第5話

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2024/03/05 07:03 更新
うやうやしく振舞うウエイターから新しい飲み物をもらって、紅いベルベット張りで金の装飾が施されたソファにゆっくりと腰掛ける。思ったよりふかふかで深く体が沈むので驚いて、高級な家具は違うんだな…と小さく座り直し、ドレスの裾を少し整えた。
青のグラデーションの美しさに惹かれてもらったジュースを一口 口にすると、またもその美味しさに驚いた。
ラズベリーの酸味と甘さ、その独特なクセが微炭酸に包まれて喉に届けられる。かすかにハーブの爽やかさも感じられた。
改めて落ち着いた気持ちで会場を見わたしてみる。

質の良い華やかなスーツやドレスを着て、談笑したり、フードをつまんだり、どこかからか呼んだのだろう、披露されている見世物を楽しんだりしている人々。彼らがたくさんつけている光物はたくさんの照明に反射して、眩いほどの輝きを放っている。

ところどころ建物に施された装飾や壁に掛けられた優雅な絵画、クラシックを演奏するオーケストラのような楽器団。彼らの楽器もまた、その艶が光を放っているようだ。
(なまえ)
あなた
…っはあ…
見ているだけで思わず感嘆の息をついてしまうほどの、光と音が押し寄せてくる豪華絢爛な世界。

いつも私が暮らしているのとはまるで別世界のようで、きっとこれから忘れることはないんだろうなと既にそう思えた。


そして遠くにはさっきの「BTS」の人たちが、場の雰囲気もだいぶ崩れてきたからだろうか、仲良くじゃれているのが勝手に目に入る。
アイドルオーラで探さずとも居場所がわかるほど目立っているのがさすがだなと思いつつ、年相応にああやってふざけたりもするんだなと新しく発見した気持ちになった。
(なまえ)
あなた
…?
と思ったら、あのなぜか目が引かれるRMさんの姿が見えない。

彼らはずっとパンさんと7人で一緒に行動していたようだから、彼だけいないのが不思議だった。
(なまえ)
あなた
(…トイレにでも行ったのかな)
そう思い直してまたジュースを口に含むと、


覚えのあるあのラベンダーの香りが、近くで香った。



「…あの、」



心地よい低い声が、耳に届く。

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