第7話

【ktm 】熱は何処から
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2026/03/21 22:17 更新












"頑張れー!ナイス!!やるじゃん!



試合の日に汗だくになるのは選手だけじゃない。

それを知ったのは、雲のない晴れた今日だった。










"
ふう……勝ったね!
良かった良かった







勝利の後の一杯は格別ね~って、

家から持ってきた麦茶を手にしながら
お父さんの真似をするお母さんの姿を横目で見ていた。


広い体育館を見下ろすと、嬉しそうに
ハイタッチを繰り返している選手たち。

その中に混じった蜜柑色を目で追いかける。


試合中はあんなに格好良かったのに、
終わった途端いつもの調子。

そんなギャップにも、
つい私の心はきゅうと音が鳴っていた。






"
遊征君も乗せて帰ろっか!
"
部活の子たちと帰るのがセオリーかしら
…どうだと思う?
あなた
聞いちゃえば?
"
確かに、降りて聞いてきて!
お母さん車出してくるから
あなた
……え!?待っ…いないし!







即断即決、即行動。

隣を見ればもう背中の遠いお母さん。
素早い動きに軽く尊敬しながら、浅く溜息を溢した。

私もすぐに行動できるようになりたいよ。








ktm
ぇ……あ!
ちょ、俺ちょっと行ってくる!!





少し離れた所から軽く手を振ると
気付いた彼がニパッと頬を緩ませた。


チームメイトたちが何かを吹き込んで
振り払うように私の元に駆け寄ってくれたのは、
まだユニフォームを着たままの遊征くん。

ヘアバンドはおでこを見せびらかしてきて
屈託のない笑みが眩しかった。





あなた
試合お疲れさま、強かったね
ktm
ほんとですか!俺の活躍も見てました!?






勿論、見てた。


相手の隙間を潜り抜けて綺麗なフォームで
ボールを放ったあの姿。

ゴールが決まって嬉しそうに飛び跳ねていた
無邪気な様子。


きっと残りの一日の合間に思い出しては
バタバタと悶えたくなるぐらいには記憶が鮮明。

多種に渡る褒め言葉のレパートリーが
頭を巡ってる....のに、





あなた
うん、凄かった







実際口に出せるのはたったの一言で
更に言えば声も弾んでくれない。


人見知り。

その上好きな人を目の前にしたときの自分は
どうしてこんなにそっけないことしか
言えないんだろう。






ktm
っやったぁ〜...超嬉しい、今!




そんな私にも分け隔てなく見せてくれる
遊征くんの表情が大好きだった。


ただのお隣さんで、学年も一つ違い。

幸運なのはお母さん同士が凄く仲良しになったこと。

数ヶ月前、我が家の隣に引っ越してきたとは
思えないほどに、家族ぐるみの付き合いが多い。


だからこそバスケ部に知り合いの居ない私が
試合の応援に来れた。

試合の熱に圧されて若干置いてけぼりだったのは内緒。






あなた
お母さんが車で一緒に帰る?って
部員と帰る?





後ろでチームメイトたちが
私たちをチラリと見ながら待っている。

一緒に帰る予定だったんだな。


私の伝言に遊征くんも少しだけ言葉を詰まらせて
後ろの皆と私と地面を行き来してる。






ktm
車は……ほら、
俺汗かいたんで、お気持ちだけ…!
あなた
いいよいいよ、いつものお母さんの
お節介だから、言っとく
ktm
!ありがとうございますっ
あなた
部活で帰るんだよね
あなた
試合凄く格好良かったですって
言ってほしいな





初めて観戦したのがこの試合で良かったって
思えるようなプレーばっかりで、
遊征くんを抜きにしてもそう思ったから。


私はただの同じ学校の生徒だし
特別役職に就いてるわけでも無いから価値はないけど。

なんだか言いたくなってしまって
遊征くんに伝言を頼んだ。






ktm
はい、勿論!
……先輩も、車で帰るんですよね
あなた
ん?そうしよっかな
良い天気だし歩くのも迷うけどね
ktm
……そ、ですか!







…なんだろう。

どこかソワソワして落ち着きなく口ごもる姿が珍しい。






あなた
ぇと…待たせてるだろうし、私も行くね?









どうかしたの?って優しく声を掛けられない私が
なんだか居た堪れなくなって、

この場を去ろうと、ひらりと手を掲げようとした。









ktm
っ……待って下さい!





それを制すように掴んできたのは
遊征くんの大きな手で、




ktm
………一緒に、帰りませんか






運動後の熱か、陽の光に照らされているからか

…それ以外。


じわ、と赤くなっていくその表情の火照りは
触れている手を伝って私にも移ってしまった。





あなた
ぇ……あ、ぅん。いいよ………、?







ぐ、と喉が締まる感覚を振り払って
たどたどしくも返事ができた。


言葉を聞いてか遊征くんの顔のパーツが
みるみる緩んでいく。





ktm
っじゃあ俺、みんなに言ってきます!
先輩が褒めてくれたのも一緒にっ
あなた
ぁ、私もお母さんたちに…言ってくる
ktm
校門の前で、待ってますっ





たたっと駆け戻っていく彼は
たちまち部員たちに囲まれていく、

肩を組まれて組み返して、何故かハイタッチ。




頑張ったじゃん!ナイスー!!やるなぁ!




わぁわぁと盛り上がり始める光景は
なんだか首の後ろが熱くなっていく。





あなた
……気温上がった、かな








試合の熱がぶり返している彼らの姿に背を向けて

車の止まっている駐車場に足を進めた。










"
おかえり〜、遊征くんどうするって?
あなた
……汗かいてるから
気持ちだけ貰いますって
"
あら!気にしないでいいのにね〜
じゃあもう車出しちゃおっか
あなた
…えっと!!






ハンドルを握り始めたお母さんを振り返らせて、

眩みそうになるほどに熱さを感じながら
ギュッと手に力を入れた。





あなた
私も……ついでに散歩して帰るから…っ!
先帰ってていいよ!!
"
そう?まぁ今日は珍しく涼しいもんね





風が心地良いってこういう日ね〜、って

妙に納得したお母さんたちは
車を走らせて家に帰って行った。



あなた
……ぁつ、





雲のない、風の涼しい晴れた日に知ったこと。




あなた
…やば、麦茶、麦茶………ふぅー





選手じゃなくても、どんな人でも。

気持ちが込み上げれば熱くなる。



それは、人見知りで特別取り柄のない私にも
当てはまるということだった。




しおねさん!!!遅くなってしまい大変申し訳ありませんでした!!!
改めてリクエスト有難うございます!
期待に添えてたら…まだ見てくれていたら嬉しい気持ちでいっぱいです🙇

野次がね、凄く良い味出せたんじゃないかなと!!
思っております!!個人的には大満足物語。


ご期待に超えていたら!本当に嬉しいです!

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