▫️注意▫️
自転車の二人乗りは道路交通法で禁止されています!
フィクションとしてお楽しみください。
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夏休みの図書室は、冷房が効きすぎている。
体にまとわりついた汗が急激に冷え、寒いと思うほど。
期末テストで解答欄を全て1個ずらしで書いてしまったが故に赤点だった数学の補習を終え、ちょっと涼んでから帰ろうと図書室へ来たけど・・・とんだ誤算だった。
机に突っ伏しながら、向かいの席に座る幼なじみに問いかけた。
すると言ちゃんはすました顔で参考書を閉じる。
鼻につくインテリキャラみたいに、かけているメガネをクイッと上げ直しながら言う。
そんな風だから先生に目を付けられて、本来出なくてもいい補習に出ることになるんだぞと心の中でつっこむ。
荷物をまとめ、立ち上がりリュックを背負う。
顔を見合せ、小さく笑い合う。
そうは言いつつ、補習で使った頭をスッキリさせたいのもあり、言ちゃんの誘いにのることにした。
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外へ出ると陽が沈みかけてもなお暑さは衰えておらず、冷えた身体はたちまち熱を帯びていく。
言葉の意味が理解できず、一瞬言葉を失う。
沈黙の隙間を縫うようにセミの声が響くと、言ちゃんは何食わぬ顔で続ける。
抗議する間もなく、言ちゃんは自分の自転車の荷台を軽く叩いた。
「はいはい、乗ってくださーい」と、自転車に跨る言ちゃんに半ば強引に荷台へ座らされた。
言ちゃんの顔は見えないのに、声色からニヤついた表情が容易に想像できた。
ペダルを踏み込むとぐっと体が後ろへ引かれ、慌てて言ちゃんのシャツを掴んだ。
私の慌てる様が面白かったのか、ふっと小さく笑う言ちゃん。
その余裕さが悔しくて後ろからブツブツ文句を言うけど、言ちゃんの肩が少し揺れるたび、掴んだ背中越しに伝わる体温と匂いに不思議と胸が高鳴っていた。
どちらともなく笑いだして、じゃれ合うみたいな空気のまま夏の風を切って走り出す。
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海に着く頃には、水平線の向こうに太陽が沈み、焼けた空と夜の色が静かに混ざりはじめていた。
自転車を降りると、潮を含んだ風がふわりと頬を撫で、昼間の熱を残した砂浜の温かさが、スニーカー越しにもじんわりと伝わってくる。
隣で言ちゃんが満足げに笑う。
得意げに胸を張るその横顔が、沈みかけた夕焼けに照らされて何故か眩しかった。
腰掛けた堤防は、砂浜と同じように昼間の熱を残していてコンクリートから薄い服越しに温かさが伝わる。
言ちゃんはレジ袋から瓶サイダーを取り出す。
途中「青春には瓶のサイダーが必要だ!」なんて言ちゃんが言うから、呆れながらスーパーに寄り道して買ったものだ。
そしてお財布から10円玉を抜き取り、器用に王冠を抜くと、ぱしゅっと爽やかな音を立てて泡が弾けた。
関心しながら差し出された瓶を受け取ると、微かに残る冷たさが指先に滲んだ。
瓶の口を傾けると、しゅわりと弾ける炭酸が舌を刺して、少しぬるくなったサイダーが喉の奥へ流れていく。
思わず零れた声は、波音に半分さらわれていく。
目の前には、橙から群青へ移り変わる空をそのまま溶かし込んだようなグラデーションが波打つ水面にきらきらと揺れている。
潮を含んだ風が吹き抜けるたび、火照った頬と汗ばんだ首筋が夜の気配を運んでくる気がした。
波は絶えず寄せては返し、私たち以外誰もいない浜辺が少しずつ夜の闇に溶けていく。
しばらく黙って海を眺めていた言ちゃんが、ふいに瓶を揺らしながら口を開いた。
波音に紛れそうなくらいの声だったから、一瞬、何を言われたのかがわからなかった。
胸の奥が、すうっと冷えていく。
思ったより強い声が出て、自分で驚く。
言ちゃんは目を丸くし、困ったように笑っている。
俯くと、膝の上に置いた瓶の中でサイダーの炭酸がまだ小さく弾けていた。
言ちゃんは、静かに喋り出す。
言ちゃんの方を見ると横顔だけど、それでもわかる迷いのない目だった。
きっともう、ここじゃないどこかへ行く自分をちゃんと想像できている目だ。
そんな言ちゃんはやっぱり凄いと思うし、幼なじみとして誇らしかった。
その分、どうしようもなく寂しくもなった。
それしか言えなかった。
すると言ちゃんの視線が、私の視線とぶつかる。
言ちゃんは、当たり前の事を言うように続ける。
冗談ぽい事を言ってるのに、顔は本気だ。
言ちゃんの口角がちょっと上がるけど、すぐに真面目な顔になる。
波の音が、一瞬だけ大きく聞こえた気がした。
どういうこと?と首を傾げる私から、言ちゃんは視線を逸らさない。
あまりにもサラッと言うから、これが告白と気付くまで時間がかかった。
言ちゃんは体ごとこちらへ向き直し、改めて私を見る。
告白って、もっとロマンチックなものだと思ってた。
ううん、シチュエーションは最高。
なのにどうして面白くなっちゃうんだろう?
波の音が一定のリズムで聞こえてきて、いよいよ太陽が水平線へと消えていった。
言ちゃんは少しだけはにかみながら、
と、柔らかく言う。
「好き」と言いかけて、私はやめた。
首を横に振り「なんでもない」と小さく呟く。
志望校として悩んでいたのは事実だし、キッカケを貰えた気がした。
返事を聞いた瞬間、言ちゃんは満面の笑みを浮かべて、それからすぐにいつもの顔に戻そうとして失敗する。
満点の星空と満月が私たちを照らし出す。
どちらともなく繋いだ手は、お互いの汗が混じり変な感覚で・・・なんだかこそばゆい。
私たちの青春はまだはじまったばかりなのだ。
▫️あとがき▫️
危うく没作品になりかけたもの。
何とか書ききれたぁ・・・













編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!