第33話

星に願いを:ini
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2026/07/07 10:00 更新










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図書館の入口では、さらさらと揺れる笹の葉が、夏の風を受けて心地よい音を立てていた。

その傍らには簡易的なテーブルが設けられ、ペンと色とりどりの短冊が並べられている。



すでに笹には、たくさんの願い事が結ばれていた。



子どもらしい丸文字もあれば、達筆な文字もある。
家族の健康を願うもの、受験や恋愛の成就を願うもの・・・



それぞれの”誰かの願い”が風に揺れる様子を眺めていると、この国では今もなお、季節の行事が人々の日常に静かに溶け込んでいるのだと感じさせられた。




あなた
せっかくだし、書こうよ!




隣で同じように笹を眺めていた乾に声をかける。







期末テスト前───

連日の暑さから少しでも逃れようと、図書館へ勉強をしに向かっていたその途中、偶然行き会った乾も同じ目的地だったようで「じゃあ一緒に行こうか」となり現在に至る。



ini
・・・願い事?
あなた
うん!
ini
こういうの書くタイプだったっけ?
あなた
あっ!
ちょっと失礼じゃない?!
ini
ごめん、嘘うそ。


乾は呆れたように笑いながら、どこか楽しそうだった。



そして、簡易テーブルに置かれた短冊へ手を伸ばし、迷うことなく青とピンクの二枚を取ると、そのうちの一枚・・・・・・ピンク色の短冊を私へ差し出した。


ini
ん。
あなた
ありがと・・・



短冊を受け取った時、ほんのちょっと指先が触れてどういう訳かドキッとしてしまった。



あなた
色、選んでくれたの?
ini
いや、別に。



乾は少し考えるように、手元の青い短冊を見る。



ini
なんとなく?
あなた
なんとなくでピンク渡したの?
ini
嫌でした?
あなた
そういうわけじゃないけど



そう答えると、乾は小さく笑った。


ini
なら、いいじゃないですか




いつもの落ち着いた声。

こういう時にわざと敬語で喋るのも、乾らしい。






なんとなく腑に落ちないけれど、テーブルに短冊を置いてペンを手に取る。



その隣で、乾も考えながらペンを手に取っていた。

普段なら迷いなく答えを出す乾がこんな風に悩む姿はなんだか意外だった。




あなた
・・・ねぇ、何書くの?
ini
見せたら願いが叶わないんだけど
あなた
え、それ信じてるの?
ini
いや、信じてないけど
あなた
じゃあいいじゃん!
ini
うわぁ〜・・・
こういう時薄っぺらな嘘ドッキリテクスチャーが使えれば・・・!
あなた
そしたら私は記憶の探索使うもんねー
ini
そんなん触れなければ意味ないやん
あなた
私の色仕掛けで動けなくしてやるわ
ini
ふっ・・・
ほら、早く書いて勉強するぞ
あなた
はいはい、じゃあ・・・
あなた
・・・・・・っと、書ーけた!
ini
俺も



お互い見えないように反対の位置に短冊を括り付け、「絶対見るなよ」と釘を刺されつつ自習室へ。






机を挟んで向かい合い、参考書とノートを広げて、聞こえるのはページをめくる音とペンを走らせる音だけ。




普段なら長く感じる勉強時間も、乾がいるだけで不思議と集中できた。



分からない所があればお互いに教えあったり、時々くだらない話をして・・・

何気ない時間が、期末テスト前の張り詰めた空気を少しだけ和らげてくれている気がした。









暫くして、机の上に置いていたスマホが小さく震えた。


画面を見ると、母から『帰りにお買い物お願いできる?』とメッセージが届いていた。




時間を確認すると、思っていたより遅くなっていることに気付く。




あなた
・・・ごめん、先帰んなきゃだ


私の声に、乾も参考書から視線を外しこちらを見る。


ini
どした?
あなた
お母さんに買い物頼まれちゃった
ini
・・・そっか、


乾は時計を見ると、


ini
俺はもう少しだけやってくよ
あなた
さすが学年トップはやる気が違うねぇ
ini
あなただってそうだろ
あなた
ふふ・・・
中間は順位負けちゃったけど、
今回の期末は絶対乾より上になるから!
ini
はいはい、頑張って下さ〜い



小声でそんなことを言い合いながら、荷物をまとめる。


あなた
よしっ!
じゃあ、また明日学校でね。
ini
おう、また明日。
気をつけて帰れよ
あなた
うん、ありがと
ばいばーい


ひらひらと手を振り、自習室を後にする。



あなた
〜♪



誰もいないのをいい事に鼻歌混じりに図書館を出ようとした時、七夕飾りが目に入った。






そういえば、

さっき書いた短冊・・・






乾は何を書いたんだろう。








「絶対見るなよ」と言われた言葉を思い出すが、それでもやっぱり気にはなる。



でも、約束したし。うん。




誰に言うでもなく呟いて、通り過ぎようとしたその時。








誰も近づいていないはずの入口の自動ドアが静かに開いて、外から入り込んだ生ぬるい風が、夏の夜の匂いを運んできた。




と、同時に、さらさらと笹の葉が揺れてたくさんの短冊が一斉に揺れ、その中で、一枚だけ見覚えのある青い短冊が目に留まった。






乾が選んだ色。





まさか、と思いながらも、視線が文字を追ってしまう。





そこに書かれていたのは『来年の七夕もあなたと一緒に願い事が書けますように』と、たったそれだけだった。





あなた
え・・・






思わず声が漏れる。

もっと乾らしい、とんでもない野望とかでっかい目標を書いていると思っていたから。





そこに書かれていた、たった一人との時間を願う言葉に驚きを隠せなかった。






ini
・・・見た?
あなた
・・・っ!!




背後から声がして、驚いて振り返ると・・・
そこには、さっき別れたはずの乾が立っていた。



あなた
ごめん・・・見るつもりじゃ・・・




慌てて言うと、乾は諦めたように少しだけ笑った。



ini
別に、いいよ
あなた
でも見るなって言ってたじゃん
ini
まぁ、そうだけど・・・
見られちゃったならしょうがないよね
あなた
・・・・・・



乾は笹に揺れる短冊を見つめる。



ini
じゃあ、あなたは何書いたんよ
あなた
・・・え。
ini
等価交換だ
あなた
え、ちょ、待ってよ!!
ini
俺の短冊は見たじゃん
あなた
それは事故だってば!
ini
見た事実は変わらん
あなた
う〜〜・・・!!
ini
・・・ほいっと



乾は駄々を捏ねる私を窘めつつ、隙を見てピンク色の短冊をひらりと裏返し書かれている文字を読む。




あなた
あーーー・・・っ!



短冊を読んだ乾は、珍しく言葉を失っている。




そして、その頬がだんだん赤く染まる。
短冊から視線を逸らし、誤魔化すように咳払いをした。






ini
・・・これって、
























彦星さま、織姫さま───


願わくば一年に一度しか会えないあなたたちが何度でも同じ場所で巡り会えるように、私も来年の七夕に同じようにこの人と過ごせたらと思います。































『来年も好きな人と七夕を過ごせますように』



























▫️あとがき▫️
HUNTER×HUNTERネタ分からない人はごめんなさい・・・
一応ショート動画で出てきてた能力だったので、つい・・・
(2023年1月18日の得意ジャンルクイズ)

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