転校して4日目
教室に入った瞬間
温度が数度下がったような気がした。
視線の先、自分の机には 「どいて」 と言わんばかりに
誰かの通学カバンが、これ見よがしに置かれている。
おそらくだけど
昨日、クラスの男子にノートを貸してあげたのが
誰かの逆鱗に触れたらしい。
取り巻きを引き連れて、筆箱を弄りながら言った。
本当にわざとらしい笑顔で。
私は立ち止まったまま、一瞬だけ彼女の指先を見る。
あぁ、なるほど。
そういう事か……
いつものように柔らかく、
でもどこか実態のない笑みを浮かべた。
怒りも困惑も見せず、
ただ 「正解」 の音を出す。
彼女が眉にシワを寄せる。
たぶん、私が泣き言を言うか
あるいは 「私の席なのに」 と主張するのを
待っているんだと思う。
でも私は その土俵には乗らない。
毒気を抜かれたように、彼女は視線を逸らした。
私はカバンを抱えたまま、空いている席へ移動した。
後に後悔するなんて
まだ誰も知らなかった___。












編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!