"頑張れー!ナイス!!やるじゃん!
試合の日に汗だくになるのは選手だけじゃない。
それを知ったのは、雲のない晴れた今日だった。
勝利の後の一杯は格別ね~って、
家から持ってきた麦茶を手にしながら
お父さんの真似をするお母さんの姿を横目で見ていた。
広い体育館を見下ろすと、嬉しそうに
ハイタッチを繰り返している選手たち。
その中に混じった蜜柑色を目で追いかける。
試合中はあんなに格好良かったのに、
終わった途端いつもの調子。
そんなギャップにも、
つい私の心はきゅうと音が鳴っていた。
即断即決、即行動。
隣を見ればもう背中の遠いお母さん。
素早い動きに軽く尊敬しながら、浅く溜息を溢した。
私もすぐに行動できるようになりたいよ。
少し離れた所から軽く手を振ると
気付いた彼がニパッと頬を緩ませた。
チームメイトたちが何かを吹き込んで
振り払うように私の元に駆け寄ってくれたのは、
まだユニフォームを着たままの遊征くん。
ヘアバンドはおでこを見せびらかしてきて
屈託のない笑みが眩しかった。
勿論、見てた。
相手の隙間を潜り抜けて綺麗なフォームで
ボールを放ったあの姿。
ゴールが決まって嬉しそうに飛び跳ねていた
無邪気な様子。
きっと残りの一日の合間に思い出しては
バタバタと悶えたくなるぐらいには記憶が鮮明。
多種に渡る褒め言葉のレパートリーが
頭を巡ってる....のに、
実際口に出せるのはたったの一言で
更に言えば声も弾んでくれない。
人見知り。
その上好きな人を目の前にしたときの自分は
どうしてこんなにそっけないことしか
言えないんだろう。
そんな私にも分け隔てなく見せてくれる
遊征くんの表情が大好きだった。
ただのお隣さんで、学年も一つ違い。
幸運なのはお母さん同士が凄く仲良しになったこと。
数ヶ月前、我が家の隣に引っ越してきたとは
思えないほどに、家族ぐるみの付き合いが多い。
だからこそバスケ部に知り合いの居ない私が
試合の応援に来れた。
試合の熱に圧されて若干置いてけぼりだったのは内緒。
後ろでチームメイトたちが
私たちをチラリと見ながら待っている。
一緒に帰る予定だったんだな。
私の伝言に遊征くんも少しだけ言葉を詰まらせて
後ろの皆と私と地面を行き来してる。
初めて観戦したのがこの試合で良かったって
思えるようなプレーばっかりで、
遊征くんを抜きにしてもそう思ったから。
私はただの同じ学校の生徒だし
特別役職に就いてるわけでも無いから価値はないけど。
なんだか言いたくなってしまって
遊征くんに伝言を頼んだ。
…なんだろう。
どこかソワソワして落ち着きなく口ごもる姿が珍しい。
どうかしたの?って優しく声を掛けられない私が
なんだか居た堪れなくなって、
この場を去ろうと、ひらりと手を掲げようとした。
それを制すように掴んできたのは
遊征くんの大きな手で、
運動後の熱か、陽の光に照らされているからか
…それ以外。
じわ、と赤くなっていくその表情の火照りは
触れている手を伝って私にも移ってしまった。
ぐ、と喉が締まる感覚を振り払って
たどたどしくも返事ができた。
言葉を聞いてか遊征くんの顔のパーツが
みるみる緩んでいく。
たたっと駆け戻っていく彼は
たちまち部員たちに囲まれていく、
肩を組まれて組み返して、何故かハイタッチ。
頑張ったじゃん!ナイスー!!やるなぁ!
わぁわぁと盛り上がり始める光景は
なんだか首の後ろが熱くなっていく。
試合の熱がぶり返している彼らの姿に背を向けて
車の止まっている駐車場に足を進めた。
ハンドルを握り始めたお母さんを振り返らせて、
眩みそうになるほどに熱さを感じながら
ギュッと手に力を入れた。
風が心地良いってこういう日ね〜、って
妙に納得したお母さんたちは
車を走らせて家に帰って行った。
雲のない、風の涼しい晴れた日に知ったこと。
選手じゃなくても、どんな人でも。
気持ちが込み上げれば熱くなる。
それは、人見知りで特別取り柄のない私にも
当てはまるということだった。
しおねさん!!!遅くなってしまい大変申し訳ありませんでした!!!
改めてリクエスト有難うございます!
期待に添えてたら…まだ見てくれていたら嬉しい気持ちでいっぱいです🙇
野次がね、凄く良い味出せたんじゃないかなと!!
思っております!!個人的には大満足物語。
ご期待に超えていたら!本当に嬉しいです!











編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。