにいられる立場ですから、頼ってください!」


諸伏「ですが......」


あなたの名字「私じゃ、貴方の苦しみを分かち合うには、力不足でしょうか......」



私がそういうと、高明さんは意を決したように、すべてを話し始めた。




























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